宇部市のある所に1本の業務用無線のアンテナが立っています。
このアンテナは自分が20歳の時に自営業を始めたのにあまり仕事がなかったので、ある通信社の手伝いとして屋根の上で仕事をした場所です。
150メガヘルツの4分の1波長のグランドプレーン型アンテナを、通信社のオーナーと従業員がポールを立ててステー線を張って、自分は同軸ケーブルをポールにビニールテープで縛り付ける役をしていました。
自分は趣味でアマチュア無線のアンテナを付けるのと同じ様に、テープをクルクルと巻いて思いっきり引っ張ってプチンと切ったら通信社のオーナーにひどく叱られました。
何周かあまり引っ張らずに、それでいてピッタリ巻いて、それからニッパーで切る様に指示されて、自分のニッパーで切ったらまた叱られました。
その理由はニッパーで硬い物を切っているので何箇所か小さく刃こぼれしていて、テープの切り方がやや斜めに切っているから、斜めの鋭角になっている部分から剥がれやすいという事で、同軸ケーブルにテープを巻くのをその通信社のオーナーの方のニッパーを借りて1からやり直しました。
そのオーナー曰く「あなたは一時的な手伝いでその日のやっつけ仕事でいいかもしれないが、このアンテナは○○通信社が立てたというのは今後も変わらないし、もしテープでも緩んで来たら長年間違いない仕事をして来たうちの恥になる!」と強く叱られました。
さらに「10年後20年後にここを通っても、あの時のアンテナはきちんと立っているという、誇りを持てる仕事をしなさい。」とも言われました。
自分も当時は20歳の若造だったので、「このぐらいでゴチャゴチャ言うなよ!」と思うことも出来たのですが、20歳で自営業でだれからも給料をもらえる訳ではない自分からしたら、「この人の様な一流の職人になりたい!」と強く思って、ピッタリ合った工具を使うとか、刃こぼれした工具を使わないとか、10年後20年後の事を考えて仕事をするという基本的な教えを1日も忘れた事はありません。
自分が今こうやって精度の高い仕事が出来ているのも、あの時に屋根の上で通信社のオーナーから強く叱られた事が今の自分の生活の糧になっているのは、間違いない事実です。
その20歳の若造もあれから40年経って今年60際になりました。
あのアンテナ近くを通ると、「まだきちんと立っているかな?」と思って、少し速度を落として通っていましたが、この前はハザードを出して止まって、デジカメでズームして撮影して帰りました。
すると自分が何度もやり直しをさせられた同軸ケーブルを縛ったビニールテープは今もきちんと貼り付いていて、全くめくれを起こしていないではありませんか!
10年後20年後を考えて仕事をしろと言われた事が、実際には40年後もきちんとした状態で、一流の職人の方に厳しい指導して頂いて、自分は本当に幸せだったと感じました。
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Posted at
2020/06/13 19:08:46