いつもは店頭でお客様からお聞きした話を、他のお客様も同じ様な事を思われているだろうと掲載しているこのシリーズですが、今日に限っては質問された方がピュアディオのユーザーの方ではない話ですが、皆さんが興味があると思いましたので、27回目として掲載させて頂きます。
まず一つ目は5月6日に福岡店で行われた無線のイベントの時ですが、休み時間に2回に分けてピットにあるコイルの棚をお見せして、0・7μヘンリーから1000μヘンリーを超える値のコイルを細かく何百種類をストックして、色々な車種や特製の違うスピーカーに対応しているという説明をしていた時の話です。
来場者の中に市販のカー用スピーカーのネットワーク回路に手を入れた事がある方がおられて、その方はコンデンサを上質な物に交換したり、コイルの巻き数を変えた事があるという事でした。
ただ自分もピュアコンを開発する前は同じ様な事をやっていて、コイルは普通ほどく事は出来ても足す事は出来ないのでジワジワほどいて行っても、なかなかほどいてもほどいても音が変わりません。
その事を言われていると思いますが、この手の実験をした事のあるショップの人も、「コイルの巻き数をしょうしょうほどいても音は変わらないから、細かく巻き数を変えてストックしても無駄だ。」と言われる同業者の方もおられます。
『コイルは巻き数を変えてもほとんど音は変わらない。』という話と、『コイルの巻き数を細かく変えて音を微調整する。』という2つの話はどちらが本当なのでしょうか?
答えは『両方とも本当の話です!』という事で、自分自身がスピーカー付属のノーマルのネットワークのコイルをほどいてもほどいてもほとんど音が変わらないというのを実感していて、ところがその反面『ピッタリ音がマッチングする所はほんのわずかしかない!』という事があり、更に『本当にマッチングする前には一度音が悪くなって聴く気がしなくなるポイントがある。』という事も体験しました。
話は一度スピーカー付属のネットワークの話になり、自分は日々の作業でなかなか音がまとまらなくて、何度もコイルを交換してという事をブログに書いていますが、オーディオメーカーのネットワークは1種類のコイルで全ての車種を網羅していて、ずば抜けている事はなくてもそこそこ音楽は聴けます。
そのメーカー製のネットワークは実は2種類の方式があって、その一つが自分が『透かしのネットワーク』という方式です。
それはツイーターの下限周波数とミッドの上限周波数の間を透ける様に離して、中音域が薄い分高音と低音が強く聴こえるネットワークで、ロック向きとかドンシャリとか言われている特性の物です。
もう一つは自分が『重ねのネットワーク』と呼んでいる特性の物で、ツイーターの下限周波数とミッドの上限周波数が広く重なった中音域が濃い物で、クラッシック向きとか女性ボーカル向きと呼ばれている方式で、自分がメーカー製のネットワーク回路を分解するとその2つの方式しかなく、そのうちのロック向きとかドンシャリと言われているネットワーク回路の方が世に多く出ていて、そのネットワークのミッドの上限周波数を決めるコイルが巻き過ぎのためにほどいて行くと、ほどいてもほどいてもほとんど音が変わらないという現象が起きます。
ただあるポイントになると急に音が変わって、まず音が急に聴き辛くなって、ここで「あーっ!失敗してしまった!」とほとんどの人がここで実験をやめてしまうでしょう。
ただ実際にはその音が悪いポイントを通り過ぎると急に音が良くなるポイントが出て来て、そこから欲をして更にほどいて行くとまた違うパターンで音が聴き辛くなり、「あーっ!ほどき過ぎてしまった!」となって、もう元には戻らなくなります。
そこから更にどんどんほどいていけばクラッシック向きや女性ボーカル向きと呼ばれる同じ音域を重ねた特性になり、それなりに聴けるネットワークになりますが、そんな実験を平成になって間がない頃はよく行っていました。
それでは良いマッチングの前後で何故急に音が聴き辛くなるかと説明しますと、最初に巻き過ぎのコイルをほどいていってほとんど音が変わらない所は広い範囲で音が透けているのが、急に一部分だけ狭い範囲が透けているので、それがとても聴き辛い音になるのです。
その後良いポイントを過ぎると、今度は同じ音域がほんの少しだけ重なって、狭い音域にピークが出来るとそれはそれで聴き難くなり、更にそれを通り過ぎると広範囲に重なって来るからそれなりに聴きやすい音になるという訳です。
平成の初めのメーカー製のネットワークのコイルをほどいていくチューニングでは、ほどき過ぎるのが怖くてかなり手前でほどくのやめていて、一番良いポイントの手前の聴き辛いポイントさえ辿り着いていない中途半端なチューニングを行っていました。
ある日思い切ってこれまでほどかなかった領域までほどいて、音が良くなったからと調子に乗って更にほどいたら、一番良いポイントを通り過ぎて、聴き辛い音になったので更にほどくと、同じ音域が重なり過ぎて、違う意味でのメーカー製ぽい音になってしまい、そこで考えたのがホームオーディオ用の自作ネットワーク用のコイルを入れる事を考えました。
ただそれはホームオーディオ用の市販のコイルはサイズが大きくて、カー用のネットワークのケースの中に納まらないので、外に取り付ける方法で交換しやすくて大きいサイズが使えるというのが、今のピュアコンのスタイルの原型となりました。
ここまで来ると中音域側でなくて高音側もコンデンサの交換だけでなく、一から回路を考えて最初から別ケースに組む事により、高音側と中音側の特性を自由に別々に変えられる様になり、メーカー製のネットワークの呪縛から完全に開放されました。
それまでは高音域の周波数幅とレベルはメーカー推奨値をそのまま使っていたのですが、メーカーの値は1個のボックスで幅広い車種に対応させるために、ツイーターの音域をかなり広めに取っていて、そのためツイーターのレベルを決めるアッテネータ抵抗はかなり値の高い物で、ここを適正な周波数レンジに狭くすればアッテネーター抵抗の値を小さく出来て、もっと音が新鮮になるのでは?と考えたために、ピッタリ合うブラックボックスを求めてどんどん種類が増えてきました。
ここまで来たらもう市販のネットワークとの差は歴然で、1種類のネットワーク回路で多くの車種に対応する事が出来ないどころか、近年では純正のディスプレイオーディオの特性が度々変わっていて、前のデーターそのままではキツイ音や間抜けな音になってしまうという事もしばしばで、これまで以上に手をかけないと以前の車と同じレベルの音にならないという時代になって来ています。
もうひとつピュアコンに関する質問でお客様ではない方からで、金融機関から資金調達をしている事から、サウンドピュアディオの運営に対しての質問を年に一度程度は詳しい説明を求められる事があります。
過去にはグループ店8店舗という時期もあって、2019年に最後の加盟店と契約を終了してからは全く店舗を広げる予定がありません。
そこで何故加盟店をもう増やさないかという事や、なぜ辞めたかという質問に対して事細かく説明が必要で、そこで金融機関に分かりやすく数値化した報告を出す事で、業界に詳しくない方でも分かりやすい報告が出来る様になりました。
以前は店舗店舗で勝手な音造りをして、ラーメン屋で言うと支店が勝手な濃い味のラーメンを出す様な事と具体性に欠ける説明をしていたのが、この味の濃さの部分を数値化したら、本店または福岡店での数値が1400かそれ以下であるのに対して、加盟店は1950という数値で音決めしていて、5%10%の誤差ならまだしも、こちらの1400という数値化は最も高い値で平均値ではなく、平均値で換算すると40%以上の音の濃さでこれはもう別物で、全ての店の言うには「お客さんは自分の音の方が良いと言っている。」という事で、本店とは違う独自の世界で、これは同じグループとするには無理があるでしょう。
これだけでは金融機関にとっては十分な説明ではなく、たまたま他店で取り付けた車がメーカー製のネットワーク付き入って来た時に係数を調べたら2200で、1950に対して13%程度の誤差で、業界の平均値に対してやや薄味の音造りで、本店の音造りとは別なもので、あくまで業界の流れを基準に少しオリジナリティーを付けたもので、係数を思いっきり下げないとどうしてもアッテーター抵抗の値が高くなるかうるさくなってしまい、音楽本来の音にはならないという報告をしました。
ただ旧加盟店のお客様の中にもこの音造りに対して不満を持たれている方もあって、ピュアコンをこちらで替えさせて頂いた事もありますが、ピュアコンを自分で勝手に改造して本来無い値を作って、それを正規の物に交換したら本来目指していた音になったというお話をしました。
今回の2例はユーザーの方からの質問ではありませんでしたが、ユーザーの方が知られたい部分の話があったのではないかと思い、あえてこの場で書かせて頂きました。
最後まで読んで頂きありがとうございました。