うちのマンションに、電気自動車用のコンセントがついた。
 住民要望で管理組合が動いたのだが、かけあって東急コミュニティの費用で電気料金を徴収するしくみを取り付けることになったとのこと。
 
 
 EV車両に配線をつなぎ、写真の囲み部分にカードをかざすことで通電する。
 このあたりのしくみは、電気を再販売する「売電」になるとかでなにやらめんどくさいらしい。
 とりあえずこれを使えばマンション駐車場でも電気自動車の充電ができる。ただし、1つしかコンセントがなく、8時間とかの普通充電しかできないので、複数台の電気自動車が夜間電力で充電するのは困難。
 マンションで電気自動車を所有しシェアするとかならともかく、現時点では実用性は低い。現時点でEVを購入する人が何人もいるとは思われないので、今のところ
1つのみ2箇所設置のお試しレベルである。
注 離れた場所にもう1箇所設置しているとのこと。2箇所あれば、2~3台のうちはなんとかこなせそうだ。
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 今回三菱自動車のiMiEVと日産自動車のLEAFの車両が1台ずつデモに来た。マンションに電気自動車用の課金システムをつけるというのはまだ珍しい段階で話題性はある。
 
 
 もっとも気になるのは航続距離とバッテリー(リチウムイオン)の劣化である。
 航続距離については、軽自動車ベースのiMiEVは2グレードあり180km/120km、LEAFは200km。もちろん運転の仕方やエアコンの仕様などで大きく変わる。特にヒーターの使用は影響が大きいようで60%程度まで距離が少なくなるように言っていた。
 劣化については業務用車両の実績ベースで4~5年で80%。10年で70%を見込んでいると言うが、見通しが甘いような気がしなくもない。
 LEAFで5年経った場合、劣化と電気装備使用で新車時最高200kmが120km程度走れると考えておけば良さそうな感じだ。
 バッテリーは確実に劣化する。一般ユーザーの使用方法では劣化は早いだろう。
 現状バッテリーが非常に高価であるので、10年以内に車体ごと買い換えることになりそうだ。
 バッテリーのみの買い換えもあり得るとは言っていたが、将来価格が低くなってきたところで、メーカーは車体買い換えでの対応を前面に出すだろう。電池屋だけが利益をあげる構造ができると車両メーカーが成り立たないからだ。
 車両メーカーも最近では電池屋と手を組んで開発をやっているが、それは結局のところバッテリーの囲い込みになるのかも知れない。
 企業論理は利益を獲得することにあり、旧商品を陳腐化させ新商品を売り続ける古いビジネスモデルにしか活路を見いだせていない。
 トヨタがプリウスで特段問題ない古い車を税金までつぎ込んで潰してきたことと同じようなことを続けるのだろう。
 膨大な資源がつぎ込まれていく。リサイクルよりリユースの方が環境負荷が圧倒的に少ないのは言うまでも無い。
 日本のような国では工賃が莫大になることがあって、良くて工賃が安くすむアセンブリパーツの交換、悪くて車両の買い換えの方が経済的になりやすいが、途上国では全く様相が異なる。そこらに高い技術を持った安い労働力がいて、パーツの故障も無理矢理にでも直してしまう。
 経済的に豊かになることは労働収入の向上であり、それは資源をより多く消費する方向に行く。
 結局ここを見直さないことには資源や環境の問題は対処療法での対応をするだけなのだろう。
 少なくとも、企業の新商品投入で経済を動かすことを抜け出さない限りは環境対応などと言っても建前だけに聞こえる。
 欲望を持った人間である限りは克服困難な課題なのかも知れない。
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 日産ディーラーでは急速充電設備を置いているが、LEAFユーザーは無料で使えるそうだ。30分で8割の充電ができるので、買い物がてらちょっと立ち寄って充電というパターンを作れば、電気代無料になってしまう。
 もっとも、売り手にしてみれば電気自動車のシェア獲得のための方法なので、これが持続するとは考えがたい。当面持続するにしても、普及してくれば充電を待たされることにもなるだろうし。
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 LEAFは車両価格は約380万~400万円。補助金78万円を使えば、約300万円から。
 iMiEVは260万~380万円。補助金補助金74万円を使えば、約200万円から。
 ただ、使用方法が日常の買い物を主体とする近距離主体の使い方に限定されるので、個人が持つというよりカーシェアリングで使う方が現実的かも知れない。
 iMiEVは軽自動車ベースだけに、価格に対して小さく安っぽさが気になる。
 LEAFは余裕があるが決して広いとは言えない。荷室もハッチバックだけに比較的大きなものも入るが奥行きは大きくはない。
 
 
 一般ユーザーがこれまでとほぼ同じ感覚で非ガソリンorディーゼル車使おうとすると、プリウスのようなハイブリッド車を選ぶことになるのだろう。燃費だけを考えればガソリン車でも優秀なものもあるし、ディーゼルを考えればあえて選ぶ理由があるのかどうかよく分からない。
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 EVは原発の生み出す夜間の余剰電力を使って充電することを前提に開発が進められてきた。先の事故で、EVの今後が危ぶまれている。
 三菱のディーラーの人間にこの点を突っ込むと渋い顔をしていたが、火力でも出力調整ができないので夜間電力は安くなるという話をしていた。しかし、原発の低コスト(もちろん、廃炉費用や燃料の保管費用を無視したものだが)に対して、他の手段ではコストが高くなる。今後の電力政策のあり方しだいではEVはいっそう厳しくなる可能性がある。
 原発はチェルノブイリ事故でしぼんだが、CO2を発生しないという建前で見直されてきた。しかし、ひとたびの事故の影響はやはり計り知れないものがある。過酷事故が起こる可能性は低いと見積もったところで見積もり方に問題があったのは先の事故が示す通り。
 火力発電の環境負荷がある限り、EVが環境に優しいとは言いかねる。これが自然エネルギーに置き換えられれば環境負荷は軽減するが、設置場所やコストの他、現実の電力需要を停電危機無く満たしていくのはなかなか難しい課題でもある。
 大きなエネルギーを持ち貯蔵もしやすい液体のエネルギー源がいかに使いやすいか、思い知る。
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 ごく短距離を定速で試乗した。乗ってみると、当然静かでスムーズ。モーターなのでトルクも大きい。バッテリーが重いので車体も重い(LEAFで1,520kg)が、床下に置いているので低重心でロールも少なく安定性が高い。
 
 メーター内は今どきの車っぽく華やかだが、面白いのは上部のメーター。従来のバッテリーシステムに取り付けていたアンメーターと同じだが、ここではパワーメーターと称し、左に行くと回生ブレーキでのエネルギー回収・充電が優勢、右に行くと電気消費が優勢であることを示している。
 これをなるべくプラスマイナスゼロに近いところをキープすることでバッテリー消費を抑えることができるとか。
 
 「エンジン」ルーム内にはエンジンが……。いや、これがモーターなのだが、何故にこんなにエンジン風に。
 EVならEVらしくモーター然としたものが入っていればよいのだが。
 なお、ここにモーターがあることで分かるように、可能な限りガソリン車のメカニズムを流用している。
 EVならば4輪インホイールモーターでEVらしいところを見せて欲しいところだが、開発コストを考えると現状はこれが精一杯なようだ。
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 いろいろ考えると、EVはまだまだ一般ユーザーの選択肢には入らないように思う。
 買い物程度しか使わないことが明らかなら残価設定プログラムで短期間乗るとかか。
 決まったパターンで利用されるルート配送などの業務用向きとは言えるだろう。