理科とは関係ありませんが、昨日爲末大がツイートしていた内容を転載します。元アスリートだけに重い言葉です。
日本の学生スポーツの有り様は元アスリートから批判されることがままあり、体の問題だけではなく、部活動のありよう、セカンドライフを考えさせず学生を使い捨てる実態なども対象になっています。海外では学生アスリートは引退後の長いセカンドライフを考えさせられ、資格を取るための勉強に時間を振り向けています。一方日本で部活重視校のスポーツクラスの生徒に尋ねても、何の将来像もなく「解説者になる」「スポーツのコーチになる」などという現実性の乏しいことを言うのみでした。部活でチームが実績を出すことだけを求められ、本業であるはずの勉学をおろそかにしています。この中でスポーツで糧を得るものはごく僅か。しかし学校やコーチ・監督のために使い潰され、何のセカンドライフの準備もないまま卒業していくわけです。
怪我をして部活ができなくなったら退学をする例も見てきました。周囲の生徒もそれを当然とし、明日は我が身とは考えていませんでした。
これらは「体育観」「スポーツ観」の日本と海外の違いとしても取り上げられる問題です。日本のスポーツ観は精神修養の「道」としてのものと、それが全体主義、軍国主義とむすびついた訓練・教練としてのものが色濃くあり(運動会は日本独特のもので軍事教練の影響によるし、技能と記録、勝負にこだわる体育指導、部活動が学校と一体になっている独特さなども)、個人の楽しみや幸福とは隔たりがあることが指摘されます。
いくつかの部活重視校に勤め、こうした問題を考えるようになりました。
しかしながら、これはスポーツのみならず全体主義の強い日本の教育に根深くある問題でもあります。
何かの参考になりましたなら。
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Dai Tamesue 爲末大
@daijapan
3月18日
全柔連が小学生の全国大会を廃止するという決定をしました。私は素晴らしい決断だと思います。なぜ若年層での全国大会を行わない方がいいのか三つの理由で説明します。
①そのスポーツが弱くなるから
②全ての子供がスポーツを楽しめないから
③競技を超えた学びが得られないから
まず若年層の全国大会が成人になってからの競技力向上に役に立っているかというとマイナス面の方が多いと考えられます。その理由の一つには早すぎる最適化があります。子供は大人が小さくなったというわけではなく大人と子供では特性に違いがあります。発達にばらつきがあると言ってもいいです。
例えば体が小さいのになぜか子供は字を大きく書きます。それは筋の調整と連動がうまくいかないから細かい作業がまだうまくできないからです。その一方でリツイ体制のバランス自体は大人とそれほど変わらないぐらいうまくできます。このように子供は大人のミニサイズではありません。
ということは子供の世代の柔道は大人の柔道のミニサイズではなく勝利のためには違う戦略が求められるということです。早すぎる最適化とはこの子供時代の勝ち方に最適化してしまったが故に、大人になって本来行き着くレベルまでいけなくなってしまうことを指します。つまり器が小さくなるということです
柔道はそれほどではないかもしれませんが、日本人が海外の試合に出てよく聞かれる質問は「日本人は10代ではあんなに強いのに、20代になってからなぜ弱くなるのか」です。要するに若年層の時代にトレーニングをしすぎて、大人になった時に世界とは戦えなくなっているというのが現状だと考えています。
欧州で中高の全国大会が禁じられた時のロジックは「子供たちはスポーツを楽しむべきであり、それは試合に出ることで補欠で試合に出られないことや過剰に勝利至上主義に走ることは避けなければならない」というものだったそうです。全国大会は勝ち抜き戦の構造を作り、敗退と補欠を生みます。
日本のスポーツは全てが「選抜システム」であると言われます。それは全てが才能を発掘する目的に向かっていて、全ての子供がスポーツを楽しむという視点の欠如に向けられた批判です。一方で勝ちたい子供を制限するのかという反対の声もあります。しかし現場に行けばわかるのは最も勝ちたいのは大人です
早い段階で日本一になりましたので、離脱していく選手をたくさんみてきました。そのような選手にある特徴は本人より周りが興奮していることです。親と指導者が選手の才能に興奮して舞い上がっている場合、その選手の才能が潰れる可能性が高くなります。なぜなら最も重要な主体性が損なわれるからです
99.9%以上の選手はオリンピックに行けません。アスリートで食っていけるのもそのぐらいの確率です。ほとんどの選手はアスリートという職業にはつけません。だからこそ競技から学んだことにどの程度の普遍性があるかが重要になります。では普遍的な学びとはなんでしょうか。
それは少なくとも自分が何をしようとしているかを知り、何が起きたかを理解し、どうすればいいかを考えることができることで成立します。リフレクションです。ただこの能力は育つのに時間がかかります。若年層だけで活躍させようとするならば、この手順を省く方がうまくいきます。
つまり言われた通りやる人間を作ることです。しかし、このような選手は引退した後、苦労します。自分の体ではある程度のことはしてきたわけですが、一体それがなんだったのか本人がわかっていないからです。考える力が育っていません。
以上の理由から、全国大会の廃止は素晴らしいことだと私は考えます。ぜひ他競技でも追随してほしいです。
https://twitter.com/daijapan/status/1504769315031351296?s=20&t=OGirhEGahj5wF9NpUI0ehA