少し前に量子論に触れた。
いわゆる二重スリット実験について。
光源とスクリーンの間に二重のスリットを置くと、光は波の性質を持つのでスクリーン上には二重スリットによって干渉縞が現れる。
しかし光は光子という粒なので、粒を一つ一つ撃って光子同士を干渉しないようにすれば二重スリットの先には2本の棒が現れるはずである。ところがこの場合でも干渉縞が現れてしまう。
そこで、スリットのどちらを光子が通っているのか観測するとあら不思議。観測したときには光は粒として振る舞い、スクリーン上には干渉縞ではなく二本の棒が現れるのである。
あたかも光は自分が観測されているかどうかを知って振る舞いを変えているかのようである。
光子をはじめとする量子は観測される前には雲のような確率の重ね合わせ状態にあり、観測したとたんに1点に収束すると考えられている(コペンハーゲン解釈)。
観測すると言うことが影響を与えているのであるが、対象に影響を与えない観測は困難なので二重スリットに入る前の観測が光に影響を与えて粒として振る舞うようになっているのではないかと考えられていた。ところがどうもそうではないらしい。
観測が与える影響というのが問題であるのであるが、いくつかの実験によって光は二重スリットを通ったときには何も観測せずとも、結果によって干渉しているかしていないかを分かるように観測の仕方を変えてもやはり観測した場合としない場合で光は振る舞いを変えることが分かっている。
つまり、二重スリットを通った時点では何の影響も与えていないのに、観測が二重スリットを光が通るときの挙動に影響を与えているというのである。まるで、観測が過去に影響を与えているかのように見える。極めて不思議である。
VIDEO
ところが実は光が未来によって挙動を変えること自体は昔からよく知られている。
レンズの表面には薄膜コーティングが施されていて、光の干渉現象によって反射を防ぐ処理が行われている。
コーティングを増やすほど光にとっては邪魔なものが増えるはずなので暗くなりそうなものであるが、ところがどっこい、薄膜コーティングを施すことでレンズの透過率が高くなり、明るくなるのである。
キヤノンサイエンスラボ
レンズコーティング
https://global.canon/ja/technology/s_labo/light/003/03.html
上のリンクに簡単な解説があるが、これは、薄膜によって膜表面とガラス表面の二つの反射光同士が干渉して反射がおさえられるのでありが、干渉が起こる条件ではなんと光が反射しなくなって透過するようになるという奇妙な現象が起きるのである。
光は反射した先で干渉が起き、光が進めなくなると分かっているので表面で反射すること自体をやめてしまうのだ。
屈折による全反射もこれと似ていて、入射角を大きくして屈折光がもう屈折出来ない条件では全て反射に転じてしまう。
光は未来によって挙動をあらかじめ変えるのである。
理研と日立の実験も、結局未来によって光があらかじめ挙動を変えるという光の奇妙な性質が二重スリット実験の観測問題を左右していることになる。
観測行為の物理的影響が直接に光の挙動に影響を与えているということではなく、時系列を無視して観測は影響を与えるのである。
とは言うものの、薄膜干渉が示すように、未来が現在の光の挙動に影響を与えているという事実は、未来の物理的影響を過去の光が受け取っていると言うことであるので、未来の観測が過去に影響を与えるというのも同じことなのかも知れない。
私たちのスケールでの常識からするとあり得ないのではあるが、それは私たちが限られた知見の中でそういう世界しか知らないのであって、実は薄膜干渉のように光の挙動が未来によって変わっているという事実を私たちは光学現象として受け止めているように、時間は一定に進み、未来は過去の積み重ねなのではなく、この世界の過去と未来は相互干渉する一体なものなのだということでしかないのだろう。私たちのスケールではその影響がほとんど見えないだけなのかも知れない。
Posted at 2022/04/02 18:40:13 | |
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