■ メールが届かなくなる重大トラブル発生
ニューラルネット時代に管理組合向けサービスとしてマンションのドメインを取得していたが、当マンションでは管理組合としての導入は行われなかった。
しかし、メールアドレス発給のサービスは加入者向けに行われ、マンションに住む限り一生使えるメールアドレスになる……はずだった。13年後には結局諸事情からその時のドメイン所有者によって廃止されてしまったのだが。
さて。
発生したのは特定のプロバイダーに対してメールが届かなくなると言うトラブル。ある日ユーザーから「5つのメールアドレスのどれにもメールが届かなくなっている」
この問題については、まず当マンションにおけるメールサービスについて理解してもらわないとならない。
■ ドメインを引き継いだ自治会で行ったメールサービスの方法
ニューラルネット撤退後、ソフトバンクBBはニューラルネット時代のサービスを一切引きつがなかったため、メールボックス提供サービスも終了した。
しかし多くのユーザーがいたため、どう対処すべきか、ユーザー有志の間で検討された。
何処かのサーバーを借りてメールボックスを確保することも考えられたが、その費用が高く、仮に誰かがドメインを引きつぎ事業を継続したとしても、その必要経費を確保することは困難だった。
集金すると言っても1メールアドレスにつき年間100円とかのお金をどうやって確実に集めるのか、その手段が見つからなかった。口座振替も、手数料がかかるし実は結構大変なのだ。
可能な限り安くする方法として自分が提案したのは、メール転送機能のみを使い、各ユーザーには転送先となるメールアドレスを確保してもらう方法。これならばサーバーにメールボックスをおかないので容量を必要としない。最低の容量での契約ですむので大幅にコストダウンできる。
ドメインとサーバーで年間4,000円弱になり、1アドレスあたりのコストは大幅に下がる。これならば自治会の予算で負担しても良いと言うことになり、全戸が使えるようにすることを条件として自治会のサービスとして行うことになった。自治会としてのサイト構築の研究につかうということも兼ねていた。
自治会報でこの旨を伝え、図入りの設定方法の説明もつけて希望者を募った。ただし、旧ニューラルネットユーザーを優先してアドレスを確保させ、その後他の住民の希望を受け付けることになっていた。
■ 「さくらインターネット」と「ぷらら」の間でのトラブルだった
連絡を受けて調べてみたが、発生しているのは、転送先のメールボックスとして「ぷらら」を利用しているユーザーだけであった。
そこで「ぷらら」に問い合わせてみたところ、「さくらインターネット」から大量のメールが「ぷらら」のメールサーバーに送りつけられ、ぷらら側でさくらインターネットからのメール転送に制限をかけたためだと説明があった。
転送制限がかかったために届いていないメールについては「さくらインターネット」に問い合わせて欲しいとのこと。
そこで「さくらインターネット」の技術関係の窓口に転送の可否について問い合わせたところ、管理者アドレス宛に転送されなかったメールを転送するという返答を得た。
しかし、ここで「さくら」のサーバー管理者がとんでもないことを言い始めた。
要約すると、
・140を超えるメールアドレスが設定されている。
・そのために大量のメール転送が起きていて、共用メールサーバー全体で「ぷらら」などに転送できなくなっている。
・メールアドレスの転送設定を解除せよ。
・状況が改善しない場合は「さくら」側で転送設定を解除する。
と言う。そちらの転送利用が原因で共用サーバー全体に迷惑をかけているから是正せよ、是正がなくばこちらで転送を解除すると脅してきたのだ。
最初は何事かと驚きショックも受けたが、冷静になり、戦うための情報集めをはじめた。
サバ管の言うことは、事実に基づかない思いこみによる不当な脅しであると確信できたからだ。
■ サーバー管理者と戦う
まずは、サバ管に
看過できない内容があり、厳重なるクレームを申し上げます。
本件について必要ならそちらの責任者なりクレーム対応の専従者の対応を求め
ます。 |
と伝え、不当な要求であることをひとつひとつ理由を挙げて反論した。
なぜ不当であると反論できるかというと、「さくらインターネット」を利用しはじめる前に、自治会での利用であること、多くのユーザーに無償で転送用のアドレスを発行することについて問い合わせをしていて、問題ないという回答を得ていたのだ。
140を超えるメールアドレスについては規約上何の問題もない。
その上、「さくら」から「ぷらら」へ転送設定していたのは5メールアドレスのみであり、そのうち実際にメール転送が起きていたのはほぼ1アドレスのみであった。
このユーザーは単なる一般ユーザーで、メールマガジンやメーリングリスト、個人メール、迷惑メール程度しか受信していない。ごくありふれた利用状況でしかなかった。これが負担になると言うのなら、サーバーの仕様がまともでなく貧弱というより仕方が無い。
それにもかかわらず、サバ管は転送メールアドレス数のみを問題として、解除せよと言ってきたのだ。全くデータに基づかないことを主張しているのは間違いなかった。
たとえ大量の迷惑ネールを送りつけられていたとしてもそれはユーザーの責任ではなく、ユーザーは被害者でしかない。
「ぷらら」側は『「さくら」側と調整し、「さくら」側でメール流量の調整をしたという報告を受けているので、様子を見て欲しい』と伝えてきていた。
そこで、サバ管の主張の不当性を一つ一つ指摘すると共に、現状では経過観察が第一であり、登録メールアドレス数だけを根拠に各個人が使用するライフラインとも言うべきメールアドレスを解除せよという要求は順序がおかしいことを伝えた。
また、迷惑メールはユーザー側にコントロールが難しい被害者の立場であること、実際に流量が極端に多いメールアドレスがどれであるかを伝えてくれれば、ユーザーに対して迷惑メールを少なくするための指導をすることもできる、とも伝えた。
更に、実際に「ぷらら」に転送されているのは1アドレスだけであることを指摘し、これが原因であれば短時間にたまたま大量の転送が起きただけである可能性があり、「さくら」側の調整で解決するするのではないかとも伝えた。
規約を守っての利用であり、こちらの主張や提案が受け入れられないようであれば、契約を解除するとも明言した。これは一種の脅しである。サバ管の対応がまずく顧客を失ったとなれば、さくらインターネットの中で問題になりかねないことを踏まえてのことだ。
また、この障害が当自治会が含まれるサーバーのみで起きているのかどうかを問い合わせた。
一方、ユーザーに働きかけ、ぷららではないアドレスへの転送に変更を了承してもらった。これでも「さくら」側が主張する負荷が起きていると主張するのであれば客観的な証拠を出すよう、サバ管に求めた。
更に、サーバーのコントロールパネルから過去のサーバー負荷の記録を取りだし、この値がサーバーの負荷をかけている状態であるかを問い合わせた。全くの低負荷であることは分かりきっていたが、あえて「素人のため判断できず、見解を伺いたい」とした。
■ サバ管が言うことが思いこみであることを示す根拠を次々と指摘したところ……
こういう対応では、とにかく感情的になってはいけない。あくまで礼節をわきまえ、冷静で客観的なデータを挙げて正当性を主張するべきなのだ。
サバ管は日頃から無法なユーザー相手に辟易としているから、まずは脅しと考える習慣ができている可能性がある。
筋の通ったユーザーにはそれなりの対応をしなければ行けないと考えても不思議はない。
さすがに効果があり、そうそうに謝罪があった。
この度、弊社からのメールにて大変不快な思いをされたことを深く
お詫び申し上げます。
お客さまが仰られる通りぷらら様にメール転送できない原因は、お客さま
も被害者であり、お客さまだけの責任でもございません。
お伝えしました、140件を超える転送設定に問題はございません。
弊社でも一律に転送設定を解除することはございません。
不適切な記述があったことも、重ねてお詫び申し上げます。
今回の場合、ぷらら様宛てのメール転送設定を弊社側で解除する前に
お客さま側でご対応いただければと思った次第でございます。 |
そのあとには言い訳めいたことが書かれていたが、サーバー負荷記録の数値を挙げ、実際にサーバーに負荷をかけていたかどうかという問いについては、
お客さまのメール転送による"さくらのレンタルサーバ"に大きな負荷は、発生しておりません。 |
と認めた。
■ 「さくら」の他のサーバーでも同様に転送制限を受けていた
「ぷらら」の転送制限が当自治会が含まれる共用サーバーのみで起きていたかどうかの問いに答えなかった。
そのころ、職場の同僚と話をしていて、「ぷらら」-「さくら」間でやりとりしたメールが届かなかったと聞いたのだ。
「さくら」は多数のサーバーを管理しており、偶然同じサーバーであった可能性が極めて低い。
つまり、当自治会のサーバーのみが制限を受けていたのではなく、さくらインターネットのサーバー全体が「「ぷらら」から制限を受けていた可能性が高いのだ。
「ぷらら」のサバ管も、セキュリティソフトの作動で、さくらインターネット全体に制限がかかった状態だと言っていた。
「さくら」のサバ管は当自治会のメール転送が原因で当自治会を含む共用サーバーが制限を受けていると主張していたのだが、更に根拠のない主張である可能性が高くなった。
一方、自治会の他のプロバイダー向けの転送では全く転送制限を受けていない。「ぷらら」の側に問題がある可能性が高い。
そこでサバ管にこの件を伝え、広く「さくら」と「ぷらら」の間のみに発生している可能性が高いこと、今回の問題の原因が「さくら」側の転送量の問題なのか、「ぷらら」側の転送制限の閾値が低すぎるのか、どちらが原因であるのか明らかにして欲しいと言うことを伝えた。
■「さくら」も「ぷらら」側の問題を認めはじめた
客観的な事実の積み重ねによって状況を整理させていったところ、「さくら」のサバ管は「ぷらら」のセキュリティポリシーの変更によって生じた可能性について言及しはじめた。
ぷらら様より公式なアナウンスはいただいておりませんが、10月23日まで
問題なく転送されていたメールが、突然転送されなくなった原因は、
ぷらら様側でメールサーバのセキュリティポリシーを変更された可能性が、
ございます。
ぷらら様のお話では、弊社管理IPネットワークの範囲より、メールを大量
に受信している状況が続いており、ぷらら様ののメールサーバ運用に支障を
きたしているとの警告とともに転送拒否をされている報告をいただいており
ました。 |
これで「ぷらら」側に問題がある可能性がさらに高くなってきた。
サバ管としては「ぷらら」から警告を受け転送制限を受ける中、たまたま問い合わせが来た利用者が140もの転送メールアドレスを設定していたことから「犯人はこいつだ!!!」と決めてつけてしまったのだろう。
しかし、何の根拠もない話で、利用者としてはとんでもない。
このあと調べてまわるうちに、あるメーカーの、サーバー用セキュリティシステムがアップデートされた時に、転送流量に関する設定が低すぎたために転送制限の問題が起きたと言うことが分かってきた。
このシステムは流量を見て自動的に転送制限を行い、転送元に警告を発するらしい。
ぷらら以外でも同じシステムを導入しているメールサーバーにおいて同様なトラブルがあったらしいが、日本の大手のプロバイダーでは同じシステムは導入しておらず、問題は発生しなかったようだ。
■ 戦えなければ泣き寝入り?
今回の件で、「転送アドレス数が多すぎるので削除せよ」というサバ管の要求に従っていれば、メールサービスそのものを放棄せねばならなくなりかねなかった。相手が専門家であることを思えば要求に従うユーザーもいただろう。
しかし、冷静に筋道を立てて考えれば、規約上サバ管の主張はおかしいし、サーバーのデータからも主張がおかしいことを証明できた。
滅多にあることではないだろうが、サバ管からもあらぬ疑いをかけられサービスを停止させられかねないことはあるのである。
それにしても、ボランティアで10年間このメールサーバー管理をしてきたが、何でこうも疑われてばかりいるのやら。
余計なボランティアなんかやらなければ、不愉快な思いをすることもないのだが。