2020年東京五輪・パラリンピックに向け建設が進む選手村=6月25日、東京都中央区

写真拡大 (全2枚)


 暴力団から労働者の派遣を受けていた疑いが持たれている埼玉県川口市の建設会社が、2020年東京五輪・パラリンピックの選手村工事に下請けとして参加していたことが27日、関係者などへの取材で分かった。

 この建設会社は今年2~7月、埼玉県戸田市と川口市の公共事業で、暴力団から作業員を紹介されていたとされる。警視庁組織犯罪対策3課は27日までに、無許可で労働者を派遣したとして、職業安定法違反容疑で指定暴力団極東会系組長の広尾光信容疑者(70)ら4人を逮捕。法人としての同社と代表取締役についても、同容疑で書類送検する方針を固めている。

 関係者などによると、同社は東京都中央区晴海で建設中の東京五輪選手村宿泊施設の工事に2次下請けとして参加。この工事でも広尾容疑者らから作業員を紹介されていたとみられる。同社に取材を申し込んだが、回答を拒否した。

 同社にとって、違法に労働者派遣を受けることは、人手不足の解消に加え、社会保険料や人件費を削減できるメリットがある。組対3課によると、広尾容疑者らは公園にいる路上生活者らを集めて寮に住まわせ、工事現場などに派遣。最大で賃金の約3割をピンハネしていたという。

 民事介入暴力対策に詳しい尾崎毅弁護士は「五輪のような納期が厳しい大規模工事で、下請けまで暴力団排除を徹底するのは簡単ではない。ただ、国家的な大事業だけに全事業者が暴排を真剣に考えないと暴力団の大きな資金源になってしまう」と警鐘を鳴らしている。