エアコン修理や移設に使える真空ポンプの安いのを探しているとき、なぜか気になったのが、ダイヤフラム式真空ポンプのジャンク。
油回転式真空ポンプがエアコンの真空引きに使われるが、オイルで密閉する方式のため、排気にオイルが混じる欠点がある。また、ポンプを止めたときにオイルが逆流することもあり、これを防ぐために電磁弁で自動的に綴じて逆流を防ぐものが多い。
一方、ダイヤフラム式真空ポンプはピストンでダイヤフラムを動かして空気を引き込み送り出す。時間あたりの排気量はたかがしれているし、真空度もあまりよくない。ただし、排気がクリーンであるというのが最大の特徴だ。産業用機器組み込みで使われることが多い。
この排気がきれいというのが、何かに利用できそうだなと考えてしまったのだ。よせばいいのに。でもまあそこはジャンク。新品なら5万円程度だが、ジャンクなら破格値だ。
購入したのは
ULVAC 単相100V ダイアフラム型ドライ真空ポンプ DAP-30
今も現役製品の真空ポンプだ。ダイヤフラムやガスケットなどのリペアキットも手に入る。
ヤフオクで買ったのは、一部が破壊を受けているものだ。恐らく上から何か重い物を落として壊したか、ポンプ自体を落としたのだろう。
排気側が割れてしまっているし、ピストン室のヘッドを固定する部分にもひびが入っている。
当然部品取りなどのジャンク扱いだった。
届いてみると、動作はきちんとするものの、排気側はコネクタ以外の所から漏れている。
吸気しか使わないのならこれでも問題は無さそう。
しかし、これをリペアして完調にするつもりだ。
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ヘッドを外してみたらビックリ。
いきなりダイヤフラムがもげた。
この写真はあとで撮ったものだが、金属のヘッドの周りにあるのがダイヤフラム。
ピストンへの取り付け部分を外してダイヤフラムを観察するとこんな状態。本来1枚であるべき物が、ヘッドに沿って破れてしまっている。
ゴムが硬化しており、内部のナイロンも含め疲労・劣化し、限界を迎えていた。
このダイヤフラムは【布入りゴムシート】でできていて、一般にはナイロンの繊維で強化されたCRゴム(クロロプレンゴム)のシートが使われるそうだ。
リペアキットを買えばカット済みの物が手に入るが、キットは4000円台で高いし、それではつまらない(笑)。2mm厚の布入りCRゴムシートを入手して、自分でで作ってみようと思っている。
ヘッド部分の割れは、エポキシパテで埋めることにした。
エポキシパテの中でも強烈に堅いヤツ…GenusのGM-8300の残りがあるので、これを使う事にする。
最初、ヘッドはアルミニウム合金かなと思ったのだが、それはヘッドのトップ部分だけで、土台は樹脂だった。恐らくABS樹脂。
業務用の機器だから金属が多いのかと思えば、そう言うものでもない様だ。先日のクーラーマックスもポンプのコンプレッサーの中核部分は金属だが、オイルタンク兼排気チャンバーは樹脂だったし。
金型を起こせるぐらい大量に出る物なのだろうか。むしろ、だからこそ同じものを長く売り続けなければならなっているのかも知れない。
幸いパテはまだ使えるようだ。古いパテは硬化してしまって使い物にならなくなることが多い。自動車修理用の厚付けパテは、開けてもないのに駄目になりやすい。
パテ盛り。チューブ接続コネクターは、シリコンスプレーを吹いてからパテを盛っている。
パテは、少々厚く盛りすぎた。
このパテはアルミニウム並みに堅い。金属接着&肉盛り、溶接代替にもと書いてあるぐらいだ。コネクターを接続するので、丈夫な物でないと駄目だと思ってもいた。
これを削るのが本当にしんどい。ちょっと後悔した。
で、ざっくり形を出したところまでが今日の仕事だ。
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ヤスリをかけると金属光沢が出る。
実はこのパテを選んだときはまだヘッドは金属だと思い込んでいたのだ。樹脂だと分かっていたら、別のパテを使ったかもしれない。
まだざっくりなので、今後もう少しきれいに削り、足らないところは肉盛りし直す。
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パテ盛り&成型ぐらいならそれほど時間はかからないはずだが、実はここまでに結構時間を取られてしまった。
と言うのも、ピストンにダイヤフラムを留めている皿ネジがえらく固着していて大変だったのだ。
一つは無理に回そうとしてらなめてしまった。
もう一つはインパクトドライバーでガンガン叩いて何とか緩められた。
なめてしまった方は仕方が無い。ANEXのネジ取りビットを試したがびくともせず。エキストラクターを使えば抜けるかもしれないが、固着しているネジにエキストラクターを使って折ってしまうのがありがちな事故だ。エキストラクターは硬いがもろい。これをドリルで削ってして取り除くのは至難の業でもある。だからあまりやりたくないし、手元にはなかったはずだ(いくつかは、多分、実家に置いてきている)。
皿ネジなので、頭が埋没しており、つかみ所が無いのでネジザウルスも使えない。
で、仕方が無いから、ドリルで頭を削り取る。
これがステンレスネジなので、堅い堅い。
なかなか削り取れず、往生した。それでもなんとか削って取り外しに成功した。ささっているねじ部は幸い簡単に回すことができた。固着していたのは頭部分だったのか?
上が正常な皿ネジ。下が頭をドリルで削り取った物だ。
ネジはM5 長さ10mm、 ピッチ0.8で、どこにでもあるようなものだ。このサイズのタップ立てもあるので、ネジが取れない最悪の場合はドリルでもんで、タップを立て直そうかと思っていた。
いやあ、大変だった。
追記:
産業用のためか、塗装が大雑把。組み立て終わった状態で全体に塗装をかけているから、パッキンやネジが丸ごと塗装の下になって固められている。空冷ファンカバーの下は塗装が届いていないし。
何かこう、民生用とは感覚が違うのだが、塗装で塗り固められているのでメンテナンスもしにくいというのは何なんだろうか。