地震に対する建築物の対策はいくつかある。
耐震構造は丈夫な構造にすることで揺れに耐えられるようにするもの。建物に強いストレスがかかるが致命的な破壊や倒壊を免れようとするもので、強い揺れでは各所のクラックなどが発生する可能性がある。内部の揺れは大きく家具の転倒などは前提となる。
免震構造は地面と建物を直結せず、ゴムなどの緩衝材を挟んで直接揺れが伝われなくするものである。当然建物そのものへのストレスが少ないので建物そのものを軽く作ることができ、内部の揺れが小さいので家具の転倒も少ない。ただし、長周期地震ではむしろ揺れを増幅する可能性が指摘されている。
制震構造は、建物の各所に揺れを吸収するダンパーなどの仕組みをつける(パッシブ制震)ものや、建物の上部におもりを設置し、地震の揺れの際にこのおもりをアクチュエータで動かすことで揺れを干渉させ取り除こうとするもの(パッシブ制震)などがある。パッシブ制震のコストは安いがアクティブ制震は揺れを取り除くだけでなく建物を揺らすことが可能で、事故や効果的な制震ができるよう制御系が重要である。
**
耐震構造については、建築基準法施行令によって耐震基準が決められており、これを満たすことが求められている。
免震や制震はそれぞれの判断に行われる地震対策である。
中でも免震は最近多く採用されるようになってきている。建物重量が小さく効果が薄いとされていた戸建て用の免震装置も開発されている。
免震は
既存の建物にレトロフィットさせることも可能で、たとえば上野の
国立西洋美術館は1998年に工事をした(よく前を通りがかったのでよく覚えている)。鎌倉の大仏も1961年の改修で台座と仏像の間に滑りやすくするステンレス板を挟む免震工事が行われている。他の事例では、
豊島区役所本庁舎(1997-2000年)(本籍が豊島区なので戸籍を取りに工事中に何度か行った)や
横浜市庁舎(2007-2009年)が免震改修を受けている。
最近では病院や庁舎などより多くの建物に免震が取り入れられ、民間分譲マンションでも時折見かけるようになった。
福島第一原発でも「免震重要棟」という震災時の初動対応を行う建物にも取り入れられている。これは新潟県中越地震(2007年)で建物の扉が開かず初動が遅れたことの反省で設置されたとのことだ。
免震や制震技術が紹介されるようになったのは1986年頃だったと思う。
この年は鹿島がアクティブ制震を発表した年で、他の方式と併せてテレビ番組で紹介されていたのを見たように記憶している。
中学生だか高校生だったかの頃の自分は、そうした紹介を見て将来耐震ではなく免震の建物に住むとこのとき決めた。
1998年に購入したマンションは免震構造を採用しており、子供の頃に決めたことを実行することができた。
**
2011/3/11、私が住む千葉市美浜区では震度5強を観測した。
2:46PM自宅にいた私はその揺れと免震効果を体験することになった。
それ以前に震度5弱を経験したことがあったが、明らかにそれより強く長い揺れで、遠方で相当大きな地震が発生したことを確信したが、免震の効果でゆったりとした揺れとして体験した。
船に乗っているようなゆーらゆーらとした揺れで、内部的な被害は一切なく、食器棚やキュリオケース内の食器や飾り類もほとんど動いた形跡すらなかった。
ガスのマイコンメーターの地震検知も働いておらず、いかに免震機能が有効に働いたかがわかる。
いっぽう、デザイン的にこった部分がある隈研吾が関わった建物のせいか、複雑な出っ張りがある構造部分で、免震によって周辺との干渉部分のエキスパンジョンに痛みや脱落がおこるなどの被害はあった。他地区の免震マンションではそのようなことはなかったとのことで、凝ったデザインも考え物である。
豊島区役所庁舎では免震レトロフィットのおかげで被害はなかったが、新庁舎建築中で未実施だった古い分庁舎では壁などにクラックが生じ、キャビネットが倒れるなど被害が大きかった。ここでは免震の有無を同じ区役所内で比較でき、非常によい比較材料となった。
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20110714/548576/?P=1
同じケンプラッツに紹介されていたものでは、宮城のホテルで免震の鉛ダンパーに想定外の亀裂が生じた例がある。
繰り返し地震にさらされれば免震装置へのダメージの蓄積が起こる。そもそも強い風を受けただけで検査を要すると決められている装置である。
激しい余震が続けば徐々に性能は失われていく可能性がある。
過去2回の震度5クラスを経ており、今後震度7クラス、そして揺れの吸収があまり期待できない直下の縦揺れでどうなるか。ほとんど実験のような状態でもある。
Posted at 2011/07/24 17:11:45 | |
トラックバック(0) |
ひとりごと | 日記