今期話題のアニメ【推しの子】、とても評判が良いようで、逆に観るのは躊躇していたのだが、結局観てあっという間に原作既刊全巻読破済みの体になってしまった。ヤラレタ!
あんまり評論的なこととかネタバレ的なことはするつもりはないのだけれど、芸能界を舞台にしていて、その裏の部分に焦点を当てているからその絡みで思い出したことなど書いてみる。
***
個人的には、役者、俳優(男女ともを指す。女優に対してあまり使われない男優というと何かいかがわしい響きがあるので)さんの卵達にはすこしだけ接触があったので、思うところがある。
小学生の時、一学年上に、文部省推薦みたいな子供向け映画で主役をやった子がいた。親がステージママだったっぽい。小さい頃から劇団に入っていたようだ。
タイプとしては体が大きくややガキ大将的で、いつもへつらうスネ夫のような腰巾着がいて、「ヒーロー!」とおだてられていた。そのためもあってか、かなり自分の立ち位置を勘違いしてしまっていた。何をしても許されるとばかりに、写真クラブの備品である現像キットをいくつか失敬しているのを見たこともある。当然顧問の先生に告げ口しておいたが。
映画は学校で上映したのでその演技を見たが、都会の傲慢な餓鬼という実際と異なる静岡の田舎の野性的なガキを上手に演じていたと思う。
ただ、小6とは言えあまりにも子供だったためか、日常はえらそうに振る舞うただのガキに過ぎなかった。
その後どうなったかは知らない。まあ、本人の勘違いぶりを考えると子役は大成しない類だったのかもしれない。こういう部分は「推しの子」の子役時代の有馬かなに重なる。
こんな実例があったせいか、子供時代の自分にとって、役者へのイメージはあまりよいものとは言えなかった。
時は飛んで大学生の時だ。研究室から大学前のコンビニへ行き食料を探していると、何やら若い大学生ぐらいの人が4〜5人入って来た。
入って来た瞬間にはっきり分かった。彼らはプロの役者だ、と。一挙手一投足が一般人と違う。全てにおいて他人からどう見えているかを理解した上で振る舞う、特別なオーラをまとった全くの異世界人達だった。
この店舗をこれからCM撮影に使うわけだ。
まだ追い出されたわけではなかったが、自分に感じる全くの場違いさにいたたまれなくなり、あわてて店を出てしまった。
プロの役者はこんなにも違うのかと愕然とした。
更に時は過ぎ、自分は地元で音楽関係のステージに関わるようになった。
その時出会った子供の中に、後に宝塚音楽学校首席卒業、宝塚入団後異例の大抜擢をされた子がいた。
当時はまだ新体操やバレエをし、自分で振付を考える達者な小中学生に過ぎなかったが、ミュージカル役者を目指して活動をはじめていた頃に再会して驚いた。完全にプロの挙動になっていた。
大学生の時に見た役者達のように、他人から観られることを充分以上に意識しての一挙手一投足。当然、私も含め紹介されたそれなりの立場の相手への礼儀挨拶は欠かさず。プロ意識のかたまりになっていた。
彼女は演技や歌唱の実力の高さのみならず、有力者のおぼえをよくすることにも長けていたようだ。これはこの世界で生き残り駆け上がるためにも極めて重要なことであったはずだ。それが故に目をかけられ、異例の抜擢をされていったのだろう。
ただ、これを許さなかったのは彼女の先輩推しのファン達で、音楽学校時代から自分の推しを押しのけて役を得る彼女を目の敵にし、ネット等で執拗な攻撃をし続けた。
この動きには、彼女の周囲の生徒が動いていたのかもしれない。内部のリークのようなものもあったようであったし。そういうことがあっても驚かない。芸能界はそういう世界だろう。
結局は彼女は失意のうちに歌劇団を退団し、充電期間の後に他の劇団でミュージカル女優として活動。数年前に同業者と結婚もしたようだ。
あれほどの高いプロ意識と技能保持者で、実際に場を与えられていても、万難を排しこの業界のトップで光り輝くのは難しいのだ。そうとうな幸運も味方にしないとそれは成らない。
某有名劇団では体で役をとるという噂が絶えなかったり、某映画監督がセクハラパワハラが日常だったり、この業界は何かとおかしい。しかしながら、あまりにもの過当競争の中、日の当たる場に出るには配役をコントロールできる人間の覚えがめでたいことが必須なのは当然だ。ごく小さな世界で権力が集中する以上、どんなに非倫理的であってもそう言うものがついて回る。
これは大かれ少なかれ他のどんな世界でも同じで、小さな閉じた世界ほどそれがあけすけに行われる。人の本性とも言えるものなのだろう。
そして人気商売であるから、実力とは別のものがなければ、ファンがついてこない。一回のバズりではどうにもならない。
Youtuberが素人から日の当たるところに出られる手段としてもてはやされたが、結局は同じことだ。メジャーなYouTuberは事務所に所属しマネージメントされているし、手軽に参入できる分競争は熾烈だ。戦略と日常の努力なしには生きのこれない。
自分が観てきたことが、結構「推しの子」の世界と重なるので、そういう部分でちょっと感慨深く観ていたりする。
***
同じく地元の子で、芸能界を目指していたっぽい子がいたが、彼女はアメリカの有名バレー学校に合格し単身渡米。今は日本に戻り、シンガーソングライター、ダンサー、映像クリエイター等としてすこしずつ活動の場を広げている。先日、やはり地元の子で高校をやめて渡英しバレエを学んで来た子(偶然にも以前の勤務校での教え子)といっしょに映像作品をつくっていて、そのほんのちょっとのお手伝いをしてきた。今はちょうどインドに旅行に行っているらしいが。
彼女はアメリカから帰ってきてから地元のイベントで顔を合わせたとき、達者なガキんちょから、目を合わせると思わずこちらが恥ずかしくなるほどとんでもない美人になっていて、ほんと驚いた。と言うだけでなく、思わず目が引き付けられる強烈な吸引力を持っている。
イベントの出し物の練習中にカメラを向けると、ごく自然に最高の笑顔を向けてくる。彼女もプロ意識のかたまりだ。
ただ、彼女は少しずつ自分の力をベースに手探りでやっていて、自分を最高に磨き上げていきなりど真ん中に突き進んだ宝塚の彼女とは全く違う道を歩んでいる。親とは関係なく自分の考えで行動し、突然驚くようなことを言い出すので仰天しても、親は決して束縛せず応援しているようだ。
彼女はものすごく有名にはならないかも知れないが、きっと彼女らしいよい世界を築けるのだろう。でもまあ、いずれ地道な活動が花開くような気もする。
彼女が作り上げるネットワークで若い才能達が相互に刺激しあい、いずれ何かをしてくれることだろう。
Posted at 2023/05/06 19:08:45 | |
トラックバック(0) |
アニメ、ドラマ、小説、マンガなど | 日記