ユーグレナというとぴんと来る人も最近は多いかも知れない。
自分の場合は大学時代の研究材料が藻類だったので非常におなじみの生物であり、同時に進化の過程について非常に興味深い生物である。大学時代のボスIkuko Shihira-Ishikawaがかつて研究材料にしていたものでもある。
一方で、経済関係に明るい人は、「あ、東大発のバイオベンチャー」と思う人も多いかも知れない。投資家からは人気のベンチャー企業である。
この企業が扱っているのが、その企業名ともなっている「ユーグレナ」。もっと一般的に知られている和名なら「ミドリムシ」である。
このミドリムシは一風変わった生物で、動物のように動き回りながら植物のように光合成もすると言う両者の特徴を併せ持った生物である。
この生物が豊かな栄養素を含むことから食品として期待されていたが、長く培養がうまくいかず、利用されてこなかった。それを培地を工夫することで捕食生物を排除する方法を開発し、
大量培養に成功したことから、このベンチャー企業につながった。
このベンチャー企業が「緑汁」等のミドリムシを用いた食品類を盛んに宣伝販売している。
で、利点を説明するために動物と植物の栄養素の両方を持つと言っているわけだが、その時、「ワカメやコンブと同じ藻類で」と言っているのだが、動物については類縁関係を言わない。
それもそのはず。ミドリムシはトリパノソーマという寄生虫と祖先を同じくする生物である。トリパノソーマと言えばツェツェバエに媒介され
睡眠病を引き起こすことで知られる。
もちろんミドリムシにそうした問題があるわけでは全くないのだが、ただでさえ「ムシ」と名前がついていて気色悪がられるので、イメージが悪くなる要素は一切排除したいはずだ。
そんなことなので、口が裂けても宣伝で説明できないわけだ。彼らの苦労がしのばれる。
トリパノソーマとの共通祖先に緑藻が取り込まれて葉緑体化されミドリムシが誕生したことはDNAレベルで証明されている。
実は藻類には他の生物に共生するようになって生まれたグループが多く、多重共生も起きている。それ故類縁関係が非常に混乱してきた。
大昔のような動物・植物の二分が不可能な領域なのである。
今学問的に2つに分けると言うことはまずやられない。少なくとも5つのグループに分ける(五界説)し、それも今では古く、8や10に分ける分類もある。
生物は極めて複雑に入り組んでいる。
Posted at 2013/10/28 19:38:54 | |
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