最右新聞である産経新聞が、菅首相の浜岡原発停止要請について不思議なことを書いている。捏造まがいや都合のいい部分だけを切り抜いての攻撃、揚げ足とりが多い奇妙な報道機関だが、今回も原発政策は温存することを前提に何が何でも難癖を付けるつもりらしい。
記事は末尾に引用した。
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今回の停止要請に唐突感は確かにあるし、原発停止分を補うことが出来るかどうかの充分な検討はできていないかも知れない。根回しもできていなかっただろう。何らかの混乱が生じるかも知れない。
が、この記事が主張しているような合意の前提は既に崩れている。「こうした浜岡原発の立地上の特異性は以前から指摘されていたこと」だが、それでも国の政策は原発を必要不可欠なものに位置づけることで停止を不可能とし、その議論自体をタブーとしリスク評価や対策すら怠ってきた。そのような思考停止が行われ続けてきたために福島第1原発の事故は起きたのではなかったのか。
それにもかかわらず危険があるのを承知で「東日本大震災後に新たに差し迫った危険が生じたわけではない」からすぐに止めるべきではないという論理はこの期に及んで承服しがたいものがある。
いつ起きるか分からない巨大地震によるリスクは、現在のメリットを下回ると産経新聞は主張したいようだ。いつ問題が起きるか分からないのだからこれまで通りリスクに目をつぶり当面メリットだけに目を向けろとは、信じがたい主張だ。しかも記事タイトルが原発否定を恐れる「原発まずありき」というものになっている。
そもそも
中部電力の原発依存率は14%(2009年発電量実績:出典
中部電力 2010年度版アニュアルレポート)程度であり、原発停止の影響が少ない電力会社である。
停止すればLNGの供給確保の問題やコスト高(
原発関連支出を根拠とした電気料金上乗せ利益分のカットによる遺失利益の発生も?)等で株主への説明ができないと言うこともあろう。
しかし、いまや原子力を推進し続けること自体への世界的疑問があり、株主からも転換を求められかねない状況でもある。社会的責任(CSR)から単純な利益圧迫だけで語ることはできない。
産経には原子力政策を見直すことへの疑問があるようだが、使用済み燃料の最終処分方法も決まらないままに原子力政策を推し進めることの方が遙かに問題が大きい。
国際的に見れば、アメリカ、フランスはなおも原発推進だが、ドイツ、イタリアは明確に原発を止める方向だ。フクシマの事故はCO
2問題で復活しかけていた各国の原子力政策に大きな疑問を投げかける形になっている。その中で日本がこれまで通りの思考停止の推進を続けることは出来ないだろう。国内的な議論はまだ不十分だが、少なくとも政府としての方針を組み立てればよい。
産経は原発を否定したと見られることを恐れているが、恐れる理由は一体何か?アメリカとの摩擦か?
走り出したものを止められないのがこれまで築き上げてきた日本のシステムであった。だが、何か疑問なり問題が出れば立ち止まることが当然必要である。ましてや生命に関わる問題ならなおさらだ。プロセスに問題があると言うが、首相という立場なら国民に受け入れられる内容である限りすべてに優先した判断があってしかるべきだろう。
なお、法的根拠のない命令はできないのであくまで要請ではあり、電力会社の判断は独自に行う。中部電力の判断が注目される。
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東西イデオロギー問題に立脚して世論誘導をし日本の原子力政策を進めさせた読売新聞は、その過去をどう扱うのだろう。
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(以下、産経MSNより引用)
浜岡停止要請 原発否定につながらぬか
2011/05/07 07:16更新
【主張】
菅直人首相は、中部電力に対して浜岡原子力発電所の全原子炉について「運転停止」を要請した。記者会見では、日本のエネルギー政策に及ぼす影響について「熟慮」があったとはみえない。唐突な決断である。
浜岡原発は東海地震の想定震源域に立地する。菅首相はマグニチュード(M)8前後の東海地震が30年以内に発生する確率が87%であることを理由に挙げたうえで「事故が起こった場合には、日本社会全体に甚大な影響を及ぼす」と説明した。しかし、こうした浜岡原発の立地上の特異性は以前から指摘されていたことで、東日本大震災後に新たに差し迫った危険が生じたわけではない。
国と電力会社と住民は、これらを十分に理解したうえで、安全な運転について合意してきた。運転停止要請はあまりにも突然で、これまでの合意形成の経緯をも否定するものになりかねない。
浜岡原発を止めることによる電力供給減対策も、説明は不十分だ。住民らの節電で電力不足を乗り切りたいとしたが、運転停止の期間や再開の見通しなど具体的な説明は聞かれなかった。これでは、国民は国のエネルギー政策そのものを信頼できなくなる。
加えて、今回の運転停止要請は法律的に規定されたものではない。原子力委員会など専門機関に諮った形跡もない。エネルギー政策の根幹にかかわる決定が適正な手続きを経ずに下されることは、重大な禍根を残すことになりはしないか。
自民党の石原伸晃幹事長も、「今後のエネルギー政策も含め、総合的に判断したのか」と疑問を投げかけた。
浜岡原発が特別な立地条件にあるのは事実である。福島第1原発のような事故を繰り返さないためには、一定期間の運転停止も選択肢の一つとして否定するものではない。しかしそれも、説明と合意の積み重ねが不可欠だ。
手続きを欠いた菅首相の要請には、原発事故の深刻さをパフォーマンスに利用したような思いを禁じ得ない。諸外国からは、日本が原発を否定したと受け止められる恐れがある。
菅首相は今月下旬、フランスで開かれる主要国首脳会議(G8)に臨む。今回の原発停止方針は、誤った印象を国際社会に与えないだろうか。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110507/plc11050703120007-n1.htm
Posted at 2011/05/08 00:47:01 | |
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