もう、ほとんどの人は全く興味がなさそうなバイオリンネタ。
自分でも信じられないけれど、5挺ものバイオリンを持つことになってしまった。そのうち1挺は形見のバイオリンなので基本は保存。残り4挺について、比較してみた。
・ノンラベル(メーカー不明、生産年不明)
もっとも軽い(431g)。古い(100年程度?)ため、木材がやせ水分も減ったためであろう。低音が非常に豊かで、音の厚みが別格。ただし下が厚い分少々ダークな印象。弾き方による音色の変化が大きく表情が豊か。
E線が少し弱かったので少し太いものにしたらとバランスがとれた感じがする。
山形県の旧家から出た、古い割りに傷の少ない個体。フィッティングはマホガニーに交換。
・ピグマリウス デリウス DV-120 (2002年)
軽い楽器(433g)。中国生産で国内最終調整をしている楽器。そのためコストパフォーマンスが高い。おそらく音が出やすくするため木を薄く削って作られている(中国製では多いらしい)。長期間の使用ではどうなるのか気になるところ。
低音が豊かで高いところもよく出るので比較的華やか。音の厚みではノンラベルに譲るがバランスはよいかも知れない。表情がそれなりにある楽器。カールへフナーNo.660やスズキNo.330にくらべると低い音が厚い分少々ダークな音色。
手工を謳っているが、機械で切り抜いたりプレスで作っていないと言うことか? 中国製では人件費が安い分人が作っているのが普通らしいが。
10万円クラスの楽器で、入門・練習用として位置づけられている。
魂柱が倒れているためジャンクとしての出品だったが、傷が少なく美品だった。この楽器としては安めの落札だった。
・カールへフナー No.660 (1950年代?)
重め(506g)だが、これぐらいがバイオリンの質量としては普通らしい。G線の低音は4挺中もっとも弱いが華やか。音の厚みはそれほどないが、パワー感があり音がよく伸びる。とても反応がよい。クラッシックよりもポピュラーな音楽に向きそうなキャラクター。
ドイツ製の量産品。塗装の仕上げは今ひとつ。スクロールの作りも少々雑な印象。当然、明らかに手彫りだ。ドイツの老舗量産メーカー カールへフナーが戦後成長していく初期のものだけに、荒さがあったのだろう。工房製の手工品と比較してはいけない。
裏板には薄いがトラ杢が出ている。最低限よりはマシなグレードか?
1万円を切る格安入手だが、つき合いやすく元気な音色。入手時から傷が結構あるので気にせず練習に使える。
・スズキ No.330(1975年)

おおよそ標準の重さ(472g)。G線の低音もそれなりに出るが、シャリシャリとした非常に高い音の成分が強いのが独特に感じる。中音域が弱いのか音の厚みは今ひとつという印象。
他の楽器の音に共鳴して鳴りやすい。
言うまでもなくスズキバイオリンの量産品。仕上げは美しいが、量産らしくスクロールの彫りは少々甘い。
傷が少ない美品で、バイオリン工房で整備されており、弓毛や弦も交換されているので、いい状態で安心して弾ける個体。自分にとっての基準の楽器。
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実際に弾いてみると、ノンラベルの音がもっとも密度が高くぐっと来るものがある。
逆に薄く感じるのがスズキだ。
これは音の表情変化の度合いにも言える。
イメージとしては
ノンラベル君
=======(壁)
ピグマリウス デリウスDV-120
-------(壁)
カールへフナーNo.660
スズキバイオリンNo.330
という位置づけになる。値段相応というところなのだろう。
ただ、ノンラベル以外は基本的に入門・練習用の楽器。あんまりどうのと言っても仕方がないのかも知れない。もっと高額なバイオリンだとどんな印象なのか、興味があるが自分で買うことはないだろうな。
多くの楽器を買ったのは、結局ノンラベルバイオリンの良さを確認するためのようなものだった。
しかし個体ごとの個性がはっきりしているので、気分で使い分けたり曲で使い分けたりするのは楽しいだろうな。
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もしアドバイスするなら、スズキNo.300/330ぐらいを考えているのなら、もうすこし増額してピグマリウス デリウスあたりまで考えた方がいいと思う。No.200あたりの予算しかない場合はさすがにきついが、その場合積極的に中古に当たった方がいいだろう。
演奏時に表情が豊かな楽器の方がよい。ピアノも同じで、音色変化の大きな楽器の方がコントロールできる幅が大きい分楽器を繊細にコントロールできるようになる。
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ヤフオクを見ていて思うのは、やはり量産品は安くしか落札されない。入門クラスの楽器はやはり安い。
スズキのNo.300位だと、元はセットで定価10万円、売値で7.5万円ぐらいのものだが、ヤフオクでは2万円台ぐらいか。
元が10万円のピグマリウスDV-90だって2~4万円ぐらい。
同じぐらいのチェコ製のルドルフ フィドラーだって2~3万円ぐらい。
きちんと整備するのに1~2万円かかるのでそれを考えると差は圧縮されるとはいえ、楽器を新品で買うのはなんかばからしく感じる。中古の方が木の乾燥や軽量化が進み、音が良くなっていることが多いはずであるし。
(ちなみに、楽器の買い取りは、こうしたメジャーメーカーの入門用ではよくて数千円程度らしい。新品を買うのは馬鹿げているとすら思う。売るならヤフオクの方がずっとマシになるだろう)
古いバイオリンの掘り出し物を探すのも面白いが、良さそうなものは結局結構高くなるので、リスクに見合うかどうかは分からない。
目に自信があり、修理・修復技術もあるというのならチャレンジもいいだろう。
Posted at 2013/09/14 13:31:54 | |
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