日本に於いて、COVID-19の脅威と、政府の無策と言うより国民を意図的に危険にさらす行為についてようやく人々が声を上げるようになってきた様子はある。
かなりの人出があった連休から3週間。充分に検査があれば先週にはその影響が現れているはずだが、東京都は600人付近を上限に不自然な横ばいを続けている。しかし、全国で見ると12/9に2500人付近の上限を突破し、上昇を続けている。他地域の増加が目に見えて増えているためだ。
すでに医療崩壊を起こしていると思われる地域が出ており、日本が余裕を削り続けた医療体制の上に立脚しているもろさを露呈しているようだ。
ここでもう少し引いた見てみたい。
東アジア・オセアニアにおける100万人当たり日毎陽性者のグラフであるが、一時はかなりの増加が見られたが抑え込みに成功しているオーストラリア、優秀なニュージーランドの状況と比較し、日本の増加が目立つ。また、韓国もこの所日本に追従するように増加している。
オーストラリアの増加は南半球の冬であったためで、これから本格的な冬を迎える北半球は同様に増加していくことが予想できる。
日本はこの時期に増加していて同期して見えるが、この時期の増加は日本での変異株によるものと言われているので、独自の増加であるらしい。
抑え込みに成功していたはずの韓国に関しては、8月以降日本に遅れて同期したような動きに見えるのが気になるところだ。日本との人や物の行き来が多いだけに影響を受けているのかもしれない。株の比較ができれば言えることもあるだろう。
日本は本格的な対策がなく減少してもずるずると感染が続き、冬の増加と政府による感染拡大策によって増加しつつある状況に見える。
問題は死亡者で、オーストラリアは一時期死亡割合がかなり高かったようだ。
日本は感染者増に対して死亡者増が目立つように見える。検査は増やしてきたとは言え世界的には少なく、検査が少なすぎて感染者を把握するのに不十分であることを示唆する。
また、医療崩壊の状態にある北海道など、特に大阪での死亡者数増加は今後更に深刻になると思われる。これはCOVID-19以外の疾病や怪我での死亡の増加を引き起こす。
他地域についても重症者の増加は重い負担となり、感染が縮小に向かってもすぐには改善しない。また、COVID-19では軽症からの急変が起こりやすく、そのケアができないことも死亡率上昇に影響を与えるだろう。
世界の状況と比較すれば、東アジア・オセアニアで最悪の部類である日本も状況はマシと言える。勿論、日本の統計は信用できないので、それは意識してみる必要がある。
強力なロックダウンをせず、経済振興策をしようとすると、とたんに感染増に見舞われる。人の動きを止めないとどうにもならない。
まともな対応を否定する政権があるアメリカ合衆国は未だ増え続けている。
無謀な集団免疫獲得戦略を打ち出したスウェーデンは、他の欧州国が抑え込みつつある中拡大が止まらなくなっている。
政策的影響は極めて大きい。
死亡率に目を向けてみると、死亡率が高いイタリアの医療体制に弱さがあるように見える。それでも感染者増に対して悲惨な死亡率になった2~3月に比べ、比較的マシな状況になっていると言えるのかもしれないが。
アメリカ合衆国やスウェーデン、イギリス、スペインは100万人当たり4~7人にまとまりつつある。
比較すれば欧州では非常に優秀なフィンランドやノルウェーは、周囲の影響を完全には遮断できないのかこの所感染が拡大しているとは言え、医療に余力があるのだろう。
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我々にとって何と言っても関心が高いのは日本の状況であるが、医療崩壊が現実化している中、再度の緊急事態宣言は不可避であろう。
無策どころか感染拡大策を意図的に続ける日本政府がこのまま有効な手立てを打たない場合、感染が拡大し続け、各地で医療崩壊することになると思われる。
手を打っているオーストラリアですら冬の拡大はそう簡単には止められなかった。
早期に行動制限し、給付金をばらまく以外に手立てはない。それは感染の拡大が起こる事が十分に予想される冬に向け、連休前には決断・実行する必要があった。
例えそういう求めがあっても、日本政府は連休での経済効果を最重視し、応じることはなかったと思われるが。
ロックダウンによって感染の拡大は緩やかになり、やがて減少に転ずるだろう。しかし、充分に効果を発揮するには1ヶ月以上はかかるであろうし、抑え込まないまま緩めれば元の木阿弥になるだろう。
いずれにしろ、何度も訪れる感染拡大に対してロックダウンを繰り返しながら対応して行くシナリオしか最初からなかった。当初から分かり切っていたことである。
せっかく使える法がありながら、「新型とは未知の病原体のことであって、新型コロナは特定されている」という訳の分からない理由を付けて民主党政権で作り上げた法の適用を拒んだ自民党政権の子供じみた対応は絶対に忘れてはならない。
法は必要性があれば最大限使えるものは使える方向に法解釈するものであるし、そもそも未知の病原体にしか使えないなら、あらゆる病原体に対して使えなくなる無意味な法律になってしまう。あり得ない。
一方では違法な運用を繰り返し、法解釈を議論もなく利益のために勝手に変更し続けてきた自民党政府の所業は決して許されるものではない。
■学校オンライン化を進めなかったことが感染拡大に大きく寄与した可能性
私が以前から想定していたことであるが、日本でも8月に夏休み効果で減少したと思われる時期に次の拡大の準備を進め、子供たちが再び動き始める9月には学校を可能な限り人が接触しないオンライン化を徹底しておくべきだった。すでにICT化が進んでいた国々では、オンライン化も用意だったが、日本はそうではない。オンライン化が困難であったとしても、生徒同士の接触を可能な限り回避する手立てを講ずる必要があった。
しかし、子供は感染しない、感染させない、感染しても【子供には】影響がない(これらはすべて妄言と言える)として、むしろ学校の正常化をもとめる声が強く、文科省もそれに応じて抑制を緩和していた。全くの愚策である。(強く休校に反対し続けている前川喜平氏については私は理解できない。安倍政権への私怨も手伝っているのかもしれない。)
そのために、春にはオンライン対応できていた教育機関も、大学を除きほぼ日常運転に戻ってしまった。そうした学校でクラスターが次々と発見されている。恐らく、これまでに発見されていなかった無症状や症状があってもコロナと診断されなかったクラスターは無数にあるだろう。それが追えないクラスターの経路になっていた可能性は充分ある。
なぜこの非常事態に普通を求めるのだろうか。普通に部活動をする、普通に行事をする、ふつうに学校生活をする。なにかといえば「子供たちのため」「子供たちが可哀想だ」と。
それができない事態に直面していることを私はパンデミック発生時点から想定していた。異常な日常を受け入れられない事が、なによりも問題を拡大しやすい。
結果として子供たちにとって悪い事態が拡大しているではないか。まったくもって許しがたい。
日本(東アジア・オセアニア地区)は確かに欧米よりは感染状況はマシであるが、その理由ははっきりしない。NZではマスクは着用者が少なく、またモンゴロイドが多い国でも感染爆発しており、マスクや人種的な理由が大きいわけでも無さそうである。東アジアで常食されるダイズなど食物の影響は、オセアニアにはあまり関係なさそうだ。あとはアジア近辺がコロナウイルスが流行している地域であったことで、免疫がある可能性ぐらいだろうか。オーストラリアとNZについては隔絶された地域にあるので、東アジアとは別の要因を考えた方がよいのかも知れないが。
その何かを打ち破ることが起きれば、欧州と同じ状況になる。欧州は検査と隔離ができる体制を作っている分耐えているが、日本はそれがない分崩壊しやすい。
■ワクチンについて
ワクチンにゲームチェンジャーとしての期待がかかるが、医療崩壊を止めることが最優先課題であるので、当面医療関係者と医療の負担になりやすい高齢者優先で、広く接種が可能になるのは半年以上先のことになりそうだ。しかも、ワクチンの効果は実際に広く行ったときにどれほど期待できるかはまだはっきりせず、持続性も未知数だ。
ファイザー/ビオンテック/モデルナはmRNAワクチンという、ヒトでは初めてのワクチンで90%以上の好成績を発表している。
どちらにしてもSARS-CoV-2特有のタンパク質を細胞内でつくらせ、そのタンパク質に対する免疫を発生させるものだ。しかし、mRNAワクチンはヒトでの経験がなく、分からない事が多い。
人が多様である以上、ワクチンによる副作用の発生はある程度の割合で起こりうる。ワクチンは、最初から副作用(時に死亡)があったとしても圧倒的な効果を得られることを優先するものだ。それ故、できることならワクチンは打たない方がよく、実績のないワクチンについてはリスクが高いので、他の何らかの方法でウイルスの蔓延が避けられる見通しがあるならば、第一選択肢ではないだろう。
好成績が信頼できる限り、医療関係者は感染回避でき、そのことで医療を通じた感染拡大と医療崩壊は多少なりとも緩和される。
その中で半年程度の観察から、ワクチンを見極めることになるのだろう。
医療関係者がいわばモルモットになってしまい、最悪の場合はワクチンが元で命が失われたり行動不能になるようなこともあり得るが、COVID-19でもっと多くの医療関係者がダウンして医療が崩壊するよりはマシな選択と言うことになる。
その一方で、日本では看護師の離職も相次いでいる。リスクが高く、極めて高負荷で、賞与もカットされる状況では、いくら使命感があっても耐えがたい。再就職しやすい職種であるからなおさらだ。このことでの医療の崩壊も起こりつつある。
医師も自ら戦線離脱するものが出ているらしい。医師には応召義務があるが、現状の法解釈ではある程度の応じない幅が認められている。とはいえ、いざとなれば医師免許を持っていれば駆り出される状況もありうる。