クルマの塗色を考えると、大きく分けて明色系と暗色系になりますね。
明色系は、その色にもよりますが、クルマの「カタチ」自体を強く主張します。一方、暗色系はボディへの映り込みや反射光が目立ちますのでクルマの「面」を主張させます。マイカのきらめきを伴うと反射の領域が広がりとても美しく映えます。
シルバーはおそらく両方の要素を表しやすい塗色ではないかと思います。
明色系は有彩色か無彩色かで印象が違いますが、カタチがはっきり現れますので、カタチそのものでの勝負になります。凡庸なデザインほどつまらなく見えます。むしろ暗色系にしてしまった方がごまかしがきくかも知れません。デザイン重視のクルマは明るい色をテーマカラーにしていることが多いのではないかと想像します。多くのスポーツカーが赤・黄・シルバーを採用するのはカタチをよりよく見せるということもあるだろうと思います。
そうしたクルマで「黒」を選ぶのは好みですが、そのクルマが豊かな曲面をもっているかどうかが黒を映えさせるかどうかを決めるでしょう。
マツダが得意とするような曲面の豊かなデザインは美しい映り込みが現れますので、暗色系がとても似合います。それを意識してと思いますが、マツダのボディカラーは色彩も豊かな一方、比較的暗色系のマイカが多いように思います。
ただ、デザインの仕方によっては一つ間違うと、単なる黒い固まりになります。黒ならかっこいいと思う方もいるかも知れませんが、真四角のSUVで真っ黒というのは、デザイン的にはあんまり面白いとは思いません。平べったいスペシャリティカーで黒は「ゴキブリ」と言われがちですね……。こういう場合、ストライプを入れるなどして固まりに新たなカタチを導入するといいのだと思います。あるいは、昔々のF1
John Player Special ロータスみたいに金色のロゴが映える例もあります。そういえば、
スバルの濃い青の塗色も、あの「
555」やそれにかわる
お月様?やラインがないとなにか物足りない気がしますね。色だけではないわけです。
ストライプやロゴを自由に使えるのがレーシングカーです。前述のJPSロータスは黒のベースを見事に活かした例ですが、白を見事に活かしたのが
アリタリアカラーのランチャストラトスでしょう。ストラトス自体はベルトーネ時代のガンディーニのデザインだそうですが、ラリー仕様の前部に並んだドライビングライトとオーバーフェンダーをみごとに包み込むアリタリアカラーのラインとロゴが秀逸。これに見慣れてしまうと、素のストラトスをみた時がっかりしてしまいます。蛇足ながらアリタリア航空は経営状態の悪化から再建中。イタリア航空として再生するようです。あのアリタリア航空の色遣いは幼児時代から大好きだっただけに複雑な想いです。
ストライプやロゴは使いにくい一般車ではやはり「カタチ」と「映り込み」がほぼ全てなので、塗色選びは重要です。
シルバーは何にでもあわせやすい色で無個性的ですが、カタチも反射も活かすので、デザイナーにとっては使いやすいものなのかも知れません。マイカやメタリックのきらめきはコントラストを変え、表情を豊かにする大切な要素です。
クルマのデザインを気にするなら、自分が欲しいクルマがどちらのタイプに属するかで塗色を決めるのも考え方でしょう。もっとも、メーカーは破綻のない色を選んで提案していますので、目を覆いたくなるような選択はないはずですが。オールペンの時にはよく気を付けないといけません。
そんな中で、表情に不思議な色を付けるのが、あの「
マジョーラ」です。みる角度によって色が変わって見えるハイテク塗料で、少し前に流行ったようです。R33/34 GT-RやワゴンRなどにありました。携帯端末やJR東日本の特急車両にも使われているのでご覧になっている方も多いかも知れません。
この塗料は複雑な曲面をもつほど表情が出るので、デザイナーとしてはやり甲斐があるかも知れませんが、イヤらしくなりがちなので、難しそうです。オールペンで使うには高価だし難しい塗料なのでしょうね。
さて、ピアッツァはどうかというと、曲面はあるものの未だ折り紙細工時代のエッジが強い時代で、反射や映り込みが見事に映えるという印象はありません。マイカ使いのブリティッシュグリーンも光が当たればきらめきと深みが出てとてもきれいですが、晴れていないと黒い固まりになってしまいます。暗色系はクルマを小さく見せてしまうので、小さなクルマが余計に小さく見え、タイヤやサイドシル・バンパー・グリルなどの樹脂部品が汚れや劣化で白っぽくなっていると目立ちやすいとも言えます。ただし、折り目がきっちりしている分反射面とそうでない面がくっきりと分かれ、プレスラインが出やすい面がありますが。
私の印象ではどちらかというと明色系でジウジアーロのシャープなラインを出した方がこのクルマには似合っているように思えます。白やシルバーのピアッツァはとてもシャープに見え、個性を強く主張しています。私は白のイルムシャーがとてもきれいで好きで、ピアッツァのラインが美しいと共に、ヒトデホイールカバーの白が一体となり、とても独特なデザイン上の味付けをしていると思います。
ある塗装の業者さんに意見を聞いたら、エッジの効いた角と丸みのある角の両方が混在しているので、マジョーラを使ったら面白いかも知れないと言っていました。そういえば、私はみたことがないのですが、昔R33のミッドナイトパープルを塗ったピアッツァがいたそうで、雑誌に載った写真はとてもきれいだったそうです。
Posted at 2008/12/07 14:19:40 | |
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デザイン | クルマ