お客様の質問にお答えしてのシリーズは、続で第三シリーズとなり、それも今回で40話となりました。
第一シリーズとかはもう時代に合わないというか車自体が変わり過ぎて、オーディオレス車の比率が80%から第二シリーズで50%で、今回のシリーズでは20%ぐらいに減っていますから、完全にオーディオレスと純正の比率が逆転しています。
更にディスプレイオーディオ化されてCDプレイヤーが付いている車が激減して、初期のシリーズの内容は現状に合わなくなってきています。
それとこのシリーズは店頭で自分がお客様から受けた質問の中で多く聞かれるものを選んで書き込んでいますが、遠くのお客様からなかなか店頭に行って聞けない内容を知る事が出来ると好評を頂いています。
それでは今回は3つの質問について写真を使って詳しくお答えしていきます。
まずはハンダ付けについてのご質問で、以前は8本でイカクリップで10本でタコクリップと呼んでいた、コンデンサをハンダ付けをする時に使うクリップの数ですが、今は何本なのですか? という質問と、そんなに沢山付けて効果があるのですか? というご質問にお答えします。
現在のピュアコンの中を作る時や、ピュアコンに追加のパーツを作る時に、放熱クリップを付けてパーツが劣化しない様にしているガードは、最初は8本や10本というやり方がありましたが、現在は付くだけの本数を付けるというのが現状です。
おそらくこれで12本あると思いますが、フィルムコンデンサは熱が内部に通ると一時的に数値が上がり、その後冷えてくると数値が下がりだして、最終的に最初の数値よりも下がってしまい、狙った数値にならなくなるので、この様なクリップでリードから中に熱が伝わらない様にしています。
クリップが増えた理由は最初はJU60もベーシックパッケージもコンデンサの表記が2ケタだったのが途中で3ケタになって、JU60だけ4ケタ表示で合わせているので、正確に合わせようとしたらケタが増えれば増えるほどクリップの数が増えてきたという訳です。
もう一つはハンダの価格がどんどん上がって来ていて、「ハンダが入手出来なくなって、製品が出来なくなるという事はありませんか?」と心配されているお客様もあります。
最初はロシアのウクライナ侵攻で精度の高いハンダが軍事用に持って行かれて入手が困難というのもありましたが、それ以上に福島の処理水の海洋放出に中国が不快感を示し、レアアースやレアメタルの輸出制限をかけて、その中に錫が入っていて、工作用のハンダまで価格が上がって来ています。
昨日リモート関係のハンダ付けをするので、銀入りハンダを使うと勿体ないので、ホームセンターに工作用のハンダを買いに行ったら、何と1メートルが580円というとんでもない価格になっていました。
そんな物は使えないと昔から営業している電子パーツ屋さんに行ったら、運よく旧価格で表示されていたハンダがあったので買って帰りました。
普通のハンダがこの状態ですから、純銀を含んでいるハンダはこぼれた端を集めておいて、元が2・5%入りのハンダに輸入物の5%純銀入りのハンダを混ぜて再生して・・
ただピンセットで煤を拾ってどけている時は、プーチンの顔が頭に浮かび、「お前のせいでこんな苦労をしている!」と思いながら仕事をしています。
再生品とはいえ純銀は2・5%が3%から3・5%にグレードアップして、粒ハンダの形にストックして、ハンダ付けの時に小手に足して電動のモーターで送り出す純銀2・5%のハンダに混ぜて使用量を減らしています。
モーターで送り出すハンダは以前は輸入物の300グラムロールを使っていたのが、入手が困難になってそれを国産の100グラムロールに変更したら、同じロールでも量が今は70グラムに減っているので、かなり早くハンダロールが無くなってしまうので、粒ハンダの使用はコストを上昇させない要になっています。
お客様から心配をされているハンダが無くならないかという部分に関しては、銀入りはかなりの買いだめをしてあるので、当分は心配のない量は確保してあります。
そして3つ目の質問は、自分が最近ラジオに登場して喋っている時に、「80年代の楽曲でもしっかりグルーヴを感じる様な再生が出来る様な装置を開発しました。」という部分の、その装置は何か?という事です。
ラジオは一般大衆の方も聞かれているので、あえて専門用語は使いませんでしたが、一つはピュアコンに使うコイルを一から手巻きの物に換えたのと、もう一つはコントロールコンバーターの事です。
四色の色分けでシャープからマイルドまで音の傾向が4段階に変えて、アンプや本体の特性に合わせて適正というか、最も生音・生声に近く合わせて、古い楽曲も活き活きとしたグルーヴ感で聴けるという物です。
以前この製品の中のパーツの左右の選別で音がピッタリまとまるという事を書いた事がありますが、その中のトランス部分の最近のペアリングというか、昨日のペアリングを写真で説明いたします。
トランスは1回で10個づつ仕入れて来て、工場で作られた物をピュアディオに届いた時点でかなり細かな測定を行って数値をマーキングします。
右下の1個は1次側の係数が87で2次側が73です。
左上の物は2次側は73で係数が同じでも、1次側が98で87と違い過ぎてこれを右左では使えません。
これは大手メーカーも使っているブランドのトランスで、それでも物によって差があり、何の測定も行わずに左右に使うとピュアディオのコントロールコンバーターの左右がピッタリ合う感じは出させません。
そこで係数が1までは誤差範囲で許すとして左右をペアリングすると、10個で3ペアが見つかり、4個が相手が見つからない状態です。
それと1次側と2次側の差はコンバーターをシャープ方向にするかマイルドマイルド方向にするかで選んでいて、どのトランスを何色のコンバーターに使うかは目利きが必要になります。
前回のトランスのペアリングでも4つが相手が見つからない物があったので、これを合わせてもう1度ペアリングを行います。
すると1次側・2次側共に1の誤差の物が見つかったので、これでペアリングして、もう1ペア出来ました。
残った6個は次の製作時に10個仕入れた時にもう1回ペアリングします。
以前のペアリングの写真が見つかったのでみてみると、前にペアリングに漏れた2つを合わせて12個で、誤差1で左右を決めるとなかなか揃わないというのがお分かり頂けるでしょう。
大手メーカーがやらない高度な測定の後に、厳しいペアリングを行っているからこそのあのコントロールコンバーターの素晴らしい音色が表現出来るのです。
よくお客様から言われるのが、「高いアンプを買うよりも、そこそこのアンプにコントロールコンバーターを入れた方がよっぽど本当の音楽に近く聴こえる!」という事です。
特に最近の車には90年代にあった様な電気を食えば食うほど良いアンプと言われていた様なアンプは合わないので、コントロールコンバーターは時代に合った製品と言えるでしょう。
以上、お客様からの質問にお答え致しました。