2011年04月17日
生物濃縮にまつわる誤解
今回の原発事故で放出された放射性物質の生物濃縮に注意せねばならないが、放射性物質によるものがクローズアップされたため、生物濃縮自体に誤解を招いているようだ。
1.放射性物質だから濃縮されるという誤解
たとえば、放射性ヨウ素と安定ヨウ素は同位体の関係である。放射線を出して崩壊するか崩壊せず安定であり続けるかという違いがあるが、ヨウ素の原子であると言うことは同じ。つまり、ヨウ素としての性質に違いはなく、区別する必要は基本的にはない。
放射性物質だから生物濃縮されたり、放射線によって生物濃縮が起こると言うことは全く無いと考えていい。
2.どんな物質でも生態系の中では濃縮されるという誤解
生体内への蓄積のされやすさは、物質ごとに異なり、脂肪の中に蓄積されたり骨の中に蓄積されたりする。
一方、物質によっては速やかに排出されるものもある。
蓄積が起こりやすい例は、DDTやPCB、メチル水銀であり、生体内に取り込まれるとなかなか排出されないために食物連鎖の中でより上位の生き物に濃縮される。
排出されやすいものは、再度取り込まない限り希釈され続ける。海や湖などでは水生生物は水中に拡散した物質を取り込み続けるため、水中濃度に対して生体内に一定の濃度の物質があり続ける。これが食物連鎖の段階に応じて高くなるケースもあればそうでないこともある。
結局、生物濃縮の度合いは物質ごとに異なる。
3.どんな生物も同じように濃縮するという誤解
物質の蓄積・濃縮しやすさは生物によって違い、たとえばイカのなかまでは水中の銀を特異的に蓄積するものもあるとか。
カキは亜鉛を蓄積するが魚類が蓄積しやすいメチル水銀を蓄積しにくいなど、生物によって蓄積しやすい物質は異なる。
セシウムはキノコの仲間で蓄積しやすいものがあるという研究もある。
生物によって濃縮しやすい物質は異なり、ケースバイケースでとらえなければならない。
(必要があれば、またこれに付け足していきます)
正しい知識で生物濃縮や放射性物質の問題について考えて頂きたい。
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放射性物質・放射線 | 日記
Posted at
2011/04/17 23:29:56
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