2日前に書き込んだブログの続編です。
以前井川ブログを読んで来店された経営者の方が、音楽関係のスポンサー料の相場を知っておられて、店頭に飾ってある歌手とかミュージシャンの方の写真を見て、「このぐらいのスポンサー活動を行うとこれぐらい費用がかかっているでしょう。」と聞かれて、その次に「年間何台ぐらい取付けられていますか?」と質問をされて、その台数を答えたら「1台あたり数千円のコストがかかっていますね。」と直ぐに暗算で数字をイメージされて、「スポンサー活動で生の声や生の音を知って音造りを行っていて、それで生音に近いのなら他と比べて高い安いの問題じゃないですよね。」という話になったというのが前回のお話でした。
前回書いていなかった部分を追加すると、その方はこのブログを良く読まれて、「井川さんは自動車メーカーがどんな動きをするか事前に知られていて、それを元にベーシックパッケージを作られていますが、何か以前に自動車メーカーの仕事をされた事がありますか?」という質問も頂いていました。
実は90年代の終わり頃にある自動車雑誌の編集長を通してメーカーの方と知り合うきっかけがあって、その当時はベーシックパッケージはまだ発売していなかったのですが、メーカー製のスピーカーが今ほどはクセが強くなかったので、国内外のスピーカーにピュアコンをプラスして売れに売れていました。
そのピュアコンの話を雑誌社経由で知られて、ある自動車メーカーの方が山口県さで視察に来られました。
そして、「一度当たりの組み合わせが見つかったら後はそれをコピーすればいいので、当たりのピュアコンを開発してもらえばそれをベースにして量産したい。」という話がありました。
そういうやり取りを何回か行って、こちらから出向いて行って某所で試作車にピュアコンを組み込むという作業を行って、オプションのプレミアムサウンドとしては当時の純正よりも優れた音を再生する事が出来て、「これが世の中に出たらショップの仕事は激減するだろうな。」というレベルの仕上がりになりました。
しかし優れた試作車が出来た後に「ケーブルのコストは下げないといけない。」とか、「ネットワークの部品が高すぎる。」という話が出て来て、最後には「ツイーターの出っ張りはデザイン上良くない。」という指摘が入り、そこを全て手を入れたら・・普通のプレミアムサウンド以下の出来にしかなりませんでした。
なぜプレミアムサウンド並みにならないかと言うと、車用の2WAYのパッシブネットワークはツイーターとミッドの音がピッタリ合わない時は間を広い範囲で空かせたり、広い範囲で重ねた方が聴き易く、前者がドンシャリぽい鳴り方で、後者が女性ボーカルに合うという中音が濃くなるやり方になり、ピッタリの手前の少しディップがあるとか、少しピークのある方が逆に聴きにくくて、パーツの精度が悪いと片方が少しのピークで反対が少しのディップというのが一番悪く、それでメーカーは誤差を吸収するために大幅な重ねや大幅な空かしをしていて、中途半端にピッタリを目指してピーク・ディップを出すのは本末転倒なので、コストを下げて精度が落ちるならやらない方がいいという話になりました。
結果的にコストと精度のバランスの壁が越えられず計画はぽしゃってしまい、メーカーの試作車に加わったのはそれ一回で、その後は全く声がかかなくなりました。
しかし、「ケーブルとネットワークのコストと、ツイーターの出っ張りがあった時にはあんなにいい音がしていたのに。」とその経験が忘れられず、その後2000年代になって、『純正システムにピュアコンとケーブルとスタンド付のツイーターの追加』で車種別専用設計のベーシックパッケージを誕生させました。
ちょうど時代はトレードインスピーカーのクセが強くなって来て、「このままでは売りたいスピーカーが無くなる!」という時期だったのと、自動車メーカーの追加金を払えば5年保証というのが浸透して来て、純正スピーカーの耐久力が極端に上がって来て、低音の量もトレードイン以上に出る様になったので、『今あるシステムにアドオンする』という方向に会社の舵を切りました。
そんな会社の方向をブログでは何度も書き込んではいたものの、「メーカーの仕事をした事があるのではないか?」と予測された方には、「そうとう物事の本質を見抜く目を持っておられるな。」と感心しました。
今年はそのメーカーの仕事をした年から20年が経つので「もう時効かな?」と思い、これまで封印していた話を出してみました。
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Posted at
2018/01/12 14:45:06