7月にうちの娘が28歳の誕生日を迎えたので、「そろそろピュアコンが28周年を迎えるな。」と当時の事を思い出しました。
まだその頃はマルチアンプを推奨していて、ツイーターにアンプが1台、スコーカーにアンプが1台、ミッドにアンプが1台、更にサブウーファーにアンプが1台の、車トータルで4WAYでないと良い音は出ないと信じていました。
ただ4WAYの調整はどこをどうして良いかツボが分からず、そこで導入したのB&W社の801型スピーカーです。
801はデモカーのナンバーに今でも使っていますが、音の基準にしていたマトリクス801は福岡店のハンダ付けの机の横に置いていて、作業時のBGMとして使用しています。
当時スタジオ用モニタースピーカーと言われていたマトリクス801は、購入時にはマイナーチェンジ後のシリーズ2で、その後シリーズ3に換えて、ユニットは新品を2回交換していまだに現役で使用しています。
ピュアコンを発売する前はマルチアンプシステムの調整の基準として宇部店の前の山陽小野田市の現在の第一倉庫の場所に店舗があり、お客様も自由にマトリクス801が聴ける状態にしてありました。
ただマルチシステムをお使いのお客様はどんなに調整しても801の様な音にならず不満に思われていて、更に関西や関東のイベントに行かれたお客様が、コイルを手作業で巻き替えたオリジナルのネットワークを組まれたショップの車を聴かれてきて、「井川さんもコイルを巻き替えてネットワークを作ったら?」と言われていました。
確かにネットワークを作って良い音が鳴ればお客様には喜んでもらえますが、その反面そういう店はメーカーから販売奨励金がもらえず、ごく一部のファンに支えられているが、裕福とは言えない生活で、メーカーから「ああいう生活をしたくなかったら奨励金がもらえる販売をしましょう。」と、天国と地獄みたいなものを感じて、そういう自作ネットワークの店もそのうち消えて無くなりました。
そんな背景もあって、お客様から「コイルを巻き替えてネットワークを作ったら?」という提案にいいとは言えませんでした。
ところがマルチアンプを付けておられたお客様は801のスピーカーを聴けば聴くほど不満が増して来て、「井川さんももうコイルを巻いてネットワークを作ったら!だいたいネットワーク方式の801を聴かせておいて、マルチアンプでこの音は出ないでしょう!もう諦めたら!」と強い口調で言われました。
ただ自分は、「それをやってしまうと販売奨励金がもらえなくなるから、生活が困るので・・」と言い訳をしたら、「目の前にいい音を出すやり方が分かっているのに、それでもやらないってどういう事!メーカーが生活させてくれているのではなくて、良い音を求めているお客がお金を払って、それで生活が出来ているんじゃないの?」とかなり怒られました。
自分は3人目の子供が生まれて、それでメーカーの方針に逆らって販売奨励金がもらえなくなると生活に困る訳で、でもお客様の言われる事も正しいしと、かなり迷いました。
当時は妻が一番下の女の子と寝ていて、自分が上の男の子二人と寝ていて、仕事中にネットワークの試作品を作ると収入が減るので、昼間は普通に仕事をして、夜寝室で男の子を二人寝かしつけながらコイルを巻いたりハンダ付けをしたりしていました。
子供は珍しいからハンダ小手に近づこうとするので、「近づくと危ない!」と叱りながら寝かしつけていて、ハンダ付けで煙が出たからか男の子二人は喉が弱かったです。
秋にはある程度ネットワークの形が出来た時に、ドアスピーカーが下の方に付いている車と、上の方に付いている車で必要なコイルが違って、同じスピーカーでも中のパーツの値が違う事に気が付きました。
そこで気が付いたのがミッドの上限を決めるコイルを外付けにして、音を聴きながら巻き数を変えたら、いちいち箱を開けてハンダ付けし直す必要が無い事に気が付きました。
これは意外な発見で、これまでのマルチアンプは音が良くてネットワーク方式は劣ると言われていた、ネットワーク方式の周波数幅を変えられないという欠点を克服しました。
さらにブラックボックスも仕様を変えた物をいくつか持っておけば、ミッドスピーカーの取付位置が上の車はツイーターの音域を狭くして、ミッドが思いっきり下に付いている車には音域を広くしてと工夫したら、フロント2WAYでこんな良い音が再生出来るの?という、これまで体験出来なかった艶のある音を聴く事が出来ました。
それと自分は中学・高校とアマチュア無線をしていて、限られた小遣いで遠くに電波を届かせるために自分でちまちまとローディングコイルを巻いていて、良いコイルがどういうものかとか、コイルがピッタリマッチングしたらどうなるかという知識があったので、コイルの巻替えはスムーズに行きました。
しかしそれでも直ぐにある壁にぶち当たりました。
それは取り付ける車によって同じ音が出ず、床に防振材が厚く貼ってある車が音が良くて、鉄板がむき出しの車は音が荒いという問題でした。
その理由は中に入っているコイルが床の鉄板の影響を受けて、まずその影響を防ぐためにケースをひっくり返して、ケースの底ではなくて天井にコイルを貼り付ける事によって、鉄板の影響を受けなくするという考えでした。
更に音質アップのために床に木を敷いてコイルと鉄板の距離を離して、その木も普通の板やべニア板よりもMDF板を使った方が音が滑らかという事が分かりました。
最初はお客様に叱られて半分いやいやで仕方なく始めたオリジナルネットワーク作りも、パーツのレパートリーを増やす事でどんどん音が良くなって来て、「これを普通のオリジナルネットワークとして販売すいるのは、パーツのストックに莫大なお金がかかっているので、独自の名前を付けよう!」と、ピュアなサウンドをコントロールするという意味を込めて、『ピュアコン』と名付けました。
1990年代は国産のトレードインスピーカーも音にクセの無い物が多くて、トレードインスピーカーにピュアコンプラスでとんでもない数の取付台数をこなしていて、このままヒット商品が続くのかと思っていたら・・
1998年ぐらいから国産のトレードインスピーカーの音にクセが強くなって来て、更にカーオーディオは量販店で簡単に短時間で取り付けられる物となって、業界がこれまでと違う方向に向いて来ました。
2000年の時点ではもう国産のトレードインスピーカーにピュアコンを付けて改善しても、逆にクセの強い所が目立って、もうトレードインプラスピュアコンという図式は崩れて、BOSE社の市販向けの薄型トレードインスピーカーもそのうち販売が終了して、自動車メーカー向けのスピーカーしか作らないとなって、よいよもって販売する物が無くなって来ました。
そこで2001年にピュアディオブランドのスピーカーをOEM生産して、ZSPシリーズと純正のドアスピーカーにピュアコンとツイータープラスの『ベーシックコース』の販売を開始しました。
ただZSPは好調に売れたものの、ベーシックコースは数か月に1台という不人気で、発売から5年経った2006年にマイナーチェンジを行う事になりました。
マイナーチェンジの内容はある程度の車の台数を購入して、実際に走行時の音を確かめてパッケージ開発するというもので、もう1つミッドのコイルの点で支えている部分にやすり掛けを行って、
均等に力がかかる様にして、コイルから出る微弱振動をストレスなく下に逃がして音質アップを図るという手法を取りました。
全ての足にやすりを入れて、均等に力がかかっているか確かめるとかなり時間がかかりますが、実車を購入して開発というのと製品の精度が上げるのを同時期に行って、名前を『ベーシックパッケージ』に変更して、人気商品となりました。
そして昨年からはJU60用のピュアコンを3桁表記から4桁表記にして、中の精度も上げました。
4桁表記にするにはまず仕入れたコンデンサを全て高精度な測定を行い、ケースの中にストックして、目標の値の物を取り出してピュアコンに組み込みます。
2・006マイクロのコンデンサが必要なので、1・003を二個取り出して並列接続すると目標の2・006となりますが・・
実際にケースに組み込むために並べ方を変えて少し押さえると2・007と値が変わってしまします。
更にそこからハンダ付けするとまた値が変わるために、放熱クリップの数を増やして中に熱が入らない様に工夫しています。
それでも4桁目で値は変わるので、ケースに組んで押されて、ハンダ付けを行った後の値を調べないと、正確に4桁表記とはなりません。
これまであと一歩の音が出せなかったのは、フィルムコンデンサに力がかかると値が変わるのと、ハンダの熱で値が変わるからで、よくあるコンデンサを熱収縮チューブで包んでハイパスフィルターとかは問題外です。
JU60用に4桁シリーズを発売するより前に、ベーシックパッケージ用のピュアコンは3桁表記として、これまで以上の精度にしていますが、周波数のレンジの狭い広いと、インピーダンスの高い低いなど微妙に変えていて、1つのツイーターに対してこれだけの数のブラックボックスの中から最もマッチングする物を1個選んで組み付けています。
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