お客様の質問にお答えしてのシリーズは、旧作が18話か19話で終わっていて、その後車が大きく変わって来て、これまでのシリーズの内容を現在の車に合わせて再編集してお届けしていたところ、旧作を大きく超えて今回で第28話となりました。
みんカラブログには載せていなくて、アメブロ限定の井川の趣味の無線ブログの方は昨年の10月にスタートして、明日書き込む予定の写真は取り込んであって、それを書き込めば44話となるので、かなりハイペースで進んでいます。
アメブロの井川のブログは基本的にみんカラブログを転記したものですが、趣味の無線ブログのみがアメブロだけの記なので、気になった方は是非ご一読下さい。
さて本日のお客様の質問にお答えしては、過去の「社長は毎週休み無しに働いているのに、なぜ従業員を増やさないのですか?」とご質問に文章だけでお答えしてしていたのを、写真を複数枚掲載して分かりやすく再編集したものをお届けいたします。
何百個と並んでいるスピーカーの周波数特性とインピーダンス特性を決めるコイルですが、純白のボビンにピンクのラベルの井川が手作業で巻いたコイルがお客様から好評なのは皆さんご存じのとおりですが・・
この手巻きが好評の理由はムラなくぎっちりと巻いてあって、巻いている銅線の長さに対して得られるインダクタンスが多い、Qが高いと言われているコイルだからです。
なぜピンクのラベルかというと、赤や黄色は以前いた従業員に巻かせた物で、それが力が弱かったり、力の入れ方に強弱があってムラが出たりと、検査を通らず全て自分が定休日に出て来て巻き直して販売可能な状態にしていたので、定休日に出て仕事をしないといけないから従業員を雇うのではなく、既に従業員を雇っていた時期に検査をパス出来ない製品しか作れないから、その作り直しで休みがなくなったというのが根源となっています。
そんなに一定の力でコイルを巻くのが大変だったらと、専務が手巻きコイルを巻く機械を買ってくれたのですが、自分の引っ張る力というか、当社で必要としているQ値を得るための巻き方をしていると、機械が2日で壊れてしまい、この巻き数のカウンターが付いた機械の中心部分が割れて修理不可能になってしまいました。
これは巻き数がかなり少ないコイルのお話で、最近のディスプレイオーディオ車は機械巻したコイルを徐々にほどいて合う巻き数まで合わせるという作業が出来ないので、特に需要が増えています。
その一方でドアスピーカーを純正から交換した場合は、工場機械巻された巻き数の多いコイルをじわじわほどいて行って、適正な巻き数になったら締め直してから製品化するという手法を取っていますが、これがちょうど良い値の時にリードが互いに180度反対にある様に仕上げるというのが、これが神業が必要になります。
この機械巻されたコイルをほどいて行くと、測定器で測ると同じ方向を入り口と出口が向く事があって、そうならない様に内側と外側をじわじわほどいて双方が反対を向く様に仕上げます。
内側は1週しかほどけず、それ以上ほどくと内側に落ち込んで行きます。
内側1週で約1・5マイクロH下がり、外側1周はコイルの外周の大きさで違いますが、2・5マイクロから3マイクロH下がり、その差を利用してちょうど良い値を作ります。
ただ先ほど神業と言ったのがそれが簡単にツボがつかめず、あっという間に内側が落ち込んで、内側を全部ほどいて30マイクロH下がった小さいコイルに巻き替えないと使えなくなります。
自分が作業しているとあたかも簡単に見えますが、それは中学から高校までの6年間ひたすら良いQの高いコイルを趣味で巻こうとしていたからで、普通の人にそれをやらそうとすると2人の人間が2年づつ作業して、これだけそのままでは売り物にならないコイルが出来てしまいました。
実際にはこの3分の1の量が福岡店に置いてあり、定休日に福岡店に入って作業の途中の車両を見た後に、内側をほどき過ぎてそのままでは使えないコイルの巻替えを行っています。
なので、お客様からの「定休日に出て仕事をしないといけないのいなら、従業員を増やしたら?」は、才能の無い普通の人に仕事をさせた結果、2年間雇っても全く改善出来ず、元から才能のある人間をどこかからスカウトして来るしか方法が無いという事になっています。
実は自分は何度も以前の社員に言っていたのですが、コイルをほどくとほどいた部分にも少しインダクタンス成分があって、それが加算された測定をおこなって、その後カットすると予定した値から少なくなってしまいます。
そのため少しほどいて真っ直ぐして測定を行い、また少しほどいて直線にして測定してとかなり手間がかかり、簡単に考えて写真ぐらいの長さで直線にしていない状態だと後で足らなくなって、それで焦って内側に入り込んでしまうという事を繰り返せば内側を大きくほどいて30マイクロ下のコイルで使うしかないという状態になります。
おそらく誰でもやれば良いコイルは作れるのでしょうが、自分は中学生の時にアマチュア無線を始めて、その時に知り合った社会人の方がドイツのヴィジー製のアンテナを使われていて、その根元に付いているコイルの素晴らしさにQの高いコイルという物にあこがれを感じていました。
自分の自転車に付いている国産のアンテナだとジリジリノイズが混じるのが、隣の車のヴィジーのアンテナ&コイルはピタッとノイズが消えていて、「これは何だ!」と衝撃を受けました。
それから中学・高校と何かあると銅線でコイルを巻いて、「ヴィジーの様な素晴らしいコイル。」というのが頭に中にありました。
高校を卒業して憧れのヴィジーのアンテナを手に入れたのですが、このアンテナが曲者で、エレメントが長めに作ってあって、それをチョッキン・チョッキンと切ってマッチングを合わせて、車両のボディーアースも上手く行っていないと本来の性能は発揮出来ないという面倒な物で、その時無線からカーオーディオに興味が行っていて、ヴィジーの完全なマッチングを取る前に誰かにあげてしまいました。
それから何十年が経ってピュアコンの開発でつまずいた時に、「そういえばヴィジーのコイルみたいな全ての条件がピタッと合った時に最高の性能が出せる様なQの高いコイルが巻きたい!」と思って、福岡の無線屋さんでヴィジーのコイル付きのアンテナを買って目の前に置いて、中学生の時の悔しい思いでヴィジーの様なコイルを!という、なぜコイルをあれだけ夢中で巻いたのかという原点に戻ってコイル巻きを行いました。
なのでこれを社員にやらせても自分が求める物はとても出来ずに、中途半端に手を付けた物を定休日に作り直しているというのが今の現状です。
他には巻き直ししないといけないコイルのストックの部屋にはこんな物もあります。
旧加盟店によるピュアコンを不当に改造された物のストックで、これはユーザーの方から「何だか自分の車のピュアコンは、本店のデモカーの音とは違う様な気がする?」と言われて、5時間かけて車に乗って来られた方もあれば、遠くの方はピュアコンの写真を送ってもらって仕様が違うという事が分かって、正規の物を店頭で取り付けたか、こちらから送って付け替えて頂いて送って来て頂いた物のストックです。
これはお客様から無償で提供を頂いて、「この様な事をする店を作って欲しくない!」という思いを忘れないために、大切にストックしています。
一番多いパターンはアウターバッフルの車にインナー用のピュアコンを付けて、必要以上の勢いが付けてあって、そこに更に改造を加えて周波数レンジを広げて、超ギラギラサウンドにしている物もありました。
基本的に音楽の調律の意味の分からない人にピュアコンを扱わせてもこういう事ばかり起こるので、加盟店でピュアコンの販売は今後行わず、宇部店と福岡店で自分が行き来して、直接値を合わせた車のみの販売に変えていて、実際には合わせようとせずに独自の路線を歩む店のお世話をしなくて良くなった分、何故かここ2年でサウンドピュアディオの音はかなり良くなって来ています。
それ以前に今は新しく発売される車のオーディオに制約が多くて、ある程度の台数は実車を買って実験しないといけなくて、20年ぐらいお付き合いのあるお客様だと長期に新車をお預かりして開発という事も出来るので、それで何とか新型車種に合わせる対応をしています。
以前は32マイクロから585マイクロまでとなっていたコイルも、現在は一番下は0・8マイクロから1120マイクロまでととんでもなく多くなっていて、これでやっと新型車に対応している状態です。
ピュアコンが誕生したのは今から30年前の秋で、そろそろ30周年となりますが、当時が120マイクロから300マイクロまで5マイクロ刻みという時代で、それでも某メーカーが出していたネットワークの組み立てキットが120・150・180・210・240マイクロという30刻みで、それよりははるかに高性能だった訳ですが、そのメーカーはその後無くなって、コイル交換型のネットワークはピュアコンのみになったのですが、まさか30年後に0・8マイクロから1120マイクロまで必要になるとは、当時の自分からしたらとても想像は出来なくて、それだけ車の純正オーディオが大きく変わって来ているという事です。