新お客様の質問にお答えしての書き込みは、「文が長すぎて理解出来ませんが、何度か読み返していたら何となくイメージ出来て来ました。」と言われる声も聞かれる様になって来て、一度書き始めるとあれもこれも掲載しないと話のつじつまが合わないといつも長文になってしまっています。
そんなこのシリーズの長文を読んだ上でのご質問が、「成功の話が多いのですが、松下幸之助さんの本みたいに失敗の逸話もあると面白いのですが?」というご要望を頂きました。
ここでは運が悪い事は実は運が良かったというお話を書き込みます。
何度も書いていますが、自分は小学6年生の時にアマチュア無線の今でいう4級に合格しました。
ただ当時の試験は解答用紙に長細い四角の解答欄がある『筆記式』と呼ばれるもので、半年後には4つの中から答えを1個選ぶ四者択一式に試験が変わって、合格率はかなり上がりました。
友達からは、「井川は運が悪いな。四択になったら簡単に試験に受かったのに。」と言われて、「まあ合格するために電子の勉強が出来たから良かったかな。」と言っていました。
当時は4級の免許では出力10ワットしか出せず、それより出力を上げようと思うと2級の免許が必要でした。
ちなみに当時は3級では出力は4級と同じ10ワットしか出せず、モールス通信が出来るだけで、人気の無い免許でしたが、2級を受けるためにはモールスの試験が難しく、一度3級を取ってモールスの練習を友達と家同士でして、それで2級を受けようと高校生の時に3級の試験を受けに新幹線に乗って中学も高校も違ったけれど仲の良かったK君と一緒に受けに行きました。
3級には二人とも一発で合格して、3級の1分間25文字の送信速度から、2級では45文字とスピードアップするために、家でモールス練習機やカセットテープで聞いて練習ではなく、K君とモールスを打ち合って練習をしていました。
そして今度は二人で広島に2度目の試験を受けに行って、新幹線の中でお互いに問題を出し合って勉強していたら、K君は進学校の理数系のために自分よりもかなり覚えが早く、「自分は何て頭が悪いんだ。」と、覚えの悪さを情けなく思いました。
例えるとK君が1回か2回読み込めば理解出来る所が、自分は4回5回と読み込んで何んとかというレベルで、特に計算問題が不得意で、2級の筆記試験では当時は計算式まで書かなくてはいけなくて、3級から2級へは一気に難しくなっていました。
それもそのはず、3級の出力10ワットに対して2級は100ワットな訳ですから、簡単に受かる国家試験では意味が無いので、かなりの難関でした。
当時の試験は無線工学と電波法の筆記試験と、モールスの送信と受信の合わせて4科目あり、最初に受験する時には4科目全て受けなくてはいけませんでした。
その4科目を受けてしばらく待って、ある日学校から帰ったら合否の通知が電波管理局から来ていて、自分の結果は・・・ 合格でも不合格でもなくて『科目合格』という、合格点に達した部分と達していない部分があるという結果でした。
ちなみに一緒に試験を受けたK君は全ての科目で合格点で、3回目にして初めて一発合格ではないという通知を受け取りました。
自分が合格していた項目は何故かモールス信号の送受信で、次はモールスの勉強をしなくていいので、学科に集中する事が出来て、半年後に晴れて2級の全項目に合格となり、100ワットの無線機を買って電波管理局の検査を受けてパスすれば夢の100ワット送信が可能になるのでした。
ただ1回で合格しなかったのが運が悪かった様でもそうではなくて、2回も電子工学に関する難しい事を勉強したので逆に自分の力になり、今のサウンドピュアディオの音造りの根源となっています。
何度もこのブログでは書いていますが、一回で2級の全項目で合格点を取ったK君は京都大学に進んで、後に大学教授まで上り詰めた秀才で、「それは自分は付いて行けなかったわ。」と後から思い出しています。
その高校生の時に勉強して時の内容を最近読み返してみたら・・
何だか今の音造りに関係していました。
しかしよくこんな問題を筆記式で回答したなと、ちょっとビックリです。
まあじっくりとこの本を見ていたらデジベルやインピーダンスや進行波など、今のピュアディオ製品を作る根源がここにありました。
これを書き込んでいる時にこんなお客様からの質問があった事を思い出しました。
「各店が自分勝手なピュアコンの値を決めるからと、グループを辞めさせる必要はなくて、ある程度見てみぬふりをしたら店舗数を維持出来たのではないですか?」という事を聞かれた事もありました。
ただ自分は何度も「インピーダンスの基本概念が分からない人は本部の指示する数字の範囲で調整して下さい。」とお願いしても、自分勝手な数字を作って、「自分はこの方が良く聴こえる。」とか「お客さんは自分が選んで数字の方が良いと言われている。」と我流を通されるので、結局自分が直接数字を選ぶ事が出来る宇部店と福岡店の2店でしかピュアディオ製品は販売しないという方針にしています。
実際にはコイルに対してコンデンサの値が大きめになるとインピーダンスが下がる傾向にあって、そうすると音がシャープになるのですが、うるさい音域があるとアッテネーター抵抗を入れて、それをどんどん大きくして聴きやすくするのなら、最初からコイルとコンデンサの比率を絶妙なバランスで決めて、アッテネーター抵抗は最小限に抑える方が良い音で、本来の楽器の音や人の声に近いという考えですが、それを自分の方が音が良いと言われても納得出来ませんし、その音を良い音に思わせるために長時間話をしてお友達になって仲良くしてでは他のカーオーディオ専門店の『技術よりも話術』的なやり方と変わらないので、続ける意味は無いと思っています。
それにしても今見るとこれを筆記試験で数式まで書いて合格とは、工業高校の電気科の勉強よりもかなり難しい勉強をしていたなと、今考えたら持つべき物は友という言葉がある様に、大学教授になったK君と一緒に勉強した事が今の自分を作っているなと感じています。
あっ、それと最初にモールス信号の試験に受かったのには秘訣がありました。
先に2級に合格した大学生の方から聞いたのが、「モールス信号の試験には、電鍵にかなり電流が流れていて、それでやや火花が散り気味なので、それで気が散って本来の力を出せない人がいるので、自分の電鍵を持ち込んで、それに火花が飛ぶの吸収する回路を付けていたら合格しやすい。」というアドバイスを頂きました。
元々自分の慣れた電鍵を持ち込むつもりでしたが、火花を吸収する回路を作った事が最近カーオーディオで役に立ちました。
それは近年とても夏の気温が暑くて、アンプボードの中に冷却ファンを入れないとアンプが止まってしまう事があって、その冷却ファンを長時間回しているとモーターのブラシから火花が散って、それがプロセッサーに乗ってチリチリとスピーカーにノイズが乗るという事がありました。
その時に「火花が散ってノイズが乗る? それって何かと同じ様な?」と高校生の時に電鍵に入れたノイズ防止の回路を思い出して、「確かパーツはこれとこれの組合わせで、値はこのぐらいで・・」とやっていたらノイズが止まりました。
何か現象が起こった時にこんなパーツの組み合わせで、このぐらいの値でというのは他にも色々ありますが、長くなるので今日はこのぐらいにしておきます。
最後のもう一つ質問ではないのですが、最近よく言われるのが「井川さんてらんまんの主人公に似ていますよね。」という事です。
自分も最初の頃はらんまんを見ていたのですが、あまりに万太郎が研究のためのお金に困って、奥さんがお金の工面に苦労するという場面が多くて、途中で観るのをやめたというか、たまにチラッとどうなったか見る程度にしています。
お客様方の言われるには、店に貼ってあるボーカリストさんや演奏家さんとの写真は、生声を生音を採取しに行って、その声や音を頼りにピュアディオピュアディオ製品を作っていて、ピュアディオのフルシステムはまるで万太郎が作る植物図鑑の様だ、とお褒め頂きました。
そこに本当の音があるならお金を使ってそれを取りに行くという、誰もなしえなかった事をしているという意味で万太郎と重なって見えるという事だったのですが、自分はお金の苦労の部分ばかりが万太郎と重なって見えて、とてもじゃないけど直視出来ない回もありました。
9月の末に『らんまん』は終わりますが、サウンドピュアディオの音造りはこれからも続きます。