2021年1月26日火曜日。本日は仕事がお休みで、天気もまずまずだったので、近場で古道でも探そうかと思い立ち、愛知県岡崎市桜形町にある国道473号根裏トンネルの旧道を探索してきました。
現在地は、地形図中の星印になります。
※地理院地図(電子国土Web)に加筆。
現在、ここを通る国道473号は、正面の尾根を根裏トンネルで通過していますが、この根裏トンネルが開通したのが昭和37年(1962年)のことで、それ以前は自動車通行ができない峠でした。
戦前の地形図はこちら。赤色で示した峠越え区間を探索してみようと思います。
※5万分の1地形図「御油」:明治23年(1890年)測図・大正7年(1918年)修正測図・昭和2年(1927年)鉄道補入・昭和4年(1929年)発行
こちらは根裏トンネルです。
扁額は「根裏隧道」とあります。
トンネル坑口付近にある銘板。「着手 昭和34年(1959年)12月、竣功 昭和37年(1962年)3月、延長122m、請負人 眞柄組」と彫られています。
延長122mでありながら完成までに2年4か月もかかっています。地質に問題があったのか、単にのんびり掘っていたのか、どっちでしょうかね。
トンネルの規格は大型車では厳しいサイズ。普通車同士でもトンネル内での離合は難しいですね。建設当時はこのサイズで十分と思われていたのでしょう。
さて、戦前の地形図によると、旧道は根裏トンネルの700mほど手前で現在の国道とは違うルートへと進んで峠まで登っていきますが、さすがに700mも歩いて分岐点へ向かうのも面倒なので、トンネル脇から旧道まで斜面を登っていくことにします。
幸い、古道が残っていたので(旧道に関係のある道かはわかりませんが。)、利用して登っていきます。
旧道へと出てきました。根裏トンネルがくぐる尾根へ向かうため、左側へと進みます。
左折してすぐに舗装路は左へとカーブしていきますが、直進方向に小さな切り通しがあります。「切り通しの方が旧道だろう。」ということで、舗装路を外れて直進していきます。
切り通しを越えた所で林道が合流してきました。旧道は林道に削られてしまっているので、林道へと降りることにします。
前方、左側が峠の切り通しのようです。
切り通しの手前に石仏がありました。花入れに枝葉が生けられているので、お参りに来る人はあるようです。今まで見たことがない独特な面立ちの石仏ですね。
光背には、だいぶ文字がかすれていますが「明治四年」と彫られているようです。明治4年は1871年になります。
旧道の峠の切り通しです。手前側は幅が広く、林道改修時に削られたみたいです。
切り通しの左上に祠を見つけました。あとで登っていってみましょう。
切り通しの傍らに置かれている道標。文字が墨入れされています。文言は、「是ヨリ約五丁 多賀神社」とあります。
この峠から500m余のところに多賀神社があるという道標ですが、一体どこを指しているのかまったくわかりません。
林道から一段上の平場へと登りました。おそらくはここが本来の旧道だと思われます。
ただ、そうすると明治4年の石仏と多賀神社への道標がなぜ林道沿いに置かれているのかが疑問です(旧道から林道沿いに降ろしたということも考えられますが。)。
旧道から切り通し上の祠へと登ってみます。
この石仏もなかなか特徴的な造形をしていますね。先ほどの石仏と同様、顔面が突出して目立っています。
さて、切り通しを通り抜けていきます。
朽ち果てた廃トラック。
折れ重なる竹が邪魔ですが、道跡はしっかり残っています。
根裏トンネルの真上に出てきました。これは旧道が寸断されているパターンか?
現在地はここになります。
左側の斜面に道跡が残っていました。トンネル建設の際に道まで削られてはいなかったようです。
国道とは反対側の斜面を直線で進んでいきます。
路肩は石積みで補強されています。
折り返しに来ました。やけにはっきりと道跡が残っています。
折り返した先の路肩にも大きな石積み擁壁が残っています。
また直線区間が続きます。
沢に突き当たり、旧道は左へと折り返していきます。
ここに国道と出入りできる道が付けられています。
旧道はさらに下っていっています。
一旦、根裏トンネルの前に出てきました。これで帰り道は峠まで登らずにトンネルをくぐっていくことができます。
ふたたび旧道を辿っていきます。
国道との出入口から麓へ向かう旧道は舗装されています。
地元側からの要望があってのことでしょうか。トンネルから北側の車道が開通するのが遅れていて、暫定的に舗装してもらったとかね。全くの憶測ですが。
この後はいくつもの折り返しを繰り返して、麓へと下っていきます。
だいぶ下ってきた所でまた祠を見つけました。
何の石仏でしょう?とっさに思ったのは弘法大師像でした。僧形で恰幅が良いし、手に三鈷杵(かな?)を持っていたので。どうでしょうかね。
もう少し下った所にも祠がありました。峠への出入口になります。
祠の前に若木が生えていて邪魔ですが、石仏があります。お地蔵様でしょうか。
水道施設の横へと出てきました。目の前を国道473号が横切っています。
現在地はここです。
すぐ先には岡崎市桜形町の集落が見えています。おそらく田んぼの中を下っていく道が旧道でしょうが、昔の道跡を辿ることが目的なので、ここで引き返すことにします。
根裏トンネルまで登り直してきました。あとはトンネルをくぐるだけです。
北側の坑口にも銘板が付いています。南側の銘板と違う点は、こちら側がトンネルの起点になっていることですね。
トンネルを抜けて、車へと戻っていきました。
今回は距離が短かったので、探索としては1時間10分ほどで終了しました。
さて、この峠も新道である自動車道は大きく迂回して峠と行き来していますが、旧道である徒歩道は直線的に麓と峠をつないでいるパターンでした。今までに歩いた場所だと、県道37号の田原坂や県道334号の杣坂峠が同じパターンですね。
しかし、昔の峠道は、地図から消えて誰も歩かなくなってもけっこう残っているものだなぁとあらためて思いますね。というか、完全に自然に帰って消滅している峠道はないんじゃないかと(過酷な地形や気象条件の場所は別ですが。)。
まだまだ探索するネタは尽きないということですね(笑)。