2023年11月12日日曜日、北設楽郡設楽町田峯の栃洞川沿いに残る木馬道跡と森林鉄道段戸山線 田峯栃洞線跡を探索してきました。
今回、この場所を訪れたのは、設楽町の段戸山周辺(かつては皇室所有の「御料林」に指定されていた。)の地形図を眺めていた際、出来山近くの川沿いに途中で途切れている破線道(徒歩道)の表示を見つけ、「もしかして木馬道の跡かも?」と思ったからです。
※地理院地図(電子国土Web)に加筆。
まずは、設楽町田峯にある段戸湖横にある駐車場へとやって来ました。この駐車場は、周辺にある寧比曽岳や出来山への登山口となります。
場所はこちら。
※地理院地図(電子国土Web)に加筆。
ちなみに、段戸湖はレインボートラウト、イワナ、アマゴなどが放流されたルアー・フライ用の管理釣り場として利用され、段戸湖周辺の森林はモミ、ツガ、ブナの天然林を主体とした「裏谷原生林」として保護されています。
段戸湖の駐車場から出来山の東麓を流れる栃洞川まで、「裏谷原生林」内を通る林道を歩いていきます。
林道の分岐点を右折し、「五六橋」を渡って先へと進みます。
場所はこちら。
※地理院地図(電子国土Web)に加筆。
「裏谷原生林」の保護地区を抜けて、出来山東麓を流れる栃洞川の橋まで来ました。
場所はこちら。
※地理院地図(電子国土Web)に加筆。
この橋から栃洞川の左岸を下流に向かって歩いてきます。
林道からの分岐点は土砂に埋もれてわからなくなっていましたが、川沿いに歩いていくと道筋が現れました。
地形図に破線道として記載されていますが、利用されている様子はなく、崩落している箇所がいくつも現れます。
路肩に石積みが残っていました。人家の無い森林地帯の川沿いに、道幅1m程度で石積みもある造りの道跡というところから、木馬道の跡と見ても差し支えなさそうです。
少し歩くと道筋が崩落。崩落箇所を越えて、また道筋が復活してもすぐに崩落…。なかなか面倒な木馬道跡ですね。
対岸から栃洞川へと流れ込む滝。このくらいの傾斜だと滝とは呼べないのかな?基準がわかりませんね。
前方が明るいです。伐採地に出たようです。
獣害防止のためのフェンスに囲われた斜面全体に苗木が植えられています。
伐採されたおかげで、木馬道跡がはっきりと見えています。
写真ではわかりにくいですが、伐採地を通り過ぎた所で道跡がザックリと抉られていました。元は橋が架かっていたのでしょう。
覗き込んでみると歩ける程度の岩の段差があったので、木を手掛かりにして慎重に進んでいきます。
栃洞川の小さな滝。
道跡に赤色のテープがぶら下がっています。土地管理上の調査を行った際の印でしょう。
川面から離れた高い場所を通過していきます。
また道跡が崩れて無くなっています。足元を確かめながらゆっくり進みます。
また道跡が復活です。
これは木馬(木材運搬用の橇)を通すための「竿」(縦棒)と「盤木」(横棒)の残骸でしょうか。やや細いような気もしますが…。
また道跡が無くなってしまいました。川べりの岩の上を伝っていきます。
木馬道跡がふたたび現れました。
久しぶりに路肩の石積みが残っていました。
また道跡が途絶えました。この先のような地形だと、桟道で通していたのかもしれません。
岩の上を歩いていきます。
木馬道跡が復活したので、道跡へと復帰します。
程なくして木馬道跡はより幅の広い林道になりました。かつてはこの場所まで下流側から作業車が入り込んでいたのでしょう。
場所はこちら。
これで木馬道跡の探索は強制終了。ひとまずこのまま下流側まで歩いて、段戸湖へと戻る林道への合流を目指します。
林道を下流に向けて歩いていたら、川の中にコンクリート製の橋脚が立っているのを見つけました。最初は「未成林道のものかな?」と思っていました。
場所はこちら。
※地理院地図(電子国土Web)に加筆。
「せっかくだから、少し跡を追ってみるかな。」と川を渡るために川面へと目をやったところ、何とレールが転がっています。
「レール!?。ああっ!栃洞川だから、森林鉄道段戸山線の田峯栃洞線の橋の跡なのか!」とびっくり。田峯栃洞線がどこを通っていたのかはチェックしたことがなかったので、全くの想定外でした。
森林鉄道の跡を辿るとなればテンションが上がってきます(笑)。対岸の橋台は石積みの立派なもの。
橋台の上に立って、橋脚を見下ろします。この橋跡から上流の栃洞川の左岸側は崖地になっているので、森林鉄道は対岸に渡ることで崖地を避けていたのでしょう。
それでは森林鉄道跡を進んでいきます。
レールが立て掛けてあります。今までに森林鉄道段戸山線の廃線跡で見てきたレールの数を、今回のこの場所だけであっという間に上回ってしまいました(笑)。
川の流れに合わせた曲線の石垣が素晴らしいです。
そして、ふたたび左岸側へと戻るための橋の橋台跡。
橋跡を過ぎると広場がありました。広場の上流側も確認しましたが、その先に廃線跡を思わせる平場はなく、おそらくこの場所が「土場」(伐採した木材の一時集積場所)であり、田峯栃洞線の終点なのだと思われます。
廃線跡の探索は200mほどで終了。あっけなく終わってしまい拍子抜けでしたが、見覚えのある二股の松の木の所から林道へと戻り、ふたたび下流側へと歩いていきます。
廃線跡の橋脚からさらに100mほど下流の河原にもレールが転がっていました。レールは再利用できる資材として回収されるものですが、なんで放置されてしまったのでしょうかね。
すごい光景です。林道沿いに巨石が山積みにされています。かつては採石場だったのでしょうか。
事務所らしい廃屋がありました。
廃屋に「廃石捨場敷」と書かれた標柱が立て掛けてありました。採石場ではなくて、どこからか持ち込まれた巨石ということなのか。
ようやく林道の本線へと出てきました。
場所はこちら。
※地理院地図(電子国土Web)に加筆。
ここで左折して、段戸湖方面へと向かいます。
路肩のガードロープの支柱にはレールが再利用されています。
林道を進んでいったところ、上の方で伐採作業をしていました。「日曜日でも作業しているんだ…。」ということで、お邪魔しないように山道へと迂回していきます。
山道をどんどんと登っていったところ、谷が間伐材で埋まり、通り抜けできなくなっていたので、仕方なく山の尾根まで直登して迂回します。
尾根まで登って、段戸湖方面へと歩いていったところ、伐採地の真ん中へと出てきました。幸い、作業はしていないようだったので、作業道を通り、足早に現場を抜け出します。
伐採地の上部を通る林道へと出てきました。段戸湖まではまだ一息あります。
場所はこちら。
※地理院地図(電子国土Web)に加筆。
伐採地の上部を通る林道へと出てから40分後、ようやく段戸湖の駐車場まで戻ってきました。
今回の探索ルート図はこちら。登山用アプリによると歩行距離9.8km、活動時間4時間35分でしたが、探索区間よりも移動区間の方が長距離となりました。
木馬道跡はほぼ道筋を辿るだけの内容となり、目立った痕跡はほとんど確認できませんでしたが、予定外の森林鉄道の廃線跡の登場で、気分的にはウキウキになっていました(笑)。
愛知県内でこれからも自分なりに面白味のあるものが見つかればなとは思っているので、重箱の隅をつつくような形にはなるでしょうけど(愛知県内に廃線・廃道界のメジャー物件は少ないですからね…。)、今後も情報収集していきたいなと思います。