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2021年08月15日

東海道本線 愛知御津~三河三谷間の煉瓦アーチを巡る(1)

2021年8月8日日曜日、東海道本線の愛知御津~三河三谷間に存在する煉瓦アーチを巡ってきました。

最初にやって来たのは、三河三谷駅近くにある硯川橋梁。三谷駅南公共駐車場から道路を挟んで南側にあります。ここは駅前であり、周囲も住宅地に囲まれているので、まだ人通りの少ない朝6時半前に訪れました。


夏真っ盛りなので、大量の雑草に覆われていますね。




さっそく水路へと下ります。


アーチ環にある煉瓦の中には、〇の囲みの中にアルファベットの刻印が押されたものがあります。他の場所では東海道本線旧石部隧道や梶田避溢橋で見ることができます。


内部へと入っていきます。側壁は石積みで、水路部分は煉瓦によるインバート(逆アーチ)となっています。


煉瓦アーチ部分の奥には、ボックスカルバートと放物線型のコンクリート造アーチが連結されています。その先は暗闇なので暗渠が続いていると思われますが、暗渠を探索することが目的ではないので、ここで引き返します。


水路の吐口へと戻ってきました。


さて、ここ硯川橋梁の煉瓦アーチは、東海道本線の真下ではなく、なぜか駅前を通る道路の真下にあります。単純に理由として考えられるのは、東海道本線はかつては現行線の場所ではなく、硯川橋梁の真上を通っていたということ。

では、線路の位置がなぜずらされたのか。三河三谷駅は、開通当初から存在する駅ではなく、地元からの請願により昭和4年(1929年)に設置された駅です。この駅を建設する際に用地を確保するため線路を現行線の位置へとずらしたのではないかということです。

硯川橋梁の1枚目の写真を見てもらうと、橋梁が台地の端部に設置されていることがわかります。線路がこの位置のままでは、駅構内用の広い土地を確保するのはままなりません。

そのために線路を現行線の位置へとずらし、その際に川には新たに放物線アーチ型の橋梁を架けたという見解です。放物線型アーチ橋梁は昭和戦前期のものをしばしば見かけます。ボックスカルバートについては真上が公共駐車場なので、駅前周辺を整備する際に設置されたものと考えられます。

以上、裏付けのない憶測ですが、まんざらハズレでもないと思っています。硯川橋梁の真上に立って駅から東方向にある星越山隧道方面を眺めると、ちゃんと鉄道用地の端が一直線に見えています。

こちらは地形図に書き込みをしたものです。かつては東側から一直線に硯川橋梁へと線路はやって来て、その先でややカーブする線形だったのでしょう。

※地理院地図(電子国土Web)に加筆。

※9月16日木曜日に安城市図書情報館に所蔵されていない地誌を見るため、岡崎市立中央図書館へ行ってきましたが、その際に「正式二万分一地形図集成」という明治時代に作成された地形図の復刻版をまとめた巨大な冊子を見つけました。

その中に明治23年(1890年)測量・明治26年(1893年)発行の「蒲郡」があり、現在の三河三谷駅の位置を確認したら、東海道本線はその位置でちゃんと「くの字」に曲がっていました。これで確定です。

ちなみにこの冊子がいくらするのか発行元のホームページで調べたら、定価10万円でした(笑)。1万円くらいなら買ってもいいかなと思いますが、さすがにこの金額では手が出せません。

それでは2か所目の煉瓦アーチです。宮川橋梁といいます。


ガードレールがある場所を覗き込むと煉瓦アーチが見えます。これは上り線側の写真ですが、ここから川へは下りられないので、下り線側へと回ります。


下り線側へと回る前に、次の煉瓦アーチへと向かうための道が車の通行できる幅か確認するため、ちょっと寄り道します。

通行するのに問題ない事がわかったので、もう1か所寄り道して、新幹線を越える跨線橋へと来ました。右側が東海道新幹線。左側遠方に東海道本線が見えています。正面の山を新幹線は星越トンネル、東海道本線は星越山トンネルで越えています。


ちょっと眺めている間に何本もの新幹線が通過していきます。


ようやく宮川橋梁の下り線側へとやって来ました。こちらが下流側になりますので、吐口ということになります。




上部に笠石が並び、スパンドレルは石積みとなっています。


水路の真ん中には人道用と思われる通路が設けられています。その下部は煉瓦敷きによるインバートとなっています。


内部は側壁が石積みです。内部の煉瓦アーチを見ている限りでは、複線化に伴う増築の跡は見られないので、最初から築堤が現存するサイズで建設されたのか、もしくは何らかの事情で煉瓦を巻き直しているのだと思われます。


通路ですが、途中で水没してしまいます。流路に土砂が溜まっているためです。


アーチを一周する亀裂がありました。点検はされているようですが、補修の跡は特にありません。現時点では問題視されていないのでしょう。


上流側の吞口が見えてきました。すぐ先は、道路をくぐるボックスカルバートの暗渠になっています。


スペースが無いので、道路下の暗渠に入り込んで上流側の吞口を撮りました。


下流側へと戻ってきました。


ちなみに、ここもアーチ環にアルファベットの刻印入りの煉瓦があります。この辺りの煉瓦アーチで使用された煉瓦の供給元が同じ会社であることが推察できます。


ここでまた寄り道をすることにします。星越山トンネルまで、大築堤に沿いながら歩いていきます。見落とした構造物がないかのチェックも兼ねています。


線路沿いを通ってきた道路が線路と分かれていく場所へと来ました。線路越しに三河湾が見えています。


豊橋方面へと向かう電車が通過していきます。


これ以上は星越山トンネルへと近づくことはできないので、望遠で撮ってみます。

こちらは下り線用トンネルにある銘板。


こちらは上り線用トンネルの坑門の一部。


余談。ここ星越山トンネルは、開通から現在の供用状況に至るまで、少々複雑な経緯があります。

このトンネルは単線並列型に設置されていますが、まず現行下り線用が明治21年(1888年)6月竣工。つづいて複線化に際して現行上り線用が明治41年(1908年)に開通しています。

その後、現行下り線用トンネルの老朽化と電化工事の進展により、戦前の弾丸列車計画で用地買収済みの場所を活用して、現在の東海道新幹線星越トンネルの位置に上り線用のトンネルを新たに掘削して、昭和27年(1952年)に切り替え。現行上り線用トンネルを電化用に改修工事をしたのち、下り線用トンネルへと切り替えて供用開始します。この時点で、現行下り線用トンネルは一旦放棄となりました。

さらにその後、今度は東海道新幹線の建設計画が持ち上がり、新上り線用として供用していたトンネルを新幹線へと明け渡すことになり、急きょ、放棄していた現行下り線用トンネルを電化用トンネルへと改修工事。昭和37年(1962年)にようやく現在の形へと落ち着きました。

下り線用トンネルの三河大塚駅側手前付近の築堤の斜面には、改修工事の際に破壊され取り除かれたものと思われる煉瓦の塊が敷き詰められている場所があります(今回は草茫々で近寄れませんでしたが。)。

それでは、3か所目の煉瓦アーチへと向かいます。やって来たのは、神田川橋梁。川沿いの草むらの海をかき分けて近づきます。


川の護岸の上からの撮影。こちらは上り線側になります。頂上部に笠石、スパンドレルは石積み、アーチ環は4重です。


内部へと入っていきます。側壁部は石積みです。


ここはアーチ部分に複線化増築の痕跡が明瞭に残っています。写真左側が増築された煉瓦アーチ、右側が開通時からの煉瓦アーチです。開通時の煉瓦4段に対して、増築時の煉瓦5段で噛み合わせてあります。


アーチ部分は、基本的には煉瓦の長手部分が表面に見えていますが、よく見てみると、煉瓦の小口面が並んでいる列があります。これについては、反対側からアーチ環を見ると理由がわかります。




この橋梁も、流路部分は煉瓦積みのインバートになっています。


下り線側へと出てきました。目の前には住宅があるので、家人が現れないか少々気になりますね(笑)。




先ほどのアーチ部分に小口面の列ができている理由ですが、アーチ環に煉瓦を竪積みしている箇所があるためです。竪積みを挟むのは、アーチをしっかり支えるためだと考えられています。


下り線側から上り線側を見ています。アーチ部分の煉瓦は基本赤レンガで構成されていますが、焦げ茶色の煉瓦も多く混ざっています。中には半分だけ焦げ茶色になった煉瓦も使われています。


上り線側へと戻ってきました。


右側の石積みをよじ登って、川から上がります。


ちょうど、豊橋方面の電車が通過していきました。


また草むらの海へと分け入り、次の煉瓦アーチへと向かいます。


※その2へつづく。
ブログ一覧 | 東海道本線 鉄道・廃線跡 | 日記
Posted at 2021/08/15 21:56:11

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