2020年6月27日土曜日、国道420号新段戸トンネルの南側を越える古い峠道を歩いてきました。
戦前の地形図はこちら。今回歩いたのは赤い線の区間になります。

※5万分の1地形図「足助」(明治24年(1891年)測図、昭和3年(1928年)要部修正測図、昭和6年(1931年)発行。)。
現在の地形図はこちら。青い線はアプローチに使った林道。赤い線が今回歩いた古い峠道のおおよそのルートです。

地理院地図(電子国土Web)に加筆。
地形図によると、豊田市と設楽町の境界にある峠の標高が805m、峠から設楽町側に下っていって最初に当貝津川を渡河した地点が590mなので、峠の標高差は215mとなります。歩いた峠道のうち、約3分の2は現在の地形図には記載されていない道を通ったことになります。
阿蔵峠の存在を知るまでは、今回歩いた道(赤い線)よりもやや南側に記載されている徒歩道(点線表記の道。)が新段戸トンネルの旧旧道であると思っていました(この道は道路地図帳にも載っている。)。
実際には点線の徒歩道は古い地形図には載っておらず、赤い線の道が古くからある峠道の一つであった訳ですが、阿蔵峠の道と並行するように山越えをしていることから、かつてはよく使われた峠道には違いないだろうということで、歩いてみることにしました。
ちなみに、この峠や峠道の名称は不明です。設楽町誌(本編だけでなく、集落ごとの記事をまとめた別冊もあったので、最寄りの集落となる「桑平」や「笠井嶋」の項も含めて。)と下山村誌を読みましたが、この峠や峠道に係わる記事は見当たりませんでした。
まずは豊田市側の旧段戸トンネル跡地へとやって来ました。すっかり埋め立てらてしまって、かつてどうなっていたのかもあまり思い出せません。
ここ旧段戸トンネル跡地の前には林道尾根線がつながっていて、この道を歩いて峠道へと向かいます。
先週、阿蔵峠を歩いた後で下見に来た時は、入口の虎柵が両脇に避けてあったので、直接、車で間近まで行けましたが、今回は道の真ん中に置かれていたので、ここから歩いていくことにしました。
10分ほど歩くと沢頭を回るような形の大きなヘアピンカーブに出会います。ここが峠道への入口となります。
ここから入っていきます。
10~20mも歩くとはっきりとした道跡が現れます。これが峠道となります。
まずは、なだらかな地形の尾根を越えていきます。
尾根を越えるとさらに奥へと峠道が続いています。
この辺りの峠道は明瞭なので、迷うようなことはありません。
ここは路面が削れて狭くなっているので、注意して通り抜けていきます。
この辺りから下り坂が始まります。
峠道が左へとカーブすると、
木のたもとに石仏がありました。
頭に馬を乗せているので、馬頭観音だと思います。光背に刻まれている年号は「文化十一年」。西暦では1814年なので、206年前のものということになります。
単純に考えれば、この峠道は少なくとも206年前には存在し、馬頭観音が置かれるほどの往来があったことになります。
峠道は下っていきますが、いまのところはまだ緩やかな坂です。所々、路上に若木が生えていますが、気にせずに進んでいきます。
若木のすき間をそのまま通り抜けていきます。
最初のヘアピンが現れました。ここから相当な数のヘアピンカーブが現れることになります。まさに「つづら折り」です。
ヘアピンカーブの折り返し先の道に若木が生えているので、パッと見ではどこに道が続いているのかわからない状態になっています。
緩く大きなカーブを描いているヘアピンです。道筋をよく見ていれば行き先はわかりますが、こういうパターンも一瞬戸惑ってしまいます。
日がよく当たる南向きの斜面のためか、杉林の真っ只中でも視界を塞ぐように若木が育っていて、進む先を迷わせます。
水が流れる沢へと近づいて湿気が多くなってきたためか、阿蔵峠の時のように枯れ笹が目に付くようになってきました。
しかし、どうして全部枯れているんでしょうかね。この周辺一帯で同じタイミングで寿命を迎えてしまったのでしょうか。
大きな岩が現れました。目を引くので、峠道が岩の下を通っていると思って何の気なしに真っ直ぐ進んでいこうとしました。
が、大岩の先には道はなく、実際は手前でヘアピンカーブになっています。しかもちょっとわかりづらい状態です。
ヘアピンカーブを連続で撮っていますが、あまりにも枯れ笹に埋もれていて、見返した時に「一体何を撮ったんだっけ?」と悩んでしまいました(笑)。
路上に残る枯れ笹については徹底的に踏み均しながら歩いてきたので、だいぶ道筋が見えるようになってきました(帰りに迷ってしまうので…。)。
苔に丸ごと覆われた石を見つけ、その上に何か黄色いものが飛び出ていたので「苔に花?」と思い撮ってみました(いまいちピントが…。)。よく見ると小さなキノコみたいで、花なのかはわかりません。
写真だと道筋が不鮮明ですが、ゆる~く右へとカーブしています。ちなみに右側真下にも平場があって、初めはヘアピンカーブと思ってしまいました。
苔むした倒木を越えて先へと進みます。
今まで沿ってきた沢とは別の沢伝いに進む小径と合流しました。右側の道が現在の地形図に載っている峠へ向かう徒歩道でしょう。
交差点を下側から見上げた写真です。これという特徴や目印はありません。
実際、帰り道で通った時は見過ごしそうになってしまいました。たまたま頭を上げたら道の真ん中の小さい切り株に気が付いて、交差点とわかりました。
ここからは、直線的に沢に沿って下っていきます。
右下に作業道が近づいてきました。
案の定、峠道は作業道に吸収されて無くなってしまいました。
振り返って撮った、峠道と作業道の分岐点です。まあ、ザックリと削り取らずに合流できるように均してあったので、まだ良かったです。
ここから先は峠道を拡幅した作業道を歩いて、この辺りの本流である当貝津川まで下っていきます。
※長くなるので、(2)へ続きます。