2009年10月25日
「幕張」モーターショー2009
そういえばモーターショー開催中。今年は随分海外勢の出展が少ないことが話題に上っているが(そして中国のモーターショーには非常に多くの海外勢が出展し、海外から見た市場としての魅力の差が歴然としている)、環境対応を目玉にした日本メーカーの内容が面白そうなところ。一方で、富士重工+トヨタのFT-86が水平対向エンジン搭載のライトウェイトFRスポーツとして注目を浴び、ホンダのハイブリッドスポーツCR-Zがコンセプト的に注目を浴びている様子。
歩いて10分の地元民としては、早帰りできる平日に覗いてこようと思う。
モーターショーは、付近の車での移動が困難になるので、地元民としては行き先によってはちょっと困るのだが。
さて。
見てもないのに言うのもなんだが、個人的にはFT-86というのは、ずいぶん市場に媚びたネーミングだと思う。FTの方は富士重工の水平対向を積んだトヨタ車だからいいとして、86はもちろん手軽に後輪駆動の挙動を楽しめるカローラ/スプリンターのクーペバージョンAE86、いわゆる「ハチロク」から来ているのは言うまでもない。
ハチロクは決して高性能なクルマではないどころか、トヨタの最下車格ゾーンの、廉価な大量生産車種:カローラ/スプリンターの3ドアクーペバージョン。本家がFFになっていたにも関わらずレビン・トレノは先代車台流用のFRリアリジットで、当時としても古くさく低コストの車種。内容的には「名車」と呼ばれることがまずなさそうなクルマだった。
しかし、カローラ レビン/スプリンター トレノがフルモデルチェンジしてFRからFFとなり、クルマとしての性質がかわったこともあり、学生や若者にとっては入手しやすく手軽に後輪駆動の挙動(ほとんどの場合、ドリフト)を楽しめるスポーティーなクルマとして中古車人気を集めることになった。先代TE71レビンの改造パーツやノウハウが流用できたのも大きいようだ。
このクルマからFR車を乗り継ぐようになったり、サーキット走行/レース/ジムカーナ等を楽しむようになった人も結構いるようだ。知り合いのロードスター乗りの女の子もそんな一人。
FR車人気の火付け役:ドリキン・土屋圭一とか、その後の「頭文字D」というマンガの影響も強かったとのこと。販売終了からかなりたつ上に使われ方から傷んでいる車が多いせいもあって、状態のよい個体は中古車市場では未だにかなりのプレミア付きになっているとか。
はたまたトヨタから補修用の部品を買って「新車」をくみ上げたショップもあったとか。
斯くして廉価クーペはメーカーが想像もしなかった「名車」と呼ばれることになった。
(とここまで書いて、wikipediaを見たらおおよそ同じことが書いてあった(^_^;))
FT-86のネーミングを行った人たちは、今はほぼ絶滅しかけているライトウェイトFRスポーツクーペというコンセプト的にも当然人気車種「ハチロク」のイメージを重ねさせたいのだろう。話題にもなる。
ただ、「ハチロク」という呼び方自体が市場が勝手に呼んだものであって、クルマとしての車種名はあくまでカローラ レビン/スプリンター トレノである。メーカーとしてかつての人気車の型式あるいは愛称をコンセプトカーに使うのはどうも違う気がする。メーカーは提案する立場。当然市場の好みを取り込みながらやっていくことになるが、かつて自信を持って提案した車種ならいざ知らず、メーカーとしては旧モデルTE71車台流用のやっつけ仕事のような車種に対して市場の付けた愛称というのはどうも媚びすぎである。すでに絶えてしまったレビン(やトレノ)という名称にはなんの思いもないのだろうか。
戦後、日本の自動車工業が立ち上がりはじめた頃、車種名は排気量をそのままつかったものが多かった。スバル360やホンダS360は典型。車種が少なかったが故にそんなネーミングがあり得たわけだが、そうした系譜を残したネーミングにスバル vivioやホンダS2000がある。vivioは排気量660をローマ数字に置き換えたもので、一ひねりある。S2000はそのまんまで面白味には欠けるが、かつての名車の延長上にあることの主張だろう。
トヨタもどうせやるなら、一ひねりあるべきだ。車種名を解釈すると「86」になると「ああ、あのクルマのコンセプトを受け継いでいるネーミングなのね」と頷ける。
それをそのまんま「86」では、あまりにも安易。メーカーとしても筋が通ったものが感じられない。モーターショー用のコンセプトモデルだからまだ許せるのだが。
もし市販されるにしてもそのままの車種名にはならないと思うが、ネーミングはよく考えてやって欲しいものだ。
* *
ちなみに、自分にとってSVXはあくまでSVXであって、アルシオーネの2代目ではなかったりする。自分にとってはあくまでジウジアーロデザインの車種であり、スバルに取り立てての思い入れがないせいもあって、アルシオーネの後継2代目という位置づけは関係がない。自動車評論家にもSVX=ピアッツァの後継車に相応しいといういい方をする方もいるようだ。
スバルにとっても、それまでにないあたらしいグランドツアラーとしてのコンセプトをこめたネーミング「Subaru Vehicle X」であり、最上位車種の後継車という位置づけでも、初代アルシオーネの失敗を反省し、同じ轍を踏まぬようにかなり努力したようだ。
レオーネの車台を流用しクルマとしてトータルにアンバランスになったことから流用を極力やめ一から作り直すだけでなく、アルシオーネのイメージを切り捨てたデザインを採用した。ジウジアーロへの依頼は単に車格に見合う美しさを手に入れるためだけでなく全く違うデザインを取り入れることにもあっただろう。ジウジアーロが提案したリトラクタブルライトを、イメージが似るからと拒否したのはその象徴と思う。
国内でこそプレアデス星団(昴)のもっとも明るい星「アルキオネ」になぞらえた、スバルのフラッグシップを示す車種名は手放さず「アルシオーネSVX」としたが、海外市場ではXTクーペの2代目ではなくSVXというあらたな独立車種として展開した。
ネーミングにはそれなりに思いが込められているものだ。
(しかし、SVXは大衆向け小型車種から育った小メーカーであるスバルブランドが抱えるには無理のある車格であったこと、半端な馬力(ハイパワーカーが続々登場した当時の自主規制上限280馬力に届かない240馬力)やバブルの崩壊、コンセプトの日本市場とのマッチングの悪さなどもあり、見事に失敗した。)
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イベント | クルマ
Posted at
2009/10/25 10:12:59
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