2011年03月24日
弱い放射線の害を言うことは、かなり難しい
他の方が訴えていることなどを見るに、政府発表やマスコミが伝えること、科学者が述べることに歯がゆさを覚えているのを感じます。
影響があるのかないのか、はっきり言えというのが共通することかと思います。
なかにははっきり言ってくれる演説上手な政治家か何かが欲しいという人もいます。
どうも測定値を低く見せるようなことをしている様子があったり、マスコミの知識がないために間違ったことを伝えていたりということはあります。おかしなひとが、受け売りの付け焼き刃でいい加減なことをさも事実であるかのように吹聴しているものもあります。
ただ、多くは嘘でもごまかしでもなく、科学的にはそうとしか言えないのです。逆に言い切っているものがあればその主張は怪しいかも知れない(脳機能学者の何とかがいい例)。
というのも、ヒトの体への影響度について、明確に言うのは困難なのです。
そもそも、影響が「ある」ことは証明できても、「ない」ことは証明できない。影響が小さくなったことで「事実上ない」としか言えないものです。
ところが、もっと難しい事情があるのです。
直接原発の放射線を浴びることのない人たちにとっての大きな問題は、飛んでくる放射性物質の影響です。
大切なのは、
・内部被曝が将来のガンの可能性を上げていくこと
・低線量被曝は、長期的にガンのリスクを上げること
・特に放射性ヨウ素I-131については年齢によって影響度が大きく異なること
・対策としては、可能な限り体の中に取り込むことは避けること
です。
ただし、現在東京や神奈川、千葉などで検出される範囲では、その影響はほとんど無いとしか言えないのも仕方がないのです。
雨にしても、水道水にしても、含まれている放射性物質は極めて微量です。そして、水道については放射性ヨウ素I-131しか検出されていません。半減期が8日なので、1ヶ月もすればごくごくごく微量になってしまいます(一つもなくなるとは言えないがやがて検出不可能になる)。
ある程度の強さであれば、それがガンの発生率と関係していることが分かっています。しかし、ごく微量な放射性物質の影響を見積もることは、不可能です。というのも、他の要素によってもガンは起こりますから、放射性物質の影響かどうかを知ることはできません。※注
雑踏の中で少し離れた人の言うことを聞き取るのが難しいのと同じです。
放射性物質から放出される放射線は、細胞のDNAの結合を傷つけます(あまりに強い放射線を浴びると、体中の細胞の中でDNAの集まりである染色体がずたずたになってしまい、機能できなくなります→死亡します)。しかし、生物はもともと放射線や活性酸素の影響の中で進化してきましたので、そのような傷を修復することができます。修復できないほどの傷が生じると、細胞は自分でDNAをずたずたに切って死んでいきます。これをアポトーシスと言います。
ところが、もともと修復機能に問題がある場合やそのアポトーシスがうまく働かないなどのことが起きると、細胞が無秩序に増殖してしまう状態になることがあります。これがガンです。
ガンは1つの要素だけで起きるものではないので、放射線の影響であることを確定することは難しいし、放射線も、宇宙から来るもの、大気から来るもの、身のまわりの物質から出るものとさまざまあります。なので、原因について特定することは難しい。
しかし、影響は考えられるので「可能な限り無用な放射線は避ける」というのが考え方の基本になります。
いっぽうで、現実に原発事故で放射性物質がまき散らされている。
その影響は前述のように、どの強さからではじめるのかを言うことは不可能です。
偏西風に乗って北米大陸でも原発事故の放射性物質は検出されていて、やがて世界のあちこちで検出されるでしょう。一切取り込まないようにしましょうと言うことは現実的ではありません。
当然広い地域の野菜や原乳にも放射性物質が現れてくる。程度問題でしかなくなる。
どこかで規制値を設けるしかないわけですが、どこで区切っても妥当とは言えない。というのも影響がはっきりしないからです。
なので、極力少なくし、影響の大きい子供、特に水道については唯一の食料がミルクであることを考慮して幼児はとくに厳しくしています。
このまま原発からの放出が続けばおそらく東日本の多くの地域で放射性物質が検出されるでしょうし、それが半減期が長く生物濃縮もされるセシウムであればヨウ素よりも影響が大きいと言えます。しかし、微量ならば影響の度合いはかなり小さいとも言えます。今回の原発事故以前にも核実験などで環境中にはかなりひろくセシウム137があります。
あればアウトとは言えないし、しかし影響はないとも言えない。どこかで区切るしかない。
風評被害と言いますが、基準以下でも問題はないとは言えないので、放射性物質が検出限界以下でないと(以下であっても)害があると言えてしまいます。つまり風評被害ではない。
できることは、可能な限り厳しい基準を設けるしかないのです。それをクリアしていれば「問題はない」と言うより他ありません。
一般の毒性のある物資は、ある程度の量を取り込まないとそれが症状として表れることはふつうありませんが、放射性物質はちがいます。
そして、影響は出るものの、低線量であればガン化のリスクが多少高くなるのみ。タバコを吸う方が遙かにリスクが高いのも事実。
放射線の影響を言うのは、とても難しいのです。
個人個人は、なるべく取り込まないようにするしかありません。
追記
既に、影響は今のところごく少ないものの、放射性物質と共に生きなければならない状況と言っても過言ではありません。
もしかしたら、スーパーなどで、産地などと一緒に放射線量を書くようになるのかも知れません。
放出さえ止まれば、ヨウ素131については1ヶ月もすればほとんど影響がなくなります。比較的つき合いやすいと言えます。
セシウムについては多少なりとも残り続け、広くまき散らされたものが生物濃縮によって食品の中に現れてくることも考えられます。検査をしっかりして取り込む量を少なくすることしかないでしょう。ただ、放射性セシウム137は半減期が長い分、放射線は少ししか出さないことになります。比較的排出されやすいものでもあるので、取り込む量が少ない限りは影響も少ないとは言えます。
ただ、これは現在進行形なので、これからどう状況かわるかも分かりません。考えにくいですが、その他の放射性物質が大量に放出されるようなことがあれば、もっと広い範囲に影響が及ぶこともあるでしょう。
事故が起これば、とても難しいものとつき合わざるを得なくなることは分かっていました。原発に反対せず、その利益を受け続けてきた我々の責任でもあります。地方にそのリスクの大部分を負ってもらって来たわけです(建設地には補助金が行くわけですが)。原発反対と言う人たちを「変な人たち」と白い目で見ていた人もいたわけです。
追記おわり
※注
これは、将来政府なり東電なりが事故の影響を補償することになったときにも言えます。原発に近い地域であれば、特に避難地域やSPEEDIでリスク評価された地域であれば、症状などから因果関係がある等々と考えるのが相当だと判断されることもあるでしょう。
しかし、ごく微量であれば、放射線の影響で東京でガン発症率が1%上がったとしても、それが本当に放射線の影響かどうかは証明できない。日本全体に対して福島周辺だけであがっていれば関係があったとは言えるかも知れないけれど、個々人のガンが放射線の影響なのか、タバコの影響なのか、食品添加物の影響なのか等々は証明できません。ですから、わずかにガン発症率が上昇するようなことで補償されることはまずないでしょう。
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Posted at
2011/03/24 17:09:52
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