
高校物理で核分裂や崩壊について学ぶ。
理系の方なら何の問題もなく理解されていることと思うが、放射性元素の減り方についてグラフで表してみることにした。
式を出しても何なので、概略だけ。
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原子炉の中でウランなどが核分裂してさまざまな原子が生まれます。その原子の多くは不安定で、放射線を出しながら安定な原子に変わってしまいます(放射性壊変)。
話題になっているヨウ素131の場合、陽子の数が53個です。これがベータ崩壊して中性子が陽子に変わると陽子数が1増えて陽子54個のキセノン131に変わります。
この時、電子(と反電子ニュートリノ)を出します。これが放射線の一つ、ベータ線です。
この放射性物質の減り方は原子の不安定さにより違い、一瞬でなくなってしまうものもあります。ヨウ素131なら8.03日。
その減り方は、原子がそれぞれ勝手に,ランダムに崩壊していくので、最初の原子の数が多いほど次の瞬間に壊れる原子の数は多くなります。しかし、数が少なくなっていくと、その中の原子が壊れる数も少なくなります。
下のシミュレーションはわかりやすいかもしれません。
http://www.ne.jp/asahi/tokyo/nkgw/gakusyu/gensi/houkai/houkai.html
ですから、このエントリの最初にある図のように、放射性元素は最初に急激に減り、やがてゆっくり減るようになります。ゼロにはなかなかなりません(これはエクセルでヨウ素131の場合を作ったものですが、放射性元素が違えば矢印で示している半減期が異なるだけで、減り方の形は同じになります)。
当初、放射性物質が危険ということで恐れられましたが、このところは半減期が定着してきたようで、時間をおけば怖くないというイメージに変わりつつあるかもしれません。しかし誤解もあるようです。
1.半減期を過ぎてもゼロにはならない(半分になるだけ)
2.原子炉の中で作られた放射性元素の量は多いので、残っているものが風で遠く離れたところに運ばれてくれば、また検出される放射性元素の量は増える(水道水なら水源からの距離や状況によっても現れるのにかかる時間は変わる)。
3.ヨウ素131の半減期は約8日なので規制値程度の量ならそう遠くないうちに規制値を下回るが、セシウム137(半減期30.1年)やストロンチウム90(半減期29.1年)のような半減期の長い放射性元素はなかなか減らない。
ことを強調しておきたいと思います。
ちなみに、1950-1960年代に盛んに大気圏内(主に成層圏)核実験が行われていたため、当時生じたセシウム137などがいまも世界中に降り注いでいます。急に増えているのは1986年(昭和61年)4月26日のチェルノブイリ原子力発電所4号炉で起きた原子炉爆発事故によるものです。

■上記グラフは、
環境放射線データベースをつかって以下の条件で作成されたものです。
調査対象 放射能測定調査(放射能水準調査)
調査年度 1957年度~2010年度まで
調査地域 全国
調査試料 降下物
月間降下物
調査核種 Cs-137
濃度単位 MBq/km2.月
オプション 表示方法 : 対数表示
ちなみに、中国の砂漠に降り注いだものが黄砂と一緒に日本付近に運ばれてきていることも知られています。
http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result24/result24_68.html#fig24_68-f1
日本の土壌にも当然あり、日本人が摂取するセシウム137の30%はキノコからだそうです(放医研による)。
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Posted at
2011/03/28 16:57:22