
放射性物質の拡散が明らかになった頃からセシウム137などの生物濃縮についてデータはないか調べていたのだが(書きかけて下書きのまま放置した残骸が3月22日と23日に……)、私が調べた範囲ではあまり引っかからない。それでもいくつかは出てくる。
放医研や東大の研究者の論文に、過去の研究が引用されている。
そのうちの一つ「環境における放射性物質の生物濃縮につしいて 清水誠(東京大学農学部水産学科)」に引用されているPendletonによるセシウム137の生物濃縮の例を、見やすく整理したものを示す。
セシウムという物質が生体内でどのような役割を果たしているのかよくわからない中で、化学的性質がカリウムと似ていることもあり、同様に排出されやすいことが分かっている。このため、湖などに一定の濃度で放射性セシウムがあればその濃度に応じてその湖に住む生物の体の中に放射性セシウムが取り込まれることになり,
水中濃度とその生き物の中の濃度の関係に一定の比率ができることになると考えられる(平衡状態になるという)
サン・フィッシュというスズキ科の肉食魚では食物連鎖に従って生物濃縮が進んでいくように見える。しかし、清水氏の論文ではこの水域以外も生活の場とする生き物(たとえば水鳥)については、この値はそのまま適用しにくいことが指摘されている。
セシウムは排出されやすいため、DDTやPCB,メチル水銀などと違い、極端に食物連鎖の段階に従って生物濃縮されることということでもなく、また生物種によってかなりちがいがある。藻類や植物に多く含まれており、上位の動物ではそれより少なくなっている場合もある(水生植物や藻類400~4000→オタマジャクシ?サンショウウオ?11000→肉食昆虫900)。
底泥や藻類、植物が蓄積?吸着した?セシウム137が動物に取り込まれてもさほど濃縮されていない。生物濃縮の効果はすくなくともこの調査範囲ではさほど大きくはなさそうだ。
植物や泥がどのように蓄積しているのか、あるいは単に吸着しているのかを調べる必要もあるだろう。
なお、大気圏核実験の後に降下した放射性物質が土壌の表層に多く存在するため、表層の物質を主な栄養源とする菌類の種では植物と比較すると、特異的に高い濃縮度を示すものがあることが知られている。野生のアンズタケなどのキノコでは、セシウム137の生物濃縮が行われ周囲の植物より高濃度に蓄積することが知られている。
(
森林生態系における放射性物質の動態及び循環. に関する研究 放射線医学総合研究所)
また、屋外で人工栽培されるシイタケやマイタケでも濃度が高くなる傾向があることが知られているとのことだ(私は読んでいないが)。
(
埼玉県衛生研究所、 埼玉県農林総合研究センター、埼玉県保健医療部 -栽培キノコ及び培地中における放射性セシウム濃度-RADIOISOTOPES Vol. 57 (2008) , No. 12 pp.753-757)
追記
出所不明な広瀬隆が週刊朝日の記事で出しているコロンビア川の生物濃縮の図は、全く信憑性を評価できない。原典に当たるものが見つからない。コロンビア川の放射性物質汚染は知られている。
追記終わり
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放射性物質・放射線 | 日記
Posted at
2011/04/16 10:15:29