
渡辺友理さんのリサイタルに行ってきた。
渡辺さんは、5年ごとに行われるショパン国際ピアノコンクールで2010年に2次予選まで通過し、日本人としては最高得点だった演奏者だ。
強い個性と力強さに圧倒され、アルゲリッチに称賛された理由を納得した。
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場所は仙川アヴェニューホール。8月に地元のホール(幕張ベイタウン・コア)で行う企画のため足をはこんだ。地元ホールにも導入されているFAZIOLIが初めてショパン国際ピアノコンクールの公式ピアノとなり、その使用者ダニイル・トリフォノフが3位に入賞したことを受けてのもの。公式ピアノを調律した越智晃氏にコンクールの模様や裏話を語って頂き、その一環で渡辺さんに演奏して頂こうというものだ。
このホールのピアノと私との関わりについては
ショパンコンクールでFAZIOLI演奏者3位に
https://minkara.carview.co.jp/userid/441462/blog/20402672/
FAZIOLI導入については
Wikipedia 幕張ベイタウン コンサートピアノ購入運動の項
http://ja.wikipedia.org/wiki/幕張ベイタウン・コア
を参照頂きたい。
仙川アヴェニューは1・2階160席とかなり小さなホールで、導入されているのはFazioli F228 Silver。演奏後越智氏に見させて頂いたが、響板が黒・金属部品がクロームメッキ、フレームがシルバーというかなり変わった仕様のピアノ。日本初導入で同じタイプのものはミスターチルドレンのスタジオにも入れたという。
2009年に入れたばかりのピアノで音がまだ堅く、ホールもコンクリートのため硬質で残響時間も少なくクラッシックにはちょっと厳しさを感じなくもない。
そのホールでの演奏は、当初ちょっとぎょっとした。ピアノの状態やホールの特性に加え、かなり前の席であったこともあり音がきつい。その状況でショパンノクターンを、ピアノのコンディション、ホールの特性に遠慮することなく弾いている。この演奏でいいのだろうかと思ってしまった。
しかし、幻想ポロネーズからハッとさせられた。徹底的な強さと繊細さを使い分け、ピアノコントロールに絶対的なものを感じる。リスト・ベートーベンとその強い個性で本領を発揮。アンコールのラフマニノフもすばらしかった。
渡辺さんの演奏は圧倒的な技術と表現を支える強烈な個性、言ってみればあくの強さを魅力としている。イタリアで磨いてきたのは世界のピアニストと渡り合う存在感であったのかもしれない。
結局ショパンコンクールで最終的に評価されるのは「個性」なのだろう。同じコンクールに挑んだ實川風さんの繊細で美しい演奏では予選で残っていけなかったし、限界を感じた彼はコンクール後演奏スタイルを変化させている。個性の強い演奏は評価が分かれるが、個性の薄い演奏では埋もれてしまう。凡庸なピアニストはいらないというコンクールの主張なのだろう。
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イタリア在住の渡辺さんは現地で日本の震災を聞いたとのこと。原発事故について地元メディアからインタビューをされたが、現地の理解はは「日本の技術はその程度なのか」と言ったものだったという。日本に対する誤解を強く感じた彼女は、彼女なりに日本の優れている点を主張したと言う。そしてこれからも日本の本当の姿を伝えていきたいとも語っていた。
国際的な活躍をする渡辺さんが今回の震災で背負ったものは大きかったようだ。しかし国際理解に貢献して頂ける立場でもある。是非広く日本を伝えて欲しい。
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クラッシック | 音楽/映画/テレビ
Posted at
2011/04/23 08:37:25