
私が最近もっとも驚いたことの一つが、「佐藤かよ」という存在である。
モデル、タレント。
ご存じの方もおられると思うが、この方の生物学的な性は男性である。先頃カミングアウトされ、話題になった(そうだ)。
自分は生物学系なので、高身長、広めの肩幅、長めの薬指などに遺伝学的性別の特徴を見てしまうが、変異の幅は広いので言われなければわからない。ぱっと見男性であると見抜ける人はそう多くはあるまい。
幼い頃から心と体の性が一致しないと感じてきた性同一性障害であるといい、15歳から女性ホルモンを使ってきたという。
性同一性障害というのはなかなかにして厄介なもので、周囲の理解がなければ非常に苦しい生涯を送ることになる。
今日では社会的な認知・理解も進み、性転換手術を行う方も多くなっている。以前に比べれば改善はしているが、それでも親兄弟や周囲の理解があるとは限らない。
佐藤かよさんの場合は家族や友人に理解があったと言うが。
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佐藤かよの衝撃というのは、なにより外見に見事な「女性的可愛らしさ」を持っていることである。
性同一性障害の方は幾ら心が女性といえど、外見は男性的であるため、女性ホルモンを使い性転換手術をしても骨格や顔の作りが男性的である。女性的に見せるために苦労をするし、整形手術で女性的な顔にしたりもする。低い声を高くするためのトレーニングをしたり手術を行ったりもする。
佐藤かよさんの場合は15歳から女性ホルモンを使ってきたために多少なりとも男性の二次性徴が抑えられ、一方で女性の二次性徴を実現している。20代、30代からではこうはいかない。皮下脂肪が増えたり肌の質や感覚の変化、性器の萎縮、男性機能の喪失が起こるが、声や骨格、ヒゲなどは変化しない。
先頃セミヌード写真含むフォトエッセイを出しているが、
Web上で見る数点の写真を見る限り見事に女性に見える。
もともとの体質が女性的だったようで体毛も薄かったなど女性として生きていくのに有利な形質を持っていたことが幸いしている。声も高い。
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最近では小学生で性同一障害として生物学的性でない方の性を認められ生活している例もある。
心と体の性の不一致が確実なら、はやければはやいほど体を心の性に合わせやすい。真の性転換は不可能ではあるが、社会生活上より不都合なくくらしやすくなるだろう。一生の質が高まる可能性がある。
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性同一性障害を抱えた方の中には自殺を試みる方がいる。身体不一致による苦しみの他、特に子供時代はイジメや周囲の不理解から苦しむことになる。恋愛もそのきっかけになりやすいことだろう。
http://d.hatena.ne.jp/annojo/20100219
詳しくは知らないが、中には性転換手術後に自殺を図る例もあるとも。真の性転換は不可能であるから、男性でも女性でもないという状態・性アイデンティティが宙に浮いた状態になってしまったのかも知れない。
ただ、性というのは二つに分けられるほど単純なものではない。
性染色体がXXなら女性、XYなら男性となるが、
アンドロゲン不応症(精巣性女性化症、睾丸性女性化症)では外見や外性器は完全な女性(しかも美人な方もよくいるとか)でありながら性染色体が男性型(XY) である。卵巣や子宮がなくもちろん子供を産むことはできない。
また、X染色体が1本のみの
ターナー症(低身長、女性型だが性成熟がおこらない)やXXYの
クラインフェルター症(長身長、男性型だが性成熟が不十分になることがある)などがあるし、両性具有もある。
様々なありようがあり、本人や周囲がそれも個性と認めるべきなのだろう。
なお、有性生殖を行う生物の多くではオス・メスに分かれているが、性転換をするもの(クマノミが有名)、発生時の温度環境によって性が決まるもの(ミシシッピーワニなど)、雌雄同体であるもの(カタツムリなど)など、多様である。
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Posted at
2011/06/23 02:35:04