先日祖父のバイオリンのフィッティング交換をして以来、ちょっとバイオリンが気になり、ヤフオクなんかものぞいていた。祖父のバイオリンとまったく同じバイオリンが「少なくとも昭和37年以前」として出ているのがあったり。祖父が戦前に持っていたものは空襲で焼けてしまったそうで、戦後安いものを買い直して弾いていたらしい。もしかすると中古で買ったのかも知れない。
さて、いろいろなバイオリンがあったが、中に明らかに古道具屋さんの系統の人が、旧家引き取り品の中の一つとして、弦も駒もついていない状態の、内部のラベルがないバイオリンを出品していた。
そこそこ見ている人はいたようだが、余りにも正体不明な楽器で状態もよく分からない、写真だけで判断しろと言われても困ってしまうと言うもの。
そもそも、ラベルには制作者や制作年などの情報が書かれていて、これがバイオリンの評価の重要ポイントである。それがないとなると、一体どこでいつ作られたものなのかまったく分からない。普通手を出しにくいのがノンラベルの楽器だ。
だが、私はとてもこのバイオリンが気になってしまった。
まず、木目が美しい。目の詰んだ表板(おそらくよい材料)、トラ杢単板の一枚板(古い楽器ならよい材料である可能性も。現代の楽器なら小さい材料で済む2枚あわせの方が質がいいものが使っている)。表板は木目が浮いて、結構時間が経過しているように見える。
今はみないちょっと手の込んだ顎当ての金具。経年を感じさせるその古び方。
スクロールはエッジがしっかりしていて、つくりはよさそう。
(以上の写真はオークション出品者による)
全体のたたずまいが味わい深い。時間を感じさせながらも極めて傷が少ない。
旧家×古い×良さそうな材料×良さそうな作り×程度がかなり良好そう
=結構いいバイオリンの可能性?
もちろん、旧家というのも信用できるのかどうか分からない(出品者は旧家引き取りを積極的には示していなかったが、自己紹介では旧家引き取り品を販売していると)。ただ、よくない業者なら美辞麗句を並べているだろうが、この出品者は基本的に写真だけ。判断を全て落札者の目に任せている。訳の分からないものを高価に売りつける詐欺とは無縁そう。
これはまともに鳴らなかったとしても姿に惚れたので部屋のアンティークな飾りでもいいやと、参戦。
一人の方と少し競ったが、あきらめてくれたので、メーカー品最低ランク量産バイオリンの中古程度の価格で落札できた。つまりほとんどジャンク価格。
それが届き、駒と弦をつけて音を出してみた。
最初祖父のバイオリンと比べて「あれっ、高音が出ないな」と感じたが、それも瞬間。まったく異次元の音を出していることに気付いた。
弾くとバイオリン全体が強く振動し、鎖骨に強く響く。音は幅広く非常に豊か。
祖父のバイオリンと比べて軽く、弦だけでなく楽器全体が鳴っている。
これは全然違う、と。
もちろん、自分はバイオリンには素人で、他の楽器もほとんど触ったことがない。ただ、ここには明確な比較対象があるので分かる。このバイオリンは本物だ。そこらの量産品なんか目じゃない。かなりいい楽器だ。そう感じた。少なくとも祖父のバイオリンとは異次元の音を出す。
もっとも、もっと華やかさがあってもいいし、それは安物の弦の影響や取りあえず使っている古い曲がった駒の影響もあるかもしれない。
それでも、すくなくともかなりの掘り出し物だったように思う。
まあ、ラベルがあることが評価の重要ポイントであるバイオリンの世界で、時折あるノンラベルのバイオリンの評価は低くなる。だが、これを売ろうというわけではないから構わない。
これで自分がまともにバイオリンが弾ければ……。
練習しよっ。
誰か先生に習うかなあ。
※写真はまだオリジナルのままだが、弾くことを考えるので、取りあえず顎当てはスズキバイオリン製のツゲのに交換。こちらの方使いやすい。新品売価10000円ぐらいのものを楽オクで2000円。新品同様でこれも掘り出し物だったかも。
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追記
今は仮に古く反った駒を使って安物の弦を張っているが、それでも恐ろしいほどのパワーがある。これをちゃんとした駒、ちゃんとした弦にしたらどうなるのだろう。
ものすごく楽しみになってきた。
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Posted at
2013/08/24 11:40:42