中学校で英語を習うと、筆記体の練習もさせられたものだった。
当然ネイティブは筆記体を書くものだと思い込んでいた。
しかし、高校にいたネイティブの英語講師は筆記体を書かないどころか、ひどく字が汚い。
以降いろいろなネイティブの書いた文字をみたが、文章を筆記体で書いたものを見たことがない。場合によっては全て大文字で書かれたものもあった。
唯一の例外は署名で、筆記体、というかもはや全く判別不能な線が書かれているものがほとんどだった。
ネイティブは普通文章では筆記体を書かないのだ。
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ネイティブに筆記体で書いても読んではもらえる、らしい。
ただ、あまり使わないらしい。
もともとは筆記体が中心であったようだ。古い文章は筆記体で書かれている。19世紀半ばにはタイプライターが生まれ、1960年頃から教育でもブロック体を重視するようになり、パソコンの普及でますます筆記体が衰退したらしい。
ただ、実際の筆記ではそれぞれが書きやすいように文字を崩したりブロック体と筆記体がちゃんぽんになっていたりすることがあるそうだ。
かつて自分は、日本には書道の文化があり、美しい文字を書くことを大切にしているが、欧米にはあまりそういう習慣がないのだと思っていた。実際に汚い文字を書くネイティブが多い。可愛い顔して字がぐちゃぐちゃとか。しかし、かつて普及していた筆記体の書体には非常に美しいものがある。そう言う見方は必ずしも正しくはないのかも知れない。
活字体が増えたことで筆記体が衰退し、書き文字をきれいに書くという意識も揺らいでいったというところなのかも知れない。
今の中学校の英語教育(学習指導要領)では筆記体が必須ではなくなっている。学習量を減らす一貫ではあるが、ネイティブが筆記体を使わなくなっている流れに沿ったものでもあるようだ。ただ、ネイティブが読める筆記体が読めないのは問題があろう。
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ブロック体の小文字が誤読されることがある。Lの小文字「l」は数字の「1」と誤読されやすい。そのため、活字でも斜体(イタリック)や筆記体で書かれることがある。手書きでは筆記体を使う事が多い。
ところが、単位となるとそうはいかない。SIという国際的な取り決めでどのようなときに大文字・小文字を使うかなどが定められているからだ。
たとえば単位は人名由来のものは大文字、単位の接頭語(キロとかメガとかマイクロとか)は古くからのものを除き倍量(10倍、100倍、1000倍……)は大文字、分量(1/10倍、1/100倍、1/1000倍……)は小文字という原則があり、単位とかぶる文字は区別がつくように大文字または小文字になっている(メートルmとメガM、ケルビンKとキロkなど)。どのばあいも斜体は不可で立体(ローマン体)である。
しかし、先に挙げたリットルは小文字のlとなり誤読されやすいため、SIでも大文字の使用を許している。
この例外のおかげで困ったのが、人命由来単位が大文字という原則との整合性である。
そこで、なんとウールナーという学者が、クロード・リットルさんという架空の人物を創り上げてしまった。
ウールナーは1978年4月1日(エイプリルフール)に発行された教師向けの化学のニュースレター"CHEM 13 News"に、リットルの名前の由来についての作り話を掲載した。この作り話によれば、クロード・リットルは1716年2月12日にワインボトル職人の息子として生まれたという。彼の極めて顕著な(架空の)科学の業績により、1778年に彼が亡くなった後、体積の単位に彼の名前がつけられることになったという。
この作り話は国際純正・応用化学連合(IUPAC)の雑誌 Chemistry International に誤って事実として掲載されてしまい、後に撤回された。
(クロード・リットル Wikipedia)
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かつて小中高等学校の教科書では筆記体小文字のエルを使用していたが現在はSIに準拠しており、市販の製品の表示もほとんどが大文字(L)表記になっている。
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元素記号にもエルの表記問題がある。
アルミニウムAlや塩素Clである。
活字の場合、元素記号には原則は立体を使い、特別な意味(条件)を持つ場合にのみ斜体を使うことが定められている。
なので、エルを斜体にして区別することができない(したり顔で斜体小文字エルを使って元素記号の書き方の解説をしているページを見かけるが……許されない表記)。
手書きの場合も本来はブロック体表記であってlの筆記体表記は区別のために慣用的に許容されているのみである。活字では筆記体を使ってはいけない(それでもWeb上では学校教員ないしは塾講師が作ったページに筆記体小文字のエル「Cℓ」などが多用されている。これは重大なルール違反)。
学校現場で「化学の研究者は、Clをつづけて筆記体で書くのが普通だ」などと言って教えていることがあるが、とんでもない。間違ってもそんな指導をしてはいけない。
教育現場では、研究者が首をかしげるような指導がよくある。
参考
筆記体 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AD%86%E8%A8%98%E4%BD%93
クロード・リットル Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AB
国際単位系(SI)は世界共通のルールです
https://www.nmij.jp/public/pamphlet/si/SI1002.pdf
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Posted at
2014/07/20 00:43:52