(「八宝屋 燃圧レギュレーターの指示値と説明書の間違い?(追記:改良、校正もしてみた) 」から改題した)
・ゲージの指示値が正しくないことの確認
テストして、エアブラシ用コンプレッサーの圧力計と、燃圧レギュレーター付属ゲージの指示値が0.2kgf/cm2ほど違っていた件の続報。
正しいのはエアブラシ側と思われるが、どちらがずれているのかを確認するために、我が家に他の圧力計はないかと探してみると、先日導入したエアコン用のマニホールドゲージについている。
これをエアブラシ用コンプレッサーにつないで指示値を比べると両者はほぼ一致している。
ほかにもタイヤゲージや空気入れのゲージ、コンプレッションゲージもあるけれど、ずれているのは燃圧レギュレーターのゲージにほぼまちがいない。
針の振れ止め用のグリセリンが入っていて、見た目はしっかりしているのに、校正ができていないのか。
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・レギュレーターの構造に欠陥?
このレギュレーター、説明書通りに接続するとどうも動作がおかしい。設定圧力の1.5倍ぐらいまで上昇してから「ばふんっ!」という激しい音と共に開弁し、圧力一定となる。3kgf/cm2なら4.5kgf/cm2以上まで上がってしまう。これでは圧力に耐えられずガソリンが漏れるなどの不具合が出かねない。
八宝屋の説明書通りだと、赤がフューエルプレッシャー側、青がリターン側となっているのだが、分解して中を確認すると、青から入って弁を押し上げて赤にでていく構造。赤側からガソリンを入れると圧力をスプリングが直接受けない。本来ならダイヤフラムの大半が圧力を受けるようなっているはずが、その面の大半が「弁」として機能するだけになっている。燃圧レギュレーターとしては設計がおかしい。
図にしてみた。
逆にすると弁膜の弾性でスプリング圧のかからない周囲に圧力が逃げてスプリングにスムーズに力が伝わらず弁を開けるのに過剰な力を必要とするし、
弁膜に無理な力かかって破れやすくなるだろう。
説明書の通り赤側から圧力をかけていると、設定より1.5倍程度の大きな圧力がかかってから「ばふんっ!」と大きな音を立てて開弁する。これはどう考えてもおかしい。
逆にしたところ、全く問題なくスムーズに開弁し一定の圧力になった。上記の推論は正しいように思える。
おそらく、逆(説明書の通り)にしたまま使っているとやがて弁膜が破れ、ガソリンがバキューム系に漏れ出すことになるだけでなく、燃圧が下げられなくなり各所からガソリンが漏れ出しかねない。非常に危険である。
とあるブログで、この製品を使ているうちに燃圧が異常に高くなり、調整ができなくなったとしているが、説明書の通りに「正しく」接続したためだと思われる。
・一般的なレギュレーターの構造との比較
他社製を見ると、大概横のポートから入り、下のポートへ抜けていくようになっている。以下はその例の一つ。
http://www.gcgturbo.co.jp/home/products-2/turbosmart/fuel-pressure-regulators/
こうした製品では横からの圧力が広いダイヤフラム面にかかり、スプリングを押し上げ弁を開くので構造的に問題ない。
八宝屋の物は説明書と逆に下から圧力をかけないとうまく弁が開かない(説明書通りの接続では開弁には設定の1.5倍程度の圧力を必要とし、圧力低下で弁が閉じると再び1.5倍程度の圧力を必要とする。1.5倍の圧力に満たなければ設定より大きな圧力がかかり続ける)る構造なので、外観だけで同じに考えてはいけないと言うことだろうか。
しかし、困ったことは、説明書と逆に(構造上正しい方向から)圧力をかけると、八宝屋レギュレーターのゲージが指示するのはインジェクター燃圧ではなく、リターン燃圧であると言うこと。開弁するまではゲージの指示はゼロだし、開弁後も実際の燃圧よりかなり低くなるだろう。
つまり、やはり赤側から燃圧をかけるようにゲージが取り付けられているのである。
レギュレーターとして機能させるには逆につなぐしかないが、それでは燃圧が測れない。燃圧が知りたかったらレギュレーターから外して他につけ直すしかない。
・改良の検討と改良
普通に動作するようにするには、スプリングの下の板に赤側から入ったガソリンの圧力をかけるための溝を作ることだろう。少しでも圧力が板部分にかかればスプリングを直接押し上げるので膜への負担は軽減する。
リューターでけずれば目的を達することができるだろう。
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で、早速やってみた。
傷をつけてはいけない部分はビニールテープで保護し、リューターにダイヤモンド砥石をつけて放射状に6本の溝を入れて見た。
これで赤側ポートからの圧力が弁膜だけでなくスプリング直下にもかかるようになる。
ダイヤモンド砥石はあまり使ったことがなかったが、金属を簡単に削れるってなんかすごい。やはり道具はもっているかどうかが大きい。
早速試したところ、スムーズに弁が開くようになった。大成功。
あとはゲージの示差だけ。校正に出すのもなあ……。
・ゲージの校正
なんちゃって校正もしてみた。
圧力計はほとんどがブルドン管方式で、非常に単純。
詳しくはググって。
裏の防爆栓からブルドン管が触れるので、これを小さなドライバー等で少しずつ変形させると指針が動く。他のゲージと指示が合うところまで繰り返して完了。零点は少しずれたが。
他のゲージで3kgf/cm2なら八宝屋ゲージでも3kgf/cm2になった。
これで本来の目的通りに使えるはずだ。精度は期待できないが、少なくとも3kgf/cm2近辺はおおむね信頼できる。
ブルドン管などいじくるのは大学生の時に買った安物負圧計の調整以来だ。
・燃圧レギュレーターの総括
ゲージを見てもものは悪くなさそうなのだけれど。ただ調整がされていない。
レギュレーターも作り自体はしっかりしていてメッキも非常にきれい。ただ、本来調整時の抵抗を減らすために入っているボールが入ってなかったり(ボールを受けるへこみはある)、目的通りに動かない構造だったりする。
ボールがないのは組み立て工程に問題があるのだろうし(組み立てミス、あるいはなくても困らないので省いて材料代を浮かせたか)、設計もきわめて不可思議で、よく分かっていない人が設計したか、別の目的の物を流用でもしたかのよう。
正直、オススメできる製品ではない。というか改造しないと正常に使えない。
普通の人なら動作に異常を感じるか使用中そうそうに壊れて「金をどぶに捨てた」と思って、ゴミ箱行きだろう。実際先のブログの人もレギュレーター本体は廃棄したらしい。
・八宝屋の姿勢
八宝屋の説明書によると
「本品のクレーム、返品については原則として応じかねます」
とある。HPにはこのような表記は一切ない。不良品であったとしても応じないというのなら、販売時に示す必要がある。販売する側の姿勢としてちょっと信じ難いものがある。
そして、実際構造的に問題があり、調整もされていない。欠陥品と言ってもいいだろう。
・全く機能を果たさないわけではないが、使用によって本品が近い将来破損し車両に影響する。
・本品が破損しなくても異常な燃圧が一時的にかかるため、車両がダメージを負うおそれがある構造。ガソリンが漏れれば車両火災の怖れも充分ある。
・ゲージが本来の圧力より低く指示し、その値を見て調整を行うと車両に不調をきたすおそれがある。
使っていれば確実に故障し、車両へも悪影響が及ぶ。
八宝屋はこの製品の問題を承知の上で販売しているのだろうか。しかも決して安いとは言えない値段で。新品といいながら返品を受け付けないとはジャンク販売同様である。
八宝屋が何を言おうともPL法の対象になるのは当然であるが。構造欠陥を証明するのは難しくない。
これまで八宝屋でシリコンホースやO2センサー、燃料ポンプなどを購入してきたが、今後は購入することはないだろう。
・社外燃圧レギュレーターの雑感
それにしても、燃圧レギュレーターの純正が高いのはともかく、社外の汎用調整式は、構造からして極めて単純でコストも安く、出荷調整も必要がないので原価は相当低い。技術的には完全に枯れたものであるし。
こんなものを高い販売価格で売るのは驚きである。
ただ、数が出るものではなく、その点では価格が高くなるのはある程度やむを得ないのかも知れないが。
圧力ゲージについては、これも単純で精度を求めなければコストは安い。しかし計測機器だけに調整が欠かせず、これにコストがかかる。そこをカットすれば安くなるが、それではゲージの意味がない。