地元千葉市の市立病院は慢性的な赤字が問題になっている。
実は自治体の公立病院の9割が赤字だという(自治体からの繰入金で経営を成り立たせている)。廃止された公立病院もある。
その主たる理由は診療報酬の低さ。
日本の患者一人当たりの医療費は世界的に低いものになっている。
海外で医者にかかるとものすごく高いとか、海外で出産したら大変な事になったという話を聞いたことはないだろうか。
例:虫垂炎の手術
アメリカ
①総費用:1,624,400~2,165,800円
②平均入院日数:2日
日本
①400,000円
②4~7日間
http://hoken.kakaku.com/insurance/travel/select/cost/losangeles/
このように、海外の医療費は日本と比べてべらぼうに高いことが多い。
救急車ですら有料である。
そのためそうした国では、医者にかかることが自体が少なくなっている。
一方、日本では皆保険制度もあるが医療費が安いために気軽に医者にかかり、そのため病院は順番待ち。それを3分診療でこなすことでなんとか経営を成り立たせている。
http://www.fmed.jp/iryou/kokusaihikaku.html
そして、
日本は海外と比べて医師(勤務医)の報酬が低く、極めて長いサービス残業を行っているのは以前のエントリーの通り。
利益追求型の病院は付加価値の高い自由診療で利益を上げられるだろうが、公立病院は地域の市民を対象に健康保険の中でやっていかねばならない。これが現状の診療報酬ではやっていけないというのだ。
薬品メーカーは大きな利益を上げているが、病院は経営が苦しい。勤務医の報酬は実労働時間を考えると国際的には低廉の部類になるので下げることが難しい(下げると医師の確保が困難になる:公立病院の報酬は低い)。
国にとっても医療費の圧縮は急務である。
そこで、薬価を抑え込むことは基本方針になっている。しかし、薬価差益の減少は病院の経営に直結する。その上に診療報酬本体を下げることは、病院の経営を困難にする。
よくある診療報酬=医師の報酬という誤解は素人的にはやむを得ないかも知れないが、マスコミがその誤認を元にバッシングを行うのは、病院の経営を理解していない、理解しようとしていないが故であろう。
実際の勤務医の年収は減ってきている。
年収平均 H13 1250万円→ H25 1072万円
http://med.shikakuseek.com/income.html
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事実誤認の元にマスコミが医療をバッシングすると、それで不利益を受けるのは患者である。奈良の周産期医療がマスコミのバッシングによって崩壊したが、それで困ったのは全国のお産を控えた女性である。
診療報酬が微増したと叩く新聞があるが、トータルに見て、病院が経営できているのかどうかなどまったく考慮しもしない。
病院がなくなって困るのはわれわれ医療を利用する側なのだ。
私の自宅から徒歩圏内にある千葉市立海浜病院は夜間・休日対応の重要な役割を持つ病院である。しかし慢性的に赤字を抱え、設備も老朽化している。肝心の千葉市は財政再建団体転落寸前という状態。
万一、ここが立ちゆかなくなったらどうなるのだろう。
診療報酬だけでは立ちゆかない公立病院や私立病院の現状も見ながら、診療報酬のことを考えるべきだろう。
なお、消費税が8%になったことの病院経営への影響は、朝日新聞のこの記事が参考になる。
消費増税、病院経営を圧迫 「8%」ショック
http://digital.asahi.com/articles/ASH8K62Z4H8KULFA026.html?rm=552
念のために申し添えておくが、上記の記事のように正しい見方で書かれた記事もある。奈良の周産期医療崩壊させたあの毎日新聞ですら、ほかの記者によってきちんと取材した正当な記事も書かれている。
参考:
公立病院の赤字は何を意味するのか ~自治体病院経営から考える公共の意味~
http://www.mskj.or.jp/report/3155.html
医療の国際比較
http://www.fmed.jp/iryou/kokusaihikaku.html
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Posted at
2015/12/23 20:46:23