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2015年12月25日

薬価差益の大きさは、購買担当者次第?


 公立病院の赤字について調べていて、面白い話にあたった。

 医薬品メーカーからの納入価格と、厚生労働省が決めた薬価(病院や薬局等が患者から受け取る薬代)との差額を薬価差益という。

 病院の利益(薬価差益) = 患者さんが払う薬代  - 納入価格

 薬価が高かった時代は納入価格との差も大きくなり、薬を出すほど儲かるしくみだった。
 薬漬け医療として批判が強まり、薬価を低く抑えると同時に、医薬分離を進めるために薬局で出す方が有利になるしくみに変更した。これによっていくら薬を出しても院内処方では処方箋代のみとなり、薬価が引き下げられたため院内に薬を在庫することでむしろ赤字になることすらあるしくみになった。

 これで医薬分業がある程度進み、病院の院内処方は減り、院外処方が増えた。

 しかし、病院は多くの医薬品を使い、調剤薬局では扱いがない薬品は院内で調剤を行う。扱いが難しく高額な医薬品は院内処方としているところも増えているらしい。

 あいかわらず薬価差益は経営に関わる。

 ところが、この医薬品の納入価格は、大きな病院で大量に購入したら安くなると言うことではないらしい。

 結局事務方の購入担当者と医薬品卸(あるいはメーカー直?)の担当者の間で決まってくるので、購買担当者の力量で納入価格は違うというのだ。

 同じ薬を出しても得られる薬価差益は病院によって異なるらしい。薬価が引き下げられて利益はほとんどないという一方でそれなりの利益が出る場合もあると言うことになる。

 **

 これで非常に不利になるのは公立病院である。

 公立病院の事務方はどんどん異動になるので、ノウハウも人間関係も異動の度にリセットされる。また、役所の一部門でしかなく、担当者のコスト意識が希薄になりやすい。このため、公立病院への納入価格は高くなりやすい。これが赤字につながっている。役所への納入価格というのは一般に高い傾向があるが、医薬品も例外ではない。
 役所というのは本当に非効率的にできている。

 対策としては役所内人事と分離された病院専従職員を作るしかない。

 **

 千葉市の公立病院の場合、可能な限りジェネリック(後発医薬品)をつこうことで赤字の削減に努めているという。

 以前薬価の基準が変わり、ジェネリックを使うことで加算が増えるしくみになった。それを最大限活かそうとしているのだ。
 なお、ジェネリックの方が薬代は安いので、国の医療費負担を減らすことができるのでこのしくみがある。

 **

 そんなこんなで、薬価の引き下げは薬局だけでなく病院の経営への影響も少なくない。

 医療報酬(本体)=医師の報酬と単純に考えることはできず、薬価と合わせてトータルに考える必要がある。

 診療報酬(本体)は、たとえば経営の厳しい産科や小児科の報酬を増やすことでそれらの科を持続させることへのインセンティブにするなど、その時々の医療行政の方向性に使われる。一律に医師の報酬に直結するものではないのは明らかだろう。

 トータルではマイナスながら診療報酬を微増加させることは、日本医師会への見返りという見方は間違っていると言うことはないだろうが。

 しかし、購入物品にかかる消費税は、診療報酬の上乗せ部分で穴埋めをすることになっている。
 この不可思議な制度のために、消費税増税分の上乗せを、医師の報酬が引き上げられていると思い込んでいる人もいたようだ。
 消費税は輸出製品と同じく還付式にすればよいのだが、なぜかそちらは手がついていない。

 また、単純に診療報酬=医師の報酬と思い込んでいるひとも少なくないようだ。それが実際に可能かどうかは病院の経営状態によるだろう。多くの病院は経営が厳しい。

 財政の厳しい国としては全ての診療報酬を引き下げたいのは山々だ。しかし、現行の診療報酬でも赤字にある。医師不足も深刻である。
 国際的には医師の待遇が悪く、勤務状況は劣悪と言えるレベルあることが多い。

 診療報酬の引き上げを訴えるのも当然と言える。



 医師不足の原因は偏在であると言われ(日本医師会自身も偏在を原因としていた)、厚生労働省は医師過剰と報告してきた経緯がある。
 しかし、国民一人当たりの医師の人数は、OECD加盟国の平均以下(2008年で30位中27位)であるという。絶対数の不足が明らかになっている。
 一方で診療費の安さから一人当たりの医療機関利用回数はかなり多く、少ない医師で多くの患者をさばく3分診療の原因ともなっている。
 また、医師のサービス残業も深刻である。
 医師を増やすと共に、診療報酬を引き上げていく必要にあるのは明らかだ。
 これを国の財政負担との兼ね合いの中で解決していかねばならず、非常に難しい課題である。

 現在の医療制度が崩壊し、アメリカのように非常に医療費が高い状況になってしまえばむしろ医師の負担は減り、収入は増える可能性が高い。
 その場合、医療にかかることができない人が多く出てしまう。

 現在の制度を守りつつ、医師の待遇や病院経営を改善させ、財政負担を減らすには、自己負担率を上げることを考えなくてはいけないのかも知れない。
 貧困率が高まる中、セーフティネットを確保しながら、余裕の大きなところからはとるしくみは必要だろう。
 寄付文化が根付いていない日本では、高所得者に対する課税は寄付に代わる社会貢献ととらえることはできないだろうか。
 
 それにしても、高齢化問題、社会保障費/医療費問題はずっと前から分かっていたはずなのに、現実の問題として降りかかってくるまで対策されていなかったことになる。
 これまで何をやっていたのかと言わざるを得ない。 


 
 以下の資料は広範な問題がよく整理されているようだ。

財務省資料
- 病院経営が抱える諸問題 -
医療法人鉄蕉会 理事長
国立大学法人東京医科歯科大学 客員教授 亀田隆明
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_fs/material/zaiseib210511/04.pdf
 
ブログ一覧 | 医学・医療 | 日記
Posted at 2015/12/25 21:24:30

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