大方の方は予想していただろうけれども、機械式時計を中古で買ってしまった。
SEIKO LORDMATIC
という1960-1970年代に非常によく売れた時計で、自動巻き、秒針制止、手巻き可能な5606Aというムーブメントで動き、そこそこのモデルだ。
メルカリで値引きしてもらい入手したこれは、金属ベルトがぼろぼろで取り替え前提。傷も多かった。時計盤がきれいだったので納得して買っている。その分安いし。
時計としての機能は大丈夫そうだ。
写真ではそれほど酷くは見えなかったが、実物はガラスの傷がかなり目立った。
売主の写真を少し調整して傷が見やすいようにしてみたが、傷があるのが分かるだろうか。
実物はもっと目立つ。いかにも使い古された古時計だ。
そこで、ガラスを磨くことにした。
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文字盤を保護するガラスを業界では風防と言うらしい。素材は大きく3つに分かれている。
アクリルガラス(有機ガラス)、ミネラルガラス(無機ガラス)、サファイヤガラスだ。
アクリルガラスはアクリル樹脂、ミネラルガラスはケイ酸塩を主成分とするいわゆるガラス、サファイヤガラスは硬度の高い人工サファイヤでできている。
硬度はアクリル、ミネラル、サファイヤの順に高くなる。すなわちあとのものほど傷がつきにくい。
今回の腕時計はミネラルガラスだ。普通プラ風防(アクリルガラス)は磨けるが、ミネラルガラスは傷がつけばみがくことがむずかしく、交換が原則だ。
しかし、ガラスは酸化セリウムの粉末を使って磨くことができる。さいわい、以前車のフロントウインドウを磨こうと買ったものがある。
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いろいろ試行錯誤してみたが、結局、次の方法に落ち着いた。
実際にはムーブメントを外したケースごとだが、ポリプロピレンシートの上に垂らした酸化セリウム液に押しつけてひたすら往復させる。
すると、縁の方からきれいに磨かれてきた。このとき、単に研磨されているだけでなく、酸化セリウムとガラスが化学反応を起こしてガラスが柔らかくなり削れていく。
何故縁からかと言うと、ガラスにたわみがあるからだ。おそらく、枠に圧入するために起こっているのだろう。
中心部分がなかなか磨けず、最終的には多少穴状の傷が残っているが今回はこれでよしとした。
研磨結果を示す。
表面の傷がほとんどきれいになり、平面度も上がっている。
今回のものは文字盤がきれいだったので、ガラスを磨いたことで非常に美しい姿になった。
まだケースは磨いていないので、こちらも磨いて傷を消す予定だ。ただし、薄いヘアライン加工部分があるので、ここをどう処理するかは検討中だ。
研磨前後を比較してみる。
写真の撮り方が違うものの、ガラス面を見れば随分きれいになったことがよくわかる。
さて、この作業のコストパフォーマスはと言うとぼろぼろである。
ミネラルガラスは1000円未満で買え、時計屋で交換してもらっても3000円程度らしい。
一方今回の作業では手持ち活用とは言え酸化セリウムという少々高価なものを使い、休み休み5時間程度をかけて磨いている。1時間1000円として5000円の人件費と言うことになるから、交換してしまった方が遙かにコストパフォーマンスがいい。
もっとも、自分は酸化セリウムは手持ちで自分の時間を自分の楽しみとして使っているので、コストは0であるが。
自分でガラス交換をするとなると、1500-2000円程度の簡易圧入機が必要だ。それでも依頼するより安い。失敗したとしてもガラス代はたいしたことないし、勉強代としては安い。
追記:
Webを検索するといくつかのミネラルガラス風防研磨の実践例がある。
そうしたものも参考にしながら、リューターや電気ドリルも試してみたが、結局手磨きに落ち着いた。ただし、その分時間がかかっている。ランダムアクションサンダーやオービタルサンダーにガラスを固定できればその方がずっと楽に短時間で事を終えられそうだ。
一旦砥石を使って磨いてみたが、酸化セリウムは研磨力が非常に大きいので、酸化セリウムだけで磨いていっても問題ないと思われる。
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Posted at
2019/08/10 23:14:57