工学系に慣れ親しんだ人のみならず、「オーバーシュート」は一時的な行きすぎ状態を指す言葉として使っている。
http://zone.ni.com/reference/ja-XX/help/371361R-0112/lvwave/transition_measurements/
上記は電気信号制御の話で、目標値に対して一時的に行きすぎた状態をオーバーシュート、そこから戻りすぎた状態をアンダーシュートと言っている。これがごく常識的な使い方だ。他の分野でも同様に使う。
しかし、本邦感染症関係の方は、感染爆発によって医療の限界を超えた状態を【オーバーシュート】と表現するらしい。
感染が行き着けばやがて戻ってくるはずなので、経時的に見ればオーバーシュート状態であることが分かるが、戻る先は感染者がほとんどいない平時の状態なので、医療の限界と関係なく、流行そのものがオーバーシュートと言える。
コントロールしたい幅から逸脱することをオーバーシュートと呼ぶのは差し支えないとは思うが、実際の使われ方は感染爆発と同義になっていて、制御目標に対する逸脱と関係がない印象が強い。
その一例を新聞における解説記事にみてみようか。
オーバーシュート(爆発的患者急増) 医療追いつかぬ国も
2020/3/21付
日本経済新聞 朝刊
▽…新型コロナウイルス感染症対策専門家会議などによると、感染症において、突然爆発的に患者数が増える現象のこと。本来は証券価格の過剰な変動を指す用語でもある。現在欧州の複数の国でこの現象が起きており、フランスやスペインなどで、2~3日で感染者数が2倍となる指数関数的な増加が発生している。患者の急増に対し、医療態勢が追いつかない医療崩壊がイタリアなどで既に起きており、死亡率の上昇を招いている。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO57057420R20C20A3EA2000/
あきらかに急増のことのみを指している。
金融取引においても、ある方向に勢いが付いたときに、行きすぎてしまい、すぐ戻ってくるときその状態をオーバーシュートと言う。
敵を倒すのに、もう相手は死んでいるのにまだ倒れないと必要以上に弾を打ち込んでいる状態というか。要するに打ち過ぎの状態である。
間違っても爆発的増加という現象を指すのではなく、能動的な目標や適正値などに対する過剰な増加を言う。
なので、単純に受動的に起きる爆発的増加をオーバーシュートと言われても違和感しか感じない。
ましてや日本においては検査もろくにせず、感染爆発を避けるべく実態把握をしようとしていなかった状況で、とてもコントロールしていたと言える状況にもない。
その意味においても違和感しか感じないのだ。
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Posted at
2020/04/05 10:35:45
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