以前、不思議なことを話す人がいた。
肥満なんか気にする必要はなく、ダイエットは必要ないという。曰く、
・知りあいのお医者さんが言うには、やせているご老人は、病気になると手術したときに体力が持たず早期に亡なくなるケースが多いそうだ。だから太っていた方がいい。やせる必要なんかない。
とか。
ほほう。太っている方が体力があり手術後も存命率が高いと。
データがないので分からないが、やせているご老人が手術の予後が悪いとしよう。確かにやせていると術後の回復には不利そうに思える。しかし、
・なぜその人がやせているのか? 生活に問題があってやせているとか、病気でやせているとかいくつかの要素があって、もともと体力に問題があるのではないか。
と言うことがまず気になる。
そして、
・やせていることで手術の予後が悪かったとしても、それが太っていることの肯定にはならない。肥満のリスクは様々なものが知られている(生活習慣病、体重増加による関節症など)。
こういう極端な例を出して対極にある状況を肯定する論理は、まあよくみられる。
これは論理のすり替えであって、対極のリスクがなかったとしても、それが本来持っているリスクはなくならないことを誤魔化している。
実は、男性においては多少太っているあたりの方が実は死亡率が低いことは知られている。やせていても太っていてもリスクがある。男性のBMIの標準が22だと言うから、わずかにそれより高いところに死亡リスクの谷がある。

独立行政法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター予防研究部
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/250.html
このデータかどうかは記憶にないが、以前こうした研究を見てBMIの適正とは何かを考えたものだ。
太っていることにリスクは確実にあるので、やせていることのリスクで太っていることを肯定することはあり得ない。
しかし、データを出すまでもなく、論理のすり替えだと気がつく話。気がつかないのは自分で考えないからだ。
トンデモさんはいつもトンデモを吹聴する。トンデモネタの提供者として感謝状を贈りたいぐらいだ。
この手の人は、教授とか医者とか言うとなんでも信用するし、自分で内容を検討できないので簡単にだまされる。
しばらく前には「この視力回復装置を買えば、その費用は今後のコンタクト代とクリーナー代で元を取れる」と言われて本気で買うか買うまいか悩んでいた。
そのあやしげな装置を使ったとして、それが確実にコンタクト不要な状態まで視力を回復させないのであればコンタクト代とクリーナー代を浮かすことにはなり得ない。そして、近視の理由を考えると、目そのものを変形させない限り大きく近視を矯正することは不可能だ(多少の改善は毛様筋のトレーニングで可能らしい)。そのあやしげな装置でそれが出来るのかどうか検討してみればいい※。
ちなみに、眼球でもっとも光の屈折率が高い部分は空気と角膜の境界。眼の中の水晶体(レンズ)ではない。なので、ここをいじると近視矯正はしやすい。レーシック手術もここに目をつけている。
密度の違いが屈折率を左右する。眼球の中は対空気ほど密度が違う場所がない。
※
こうした話を聞く度に、私は「そうした方法は知られていないから、慎重であるべきだ。特に高い費用が関係する場合は」と言う。しかし、だまされがちな人は「まだ知られていないから高いのだ。これを発表すると業界の妨害に遭うから隠されているのだ」とだまされた通りの反論をする。
「あなただけ」商法は昔から廃れない。一般に、うまい話はあなたのところには来ない。
しかし、その人の社会的位置によっては本当にうまい話が仲間から転がってきて味をしめているので、余計にうまい話に飛びつきやすい。
価値判断を他人に依存する人間は、基本的にだまされる。
Posted at 2012/03/17 18:36:51 | |
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トンデモ | 日記