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Yuh_Fazioliのブログ一覧

2019年08月09日 イイね!

リリカ


 リリカと言っても人の名前ではない。
 プレガバリンと言う、神経障害性疼痛に用いられる医薬品だ。要するに痛み止めである。
 
 実際はもう少し広くて、抗けいれん薬であり、てんかん、成人の全般性不安障害の治療にも用いられる。

 父親は高齢なので、あちこちに問題があり、脊柱管狭窄での痛みにこの薬を処方されているらしい。


 調べてみると、いろいろ興味深かった。

 **

 神経にはたらく薬の恒で、小量から徐々に量を増やして目的の効果を得る。

 リリカを飲みながらの飲酒は薬の効果を増強する。当然、副作用が強く出やすくなる。
  
認知機能障害及び粗大運動機能障害に対して本剤が相加的に作用するおそれがある。

認知機能
→ 記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断などの知的な能力
 (眠気、めまい、ぼーっとする、イライラ、記憶障害、物忘れ)
粗大運動機能
→ 姿勢の保持や移動運動などを代表とした運動
 (手先ではなく体を大きく動かすこと全般)

相加的
→ 複数の要因の効果が知られているとき,それぞれの要因が独自に働いて,結果として効果が積算された状態になること.
 
 つまるところ、高齢者にありがちな認知や運動の障害を強くすることになる。お酒は控えるべきだろう。

 この薬は高齢者へは慎重投与となっている。

 本剤の投与により眩暈、傾眠、意識消失等が現れ、自動車事故に至った例もあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する。特に高齢者では眩暈、傾眠、意識消失等の症状により転倒し骨折等を起こした例があるため、十分に注意する。



 次は副作用の詳細。

副作用
主な副作用
浮動性眩暈、浮腫、疼痛、体重増加、好中球減少症、白血球減少症、血小板減少症、食欲不振、食欲亢進、高脂血症、高血糖

重大な副作用
眩暈、傾眠、意識消失、転倒、骨折、心不全、低血糖、倦怠感、冷汗、振戦、意識障害、低血糖症状、肝機能障害、AST上昇、GOT上昇、ALT上昇、GPT上昇、肺水腫、横紋筋融解症、筋肉痛、脱力感、CK上昇、CPK上昇、血中ミオグロビン上昇、尿中ミオグロビン上昇、急性腎不全、血管浮腫、過敏症、間質性肺炎、咳嗽、呼吸困難、発熱、ショック、皮膚粘膜眼症候群、Stevens−Johnson症候群、多形紅斑、劇症肝炎、腎不全、アナフィラキシー

上記以外の副作用
不眠症、錯乱、失見当識、多幸気分、異常な夢、幻覚、うつ病、落ち着きのなさ、気分動揺、抑うつ気分、無感情、不安、リビドー消失、睡眠障害、思考異常、頭痛、平衡障害、運動失調、注意力障害、感覚鈍麻、嗜眠、構語障害、記憶障害、健忘、錯感覚、協調運動異常、鎮静、認知障害、ミオクローヌス、反射消失、ジスキネジー、精神運動亢進、体位性眩暈、知覚過敏、味覚異常、灼熱感、失神、精神的機能障害、会話障害、霧視、複視、視力低下、視覚障害、網膜出血、視野欠損、眼部腫脹、眼痛、眼精疲労、疲労、流涙増加、光視症、斜視、眼乾燥、眼振、回転性眩暈、耳鳴、聴覚過敏、動悸、第1度房室ブロック、頻脈、洞性不整脈、洞性徐脈、心室性期外収縮、高血圧、低血圧、ほてり、鼻咽頭炎、いびき、鼻出血、鼻炎、便秘、悪心、下痢、腹痛、嘔吐、腹部膨満、消化不良、鼓腸、胃炎、胃不快感、口内炎、流涎過多、胃食道逆流性疾患、膵炎、舌腫脹、発疹、皮膚そう痒症、湿疹、眼窩周囲浮腫、多汗症、蕁麻疹、脱毛、筋力低下、筋痙縮、関節腫脹、四肢痛、背部痛、重感、関節痛、筋骨格硬直、尿失禁、排尿困難、尿閉、乳房痛、勃起不全、女性化乳房、口渇、異常感、歩行障害、顔面浮腫、無力症、圧痕浮腫、胸痛、冷感、悪寒、易刺激性、酩酊感、転落、血中CPK増加、血中CK増加、ALT増加、AST増加、血中アミラーゼ増加、血中クレアチニン増加、体重減少、血中尿酸増加、離人症、無オルガズム症、激越、喚語困難、リビドー亢進、パニック発作、脱抑制、昏迷、嗅覚錯誤、書字障害、眼刺激、散瞳、動揺視、深径覚変化、視覚の明るさ、角膜炎、洞性頻脈、鼻乾燥、鼻閉、咽喉絞扼感、腹水、嚥下障害、丘疹、乏尿、射精遅延、性機能不全、無月経、乳房分泌、月経困難症、乳房肥大、胸部絞扼感、血中カリウム減少

 副作用は随分多様だ。神経にはたらく薬だけに、神経に関わる副作用がかなりある。

 **

 この薬は濫用されるおそれがあるため、英国では規制がかかっていると言うことを知った。

英国がプレガバリン(商品名リリカ)とガバペンチン(商品名ガバペン)を規制薬物に指定
薬害オンブズパースン会議
http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=519

 この薬は痛覚神経に効く。痛覚神経を痛み刺激の信号が伝わってくると、Ca2+をとり込んでそれを引き金に痛みを伝える物質を放出する。結果として痛みを感じる。
 リリカはCa2+をとり込む電位依存性イオンチャネルに結合してCa2+の取り込みを阻害し、痛みを伝えなくする。

 このしくみは我々が気持ちがいい、幸せだと感じるときにはたらく神経を抑えるのにも効いている。このため、リリカを使いながらオピオイド(モルヒネやアヘン、脳内麻薬のなかまをさす)をとり入れると多幸感が強く出る(中脳辺縁ドーパミン神経系の活性化が起こり、快感や多幸感を引き起こすドーパミンが多く遊離する)。

 オピオイドを効果的に効かせるための濫用がありうると言うことだ。

 **

 痛みを抑える薬は痛みの神経伝達を何らかの方法で遮断しようとする。
 それは脳での神経伝達にもはたらくものがあり、それらの薬の中には精神科で用いられる薬も含まれている。

 今回のリリカは抗てんかん薬、不安を抑える薬(全般性不安症の抗不安薬)としても承認がある。
 以前取りあげたサインバルタは慢性腰痛に対して処方されているが、もともとはSNRIと言うタイプの抗うつ薬である。

 サインバルタは痛みを抑える神経にはたらく別の神経からでる神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン)の放出後の回収を阻害し、信号が出っぱなしになっているように感じさせることで痛みを抑える。このしくみは不安を抑圧する神経にはたらく神経に対しても同様にはたらいて不安を抑圧するものと同様だ。このくすりはアメリカでは全般性不安障害にも適応がある。

 リリカにしてもサインバルタにしてもしくみは違うが不安を抑える作用がある。
 いずれも急な断薬は離脱症状が出るため、時間をかけて減薬をする。

 

参考
Posted at 2019/08/09 18:51:17 | コメント(0) | トラックバック(0) | 医学・医療 | 日記
2019年06月01日 イイね!

安楽死は楽ではない

 前の投稿で安楽死に触れてしまったけれど、安楽死とは「安楽に死ねる」ものではないとは、次のような記事を見てもよく分かる。

これを知れば日本で「安楽死」を望む人はいなくなる
https://ironna.jp/article/8622?p=1


 安楽死とは自殺幇助であり、はじめてしまえば本人が途中で思いとどまってもひどい障害に苦しみかねない。今ある方法はすぐに楽に死ねるものでもない。
 なお、医療の中で行われている「持続的深い鎮静」は、痛みを感じる意識を鎮めるもので、意識が回復しないから死に近いが、体は当分生き続ける。

 記事は医療との関連、病気の苦しみからの解放という観点で安楽死をとらえている。

 しかし、実際に自殺を望む場面は病気による苦痛だけではない。

 これからの日本社会では、高齢者を中心に生活費が得られず、飢餓に陥るケース、病気になっても医療が受けられずに苦しむケース、当然苦痛の強い病気でも緩和ケアも受けられないケースが急増してくることを予想する。

 お金さえあればもっとクオリティの高い老後を送れるのに、それが得られず支援もないために、早い死を望む人が急増しそうだ。そうした状況によってうつ病を発症し、自殺する人も増えるだろう。

 団塊の世代までは年金受給額が高く貯蓄もあるため何とか逃げ切り、そのあとの世代は年金には全く頼れそうにない上に貯蓄率も低い。今ですら生活保護は捕捉率が低い上にどんどん切り詰められている。おそらく将来的にはこの制度自体が縮小されるのではないか。

 韓国は通貨危機以降貧困によって高齢者の自殺率が特に高い国だが、いずれ元々全世代の自殺率が高い日本も高齢者の自殺率はさらに高くなると考えている。 

 一方、数が少ない若年層は、低賃金でありながら、高税率、高社会保険料を負担させられ、将来の補償は期待できそうにない。

 今のままでは日本に未来はない。

 だからと言って、1100兆円の負債を積み上げた日本が少子高齢化社会でこの負債を減らせるはずもなく、大ナタを振るって税金を食いものにする構造を断ち切ってそれでも難しそうに思える。

 付加価値を生み出す頭脳の育成を政策的、社会的に阻害してきた日本には、もう神風のごときラッキーが舞い込むぐらいしか逆転の目はない。

 保守層が特需再来を期待する朝鮮有事は起こりそうになく、万が一米軍が参戦するような戦争がアジアで起これば、日本も集団的自衛権を理由に参戦することになる。
 特需どころか疲弊しか考えられない。

 日本がもつ数多の原発を攻撃対象にされれば、日本は崩壊する。もっとも低コストにお手上げに出来る手段であるから、当然狙われるだろう。

 日本に大天才が現れ何もかも一変させるような事が起こるか、莫大な地下資源でも見つからない限り、ちょっと難しそうだ。





Posted at 2019/06/01 22:55:38 | コメント(0) | トラックバック(0) | 医学・医療 | 日記
2019年04月08日 イイね!

サインバルタ


 うつ病治療薬のサインバルタは糖尿病や慢性腰痛の痛みの治療にも用いられるようになっている。

 比較的詳しくわかり易い説明が以下にある。

https://www.data-index.co.jp/knowledge/detail4-4.html

 要はセロトニンとノルアドレナリンを増やすことで心の働きが正常化するのと同じしくみで働きが悪くなった痛みを抑える神経の働きも正常化させられると言うことだ。

 副作用が強く出るケースではうまく行かないが、少しずつ増やして副作用を避けつつ痛覚抑制の効果を得ようとする。


追記:
 これまでに証拠が見つかっておらず理由が不明なことは存在しないことにしてしまうことがある。
 むち打ち症状で続く痛みなどはその典型で、本人は明らかに痛みを感じているのに「原因はない、気のせいだ」と突き放してしまったり、詐病扱いしたり、精神科送りにしてしまったりもする。
 このために逆に自分が問題患者と取られることを怖れて、交通事故でまだ自身にむち打ち症状の痛みが残っているのに治療を早期に切り上げてしまった医師を知っている。

 しかし、後に研究が進んでエピデンスが得られることがある。あるいは、そもそも専門性の問題で原因を見落とされていることもある。

 痛みの原因がはっきりしなくても痛みがあればそれは解決すべき問題だろう。

 慢性疼痛も原因不明の痛みとされてしまうことがあったが、痛覚抑制神経の問題で起こるものがある事が分かっている。シナプスにおける神経伝達物質の再取り込みを阻害するうつ病治療薬がその症状にも効くため用いられている。ストレスが痛みに関わることもわかっているが、抗うつ薬が処方されてもうつ病であると診断されているわけではない。

Posted at 2019/04/08 10:57:05 | コメント(0) | トラックバック(0) | 医学・医療 | 日記
2018年07月15日 イイね!

医療系求人が出る


 私はネットでいろいろな検索をするが、その結果、よく医療系求人がターゲッティング広告として出てくる。




 m3の医師求人もよく出てくるな。

 医学を学びたい(≠医者になりたい)という人間であったので、何かを間違えば医者という道もあり得たのかも知れないが。

Posted at 2018/07/15 19:09:28 | コメント(0) | トラックバック(0) | 医学・医療 | 日記
2018年06月30日 イイね!

新オレンジプランと日精協

新オレンジプランと日精協
 先日、日本精神病院協会会長の、まさに驚くしかない「残業規制反対」の機関誌オピニオン記事「巻頭言」を紹介した。

 その後、Google のキャッシュを使って削除された様々な「巻頭言」に目を通してみた。

site:http://www.nisseikyo.or.jp/opinion/kantougen/kantougen.php

 ネトウヨ、極右そのもののような、そして問題が指摘される精神病院の現状肯定のための驚くべきオピニオンの数々に驚愕した。

 嫌中嫌韓、歴史修正(捏造)、反マスコミ、反民主、親安倍、「精神科医に拳銃を持たせろ」主張…

 拳銃云々は先日猛抗議を受けたことが報道されてご記憶の方も多いだろう。報道の一例として毎日新聞のものを引用する。

協会機関誌
「精神科医に拳銃持たせて」会長が引用

毎日新聞2018年6月21日 20時52分(最終更新 6月21日 22時26分)

 全国の精神科病院でつくる「日本精神科病院協会」の山崎学会長が、協会の機関誌に「(患者への対応のため)精神科医に拳銃を持たせてくれ」という部下の医師の発言を引用して載せていたことが21日、分かった。患者団体などでつくる「精神科医療の身体拘束を考える会」が問題視する集会を国会内で開催。「日本の精神科医療のトップが患者を危険な存在と差別し、許されない」と批判が出ている。
https://mainichi.jp/articles/20180622/k00/00m/040/095000c



 たしかに精神科医のみならず医療関係者は患者等からの暴力の可能性に晒されており、実際に暴力を受けたものも多いと聞く。しかしながら、欧米のような警備スタッフの採用や護身用のスタンガン所持ならいざ知らず、殺傷性の高い拳銃を持たせろと言う主張は、部下のレポートの引用とは言え、公の場で精神科病院協会の会長が開陳していいものであるはずがない。ただでさえ精神病院は拘束のみならず、ロボトミー手術による問題患者の廃人化というとんでもない歴史があり、暴力や懲罰目的のいわゆる電パチが横行したことなど、密室の中の異常性が指摘されてきたというのに。

 対米追従の戦後右翼とやや異なり、鬼畜米英のような反アングロサクソン色も強い。これが反欧米精神医学とも呼応しているようだ。TPP反対主張でも反アングロサクソン色がにじみ出ていた。

 TPPについては、薬価や医療費高騰など、医療に大きな影響を与える可能性が高いことから医療関係者から反対の声が上がっていたが、山崎氏も民主野田政権の時には、TPP参加を表明した政権を叩きながらTPPの問題点を散々述べていた(TPP参加反対論 「巻頭言」)
 しかし政権交代後、TPP反対を掲げて選挙に臨んだ自民党が手のひらを返してTPPを推進したが、それについては何もふれない。烈火の如く怒らねばならない場面であるのにだ。
 安倍様が前言を翻し何をしようが絶対追従のネトウヨのごときだ。

 のみならず、日本より進んでいる欧米の精神医療を侮蔑するような内容、精神病院への隔離から地域への流れに逆行し、批判の多い日本の精神病院経営、頭抜けて多い病床数と長期入院を擁護するものには、関係者から公式に抗議が行われてすらいた。

日精協誌2012年1月号巻頭言への抗議と質問
東京都地域精神医療業務研究会 代表 飯田文子
http://orifure-net.cocolog-nifty.com/net/2012/02/20121-8d01.html


日本精神科病院会長 山崎學氏文章 (協会誌巻頭言 会長 山崎 學Japan as No.1日精協雑誌 2012 1月号) に対する、「抗議・撤回および公式謝罪要求文」および「公開質問状」
http://www.jngmdp.org/accusation/1273

 もちろん自身も、精神科医である一方、日本の精神疾患患者の病院への隔離によって成り立ってきた民間病院の経営の立場であり、病床数確保は重大事だ。少子化で病床の空き懸念もあり、欧米で進む精神疾患患者の地域ケアはまさに死活問題でもある。

 それでアベ友であるのだろう。日精協は晋精会という安倍晋三後援会を持ち、山崎氏が会長を務めている。

 2015年の厚生省による認知症対策の新オレンジプランでは、それまでのオレンジプランと異なり認知症対策の司令塔として精神科医を入れることが謳われている。そのことで、地域中心を打ち出したオレンジプランから後退し、医療中心の状況に舞い戻ることが懸念されている。

みんなの介護ニュース
第54回 新オレンジプランとは一体何なのか?認知症対策に期待がかかる一方で、「精神科医療との提携」という内容に一抹の不安…
https://www.minnanokaigo.com/news/kaigogaku/no54/

 認知症は広くかかりつけ医が見られるようにしようというもので、精神科は後方支援という位置づけであったのに、安倍政権下での新オレンジプランでは司令塔に格上げされてしまった。詰まるところ、少子高齢化の中で、思春期・青年期対象の医療ではなく高齢認知症患者を精神科のターゲットとするための根回しが行われた結果なのであろう。

 以下はダイヤモンドオンラインからの抜粋引用だ。

「精神科病院」の関与が大きくなった認知症施策
 1月27日に政府が発表した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」のことだ。厚生労働省が2013年度から現在も進めている「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」に代え、この4月から着手する。

(略)

 ところが、柱の2番目「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供」の中で、精神科病院に関わるところが劇的に大変わりしている。7日の当初案が、自民党関係者に説明している間に手が入り、27日の正式文書となった。

 日本の精神科病院は、かねてから諸外国と比べて、その「異常性」は指摘されてきた。ベッド数があまりにも多いことだ。OECD諸国は人口1000人あたり1床以下がほとんどだが、日本は2.8床もある。3倍近い。

 各国ともこの十数年の間に精神科病院のベッド数を減らしてきた。日本だけが突出して高止まりのままだ。全世界の精神科ベッドは約185万。そのうち20%近くが日本にある。


「精神科病院」の関与が大きくなった認知症施策
 家庭や地域に戻すシステムがないため、診療を終えたのに退院しない人が多いからだ。「社会的入院」と言われる。精神障害者の退院後のベッドに認知症高齢者を誘導する病院もあり、全国の精神科病院には、認知症の人が5万3000人もいる。認知症で入院している7万5000人のうち約7割は精神科病院で日々を過ごしている。このような状態に対して、世界保健機関(WHO)は家族や地域での介護態勢を拡充するよう勧告してきた。

 精神科の治療が必要な人と認知症高齢者は、同居家族を悩ます類似した症状が出て来ることがあるが、基本的には異なる対応が求められる。認知症高齢者の中には、一時的に薬剤投与を必要とされることはあるが、長期的に見れば本来の居場所ではない。これが欧米の定説である。

精神科病院で適切な認知症ケアは行えるのか?
 精神科病院では、法律(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)によって入院患者への行動制限が認められている。ベッド上で手足をベルトやひもで固定したり、車椅子に乗っている時に腰をベルトで抑えてしまう。抑制と呼ばれるが、実態は拘束である。

 一方、2000年に始まった介護保険制度では、虐待につながる拘束を禁止しており、原則として「抑制」は認められない。生命にかかわるなど緊急措置として、十分検討されたうえでなら、という例外規定はある。現場では原則論が行き渡り、様々な工夫をすることで拘束を回避する努力が成されている。

 この基本的な認識、取組みの違いは大きい。画一的な処置に走りがちが病院の中で、個別ケアを必要とされる認知症ケアが十分行われるかは疑問視される。

(略)

 欧米諸国では、「生活の場ではない精神科病院での長期入院は、認知症の人への適切な対応ではない」として、退院促進に力を入れてきた。2012年1月に東京で開催された「認知症国家戦略に関する国際政策シンポジウム」で、スウェーデンや英国、オランダなどの関係者がその成果を得々と語った。フランス代表は「今や精神科病院に入院中の認知症高齢者は1000人以下です」と胸を張った。各国とも、どれだけ減らしてきたかを、数字を挙げて説明した。

(略)

正式決定された「新オレンジプラン」は疑問だらけ
 正式決定された27日の新オレンジプランでは、精神科病院は「専門的医療サービスを集中的に提供する場」であり、「慢性の行動・心理症状(BPSD)等においては長期的に専門的な医療サービスが必要」と記す。

 1月7日の当初プランでは、同じ個所で「専門的医療サービスを短期的・集中的に提供する場」であり、「長期的・継続的な生活支援サービスを提供する介護サービス事業所や施設と、適切に役割分担が成されることが望まれる」とある。

 両者の違いは明白だ。7日版にあった「短期的」が27日版では削除。「長期的」なかかわり方も変更された。7日版では、介護サービス事業所や施設に「長期的」生活支援サービスを任せると「役割分担」を提唱していたのに、27日版では、精神科病院の業務として「長期的」を含めた。

 精神科病院は「短期的・集中的」に医療サービスを提供し、生活支援サービスを担う介護事業者が「長期的・継続的」に関わるべき、と7日版ではもっともな住み分けを主張。「医療モデル」を長期的に継続させる27日版。「医療サービス」を終えたら早々に「生活サービス」に切り替えるべきとする7日版。

(略)

 ところが、27日版では、逆に「短期も長期も」精神科病院の出番だと言わんばかり。認知症高齢者の長期入院を受け入れている現状をそのまま肯定した。

 精神科医療の役割を重要視し、より強調するため加筆もされた。7日版で「精神科や老年科等の専門科による、医療の専門性を活かした介護事業所等への後方支援が重要である。」と、「後方支援」を役割とした。

 それが27日版になると「…介護事業所等への後方支援と司令塔機能が重要」と、「司令塔機能」が加わった。後方支援と司令塔では大違いである。文字通り、後ろから支える立場だったのが、指揮命令権まで持つと変わった。医療が介護事業者より優位に立ちかねない表現だ。

 逆に、7日版からの削除もある。精神科病院のあり方に釘を刺すところだ。「精神科医療は、機能や体制が具体的に『見える化』され、地域からみて、一層身近で気軽に頼れるような存在になっていくことが求められる」と願望した。

(略)

なぜ、精神科病院の存在感が高まったのか
 そして決定的な変更もある。7日版で「…精神科病院等からの円滑な退院や在宅復帰を支援する」としていたが、27日版では「医療機関・介護施設等からの退院・退所や在宅復帰を支援する」と変わったことだ。

 精神科病院は退院すべき病院という印象が強かった7日版。欧米並みの基準に近づけようとした表現だ。これに対して、27日版では、介護施設も加えて、一般的な「脱病院・脱施設」へとイメージが拡散してしまった。

 これだけ、書き換えが重なると認知症ケアへの見方も変わらざるを得ない。認知症ケアにとって精神科病院が重要と「納得」させられてしまう。入院を勧められても、疑問を抱かなくなりそうだ。

「時代錯誤も甚だしい」「40年以上前の『恍惚の人(有吉佐和子作)』への逆行」という批判が介護関係者から上がるのも当然だろう。

 では、どうしてこのようなドラスチックな変更が起きたのだろうか。それも、時計の針を逆回転させるような方向に変わったのか。厚労省の担当部局が自らの意志だけで動いたとは思えない。

 ヒントはある。旧オレンジプランのスタート台になった厚労省の認知症リポート、2013年6月18日の「今後の認知症施策の方向性について」に日本精神科病院協会が反論した事件である(詳細は連載第10回)。「精神科病院の関与なくして認知症施策は成り立たない」とする同協会が何らかの「圧力」をかけたと想像するのは容易い。これだけ、精神科病院の存在を高める方向に向かったのだから。

 だが、日本独特の風習である「根回し」を考慮すれば、関連業界団体が7日版の発表前に知らされていないことは考え難い。国会議員からの相当な介入があった、とも言われる。本当だろうか。

 首相が国際会議の場で高らかに宣言した初の国家戦略である。国際公約である。政府首脳の意向が反映されないはずはない。いずれ真相が明らかにされるだろうが、舞台裏での「暗闘」は続きそうだ。
https://diamond.jp/articles/-/66183



 alt
(↑山崎學Facebookページから 安倍総理と肩を組む山崎氏の写真をヘッダー画像に使用している)

 独裁色が強いことが海外からも指摘される安倍政権にすり寄る精神科医が、患者相手に拳銃云々と記述する時点で警戒の目で見られるのは当然のことだ。

 日本精神科病院協会会長として、問題のある数々の「巻頭言」が協会機関誌とは言え巻頭に掲載され続けていた。精神科医療への不信感が高まることにもなりかねない。苦しむ患者に向き合う真っ当な精神科医にしてみればいい迷惑である。

 一体どのようなものが掲載されていたのかについては、ぜひ巻頭言のキャッシュをご覧頂くとよい。
なお、抗議を受けた「Japan as No.1」はここにはないため、こちらから読むとよい。


 


 
Posted at 2018/06/30 09:02:07 | コメント(0) | トラックバック(0) | 医学・医療 | 日記

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