内閣官房参与であった小佐古敏荘東大大学院教授(放射線安全学)が辞任したことが多方面に大きくインパクトを与えた。
・くすぶっていた、文科省が学校施設の運用について外部被曝について年間20mSvを上限とすることについての疑問
・活用されるべきSPEEDIのデータ公開が遅れたことについての疑問
に火を付け、原子力安全委員会という組織の意志決定プロセスの問題も指摘された。
しかし、会見内容だけを見て安易に考えてしまったが、大佐古氏については必ずしも評判の良い学者ではないようだ。今回の辞任についても、政治的な部分もあるとも言われ、菅首相と対立している小沢グループとの関係が指摘されている。政治的な理由でのパフォーマンス会見であったのなら、ちょっと警戒して見る必要がある。
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基本的に、原子力に関わる、いわゆる御用学者である点は見逃せない。東電側に立ち安全だと講演してきた経緯があるとのこと。
わかりやすいこととしては水や牛乳について国の示す規制値は原子力安全委員会の300Bq/kgになったがそれに対して、
「3000Bq/kgに引き上げることを提言」
したことだろう。
と言うのも、牛乳や農産物の規制値は東電の賠償に直結する。賠償額を小さくするには規制値は大きいほどよい。
一方で学校については年間1mSvを主張したとのことだが、学校関係については賠償に影響がほとんど無いと考えられる。これは現在の状況では現実的ではない。
不安を持っている世論をバックに暫定基準に対する主張をすることで対立相手にダメージを与えやすい。また、あきらかに失敗であったと思われるSPEEDIのデータを公表してこなかったことも相手にダメージを与えるには好材料だ。
そうした点を踏まえた辞任会見であったとも考えられる。
一部で指摘されるように、その背景に政治的なものがあるのかもしれない。
少なくとも、過去の彼を見る限り、本物のヒューマニティーに基づいての発言とは信じがたいものがある。
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大佐古氏は、敗訴濃厚な国の原爆症集団訴訟の国側の唯一の証人として証言台に立った人物でもある。
原爆症判定基準の下になっているDS86(原爆による直接被曝による被曝線量の推定方法)が間接被曝を考慮していない点についての質問を受けても、無責任な受け答えしかせず、妥当性を主張したという。
原爆症認定集団訴訟・近畿の公判傍聴日誌⑫
小佐古証人(国側)、「知らない」連発
司法判断への無責任な姿勢を露呈
http://www.tokuoka-miyatake.com/still_crazy/03.html
御用学者という言葉は、ネットではあまりに安易にレッテル張りのために使われているので使いたい言葉ではないのだが、大佐古氏については東大原子力関係学者に多い原子力推進の立場にあったのは間違いないようだ。
そんな彼が参与を辞めたのは、学者の良心やヒューマニズムによるものだったのか、彼の主張が通らないことへの反発だったのか。あるいは原子力安全委員会が『安全』を確保することが出来ない組織であることへの反発だったのか。
取りあえず、20mSv問題が広く認知されたこととSPEEDIのデータが公開されたのは良いことであったと言える。
(引用)
官房長官:「小佐古教授、水規制値は引き上げ提言」と暴露
枝野幸男官房長官は1日の記者会見で、東京電力福島第1原発事故の政府対応を批判して内閣官房参与を辞任した小佐古敏荘(こさこ・としそう)東京大教授が3月、1キログラム当たり放射性ヨウ素300ベクレルとされていた飲料水や牛乳の暫定規制値を、10倍の3000ベクレルに引き上げることを提言していたことを明らかにした。
枝野氏によると、小佐古氏は3月28日、3000ベクレルへの引き上げを求める提言書を、菅直人首相と内閣府の食品安全委員長あてに提出した。しかし、厚生労働省は食品安全委員会と原子力安全委員会の見解に従い、300ベクレルの暫定規制値を維持した。枝野氏は「専門家の意見もいろいろあるなかで、安全性を優先しながらそれぞれ判断している」と強調した。
小佐古氏は辞任の際、小中学校の屋外活動を制限する放射線量の基準を年間1ミリシーベルトに下げるよう主張、20ミリシーベルトとした政府の判断を批判している。枝野氏の「暴露」には、小佐古氏の主張が一貫していないと印象づける狙いもあるようだ。【影山哲也】毎日新聞 2011年5月1日 21時15分(最終更新 5月1日 21時20分)
Posted at 2011/05/03 21:30:24 | |
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