
Twitterを見ているとごく最近、内部被曝を言うものが増えたようだ。
先日取り上げた小出証言(5/23)にあった、東京で1時間息をしていただけで内部被曝が20μSvに達したというものが広く出回ったのかもしれない。
この証言やそれ
以前の同様の講演を見て他人に勧めている同じ人が、共産党が調べた東京都内各地の測定データを
■「これを見て!!!こんなに高いですよ!!!!
http://www.jcptogidan.gr.jp/html/menu5/2011/20110525195904_1.pdf”」
とツイートしている。
どうも
・多摩地区あたりの自治体が線量を測定していないのに「○○市にはほとんど放射性物質は来ていない」
と言っているのに、共産党の調査した線量を見て
・「線量は多摩地区でゼロではない」
から自治体が嘘をついていて(あるいは放置して)、一方で放射性物質が沢山飛んできていると思い込んで(ヒステリックに)ツイートしているようなのだ。
多摩地区の0.01μSv台は自然放射線でいつでも観測される値で、全く問題ない。
(葛飾区では0.3μSv台で少し気になるがそれでもそれほど大きな数値ではない。)
もしかすると事実を誤認させた小出証言の影響がこんな形で現れているのかもしれない。
**
また、この方のリンクをたどってみると、こんなとんでもないブログへ行き着く。
http://utukusinom.exblog.jp/14799929/
シミュレーションの条件(
大量の一定量の放射性物質が出続けている)を無視してドイツの気象台のデータを確実な予測だと思いこみ、その値がどの程度の大きさであるかも充分考えていない。
その上、福島周辺のモニタリングポストの値をならべて「拡散の濃度は変わっていないようです」などとコメントを付けているが、
モニタリングポストは「放射性物質の量」を示しているのではなく空間線量であって、現状では地面に降り積もった放射性物質による放射線の影響を示している(線量率がほぼ半減期に沿って少しずつ下がり続けている)。積もっている放射性物質の量があまり変わらないのだから放射線量もあまり変わるはずがない。
こんなでたらめを、意味が分からない人間がもっともらしく解説してそれが拡散しているのだからおそろしい。パニックになる人間が出るわけだ。
政府や気象庁が正しい情報を出していれば、ある程度こういう陰謀論に基づくでたらめ解説をある程度は防げる。
しかしながら、原発からの放出量が分からない状態で正確なシミュレーションをすることはできない。ドイツ気象台は対岸の火事とおもっているからこんな無理な設定のシミュレーションをできるのだろう。
追記
勢い余ったが、ドイツ気象台のシミュレーションはあるとき一定濃度で放出が起きたときに、その時々の気象条件によってどのように運搬されるかをシミュレートしている。放出濃度は設定されていない。なので、もしまた原発で爆発や大規模なベントが行われたときにどこへ飛ぶかを考えるのには役に立つ。しかしながら、その前提が成り立たないときにはほぼ役に立たない。原発に異変が起きるか各地の線量をみて変化があったときに参考にするといいだろう。)
追記終わり
誤差の大きなSPEEDIのデータをその都度だしていれば、その都度この類のでたらめな解説をするものが現れただろう。おおざっぱな傾向は掴めても数値は全く信用できない。そのうえ甲状腺等価線量と実効線量、空間線量の区別も付かないほとんどの人々にとても出せるものではなかったと思う。
その上、何を出しても信じない人は信じない。もっと悪いんじゃないか、隠しているんじゃないかと疑う。
こうした人たちに何を言っても通じないのだろう。信じたいものしか信じない。強く言っても工作員扱いされるのがオチだ。いくつかのこの手のブログにコメントしたことがあるが、一様に自分が伝えているものを正しいとして聞く耳を持たず、称賛のコメントを寄せるものとデマのピンポンをしあっていたようだ。
**
そのままでは誤解を生むSPEEDIを発表しなかったことと、原発北西部の線量が高いのに「パニックを恐れて」放置したのとは別の話。
これには全く理解ができない。
**
班目委員長の評判が悪いが、ちょっと気の毒でもある。
「いったい何だったのか」=二転三転に困惑の笑み―班目委員長
時事通信 5月26日(木)21時27分配信
「何がどうなっているのか教えてほしい」。東京電力が福島第1原発1号機の海水注入を中断していなかったと訂正したことについて、原子力安全委員会の班目春樹委員長は26日の記者会見で、困惑した表情を浮かべた。
注水中断問題で、政府・東電統合対策室は21日、「班目委員長が再臨界の危険性があると発言した」と発表。委員長の抗議で翌日には訂正するドタバタぶりを見せた。
班目委員長はこの日も、「せめて確認ぐらい取ってほしかった」とこぼしつつ、「訂正されたのでこれ以上申し上げない」と述べるにとどめた。
その混乱の発端となった中断が、なかったとされた。会見で班目委員長は、「すると何が問題なのか。頭の中が、はてなマーク」「本当なんですか」と不思議そうに問い返し、最後には「中断がなかったなら、いったい私は何だったんでしょう」と力なく笑みを浮かべた。
「再臨界の可能性はゼロではない」と言えば、理系でまともな研究経験やデータを扱う経験のある(理系でも口だけ理系の人間は除く)人間なら、「可能性はほとんどゼロ」だということが了解できる。逆に厳密に「再臨界の可能性はゼロである」と言うことは困難であることは当然であることも了解できる。
一般の人と齟齬をきたしやすい部分ではあるが、厳密にものを言おうとすればこうなるのは当然なのだ。
そうした事情があったが、相手が政府関係者でイチかゼロかという情報を欲しがっているのだからそれを踏まえるべきだったかも知れない。それでもゼロかと問われれば「厳密にはゼロではない」と答えるのが研究者だろうが。程度問題であることをうまく説明できればよかった。
しかし、その発言が元で海水注入を止め水素爆発が起きたとか、発言を訂正するとは何事かとさんざん言われたあげく、実は現場の判断で海水注入を止めていなかったことが判明したのだから言われ損である。
**
放射性物質パニックに陥っている前出の方のツイートを見たら奇妙なものがある。
■さっき息子を迎えに山道を下りていたら、大きなアンテナ。ソフトバンクのアンテナ!!! よかった!! これで私のiPhoneから『圏外』の表示が消えます。
と。
放射線は一切ダメでも電磁波は歓迎らしい。
放射線のうち線量計で測っている
ガンマ線って(周波数は違うが)電磁波なんだが。
その事実を知ったら、携帯排斥運動でも始めるのだろうか。
弱い電磁波の生体への影響は今のところほとんど無いとされているが、ゼロではない。
Posted at 2011/05/27 05:58:10 | |
トラックバック(0) |
放射性物質・放射線 | 日記