とある数学者の方が、ネット上で話題になっている
小学校算数のかけ算順序強制問題
(たとえば日本語の順のように単価×数量になってないと丸にならないとする指導)
について、「この問題に違和感を感じるのはわれわれの生活の中に「かけ算に順番がある」として扱う慣習が無いから」だという。
「レシートにも決まった形式がないから見てみろ」という。
これには大変引っかかった。完全な思いこみである。
一般に、日本語で「100円のものが5個で合計500円」という言い方になじんでいるので、単価×数量という順序は分かりやすい。小遣い帳ではそのように書くことも多いかも知れない。人間の認知は、ストーリー性がある方が高まる。
一方、請求書等を調べると、大手のものはことごとく
になっていて、商習慣としてそのように並べることになっているらしい。


Yahooショッピングのサイトでアピカ、コクヨ、日本法令のものが見つかったのでそれを上に示す。他のメーカーのものは私が見た範囲にはなかった。
会計ソフト大手 弥生
常滑市のフォーマット
makeleaps(領収書等のサービス大手)
Web上のエクセルのテンプレートでは単価 数量の順もあるが、誰が製作したか分からないもので、一般性がない。個人等の解説では逆のものも見られるが、大手は明らかに数量 単価の順で一般的なフォーマットとしか考えられない。
明らかに一般的なフォーマットが存在するし、帳簿をつける人間も、フォーマットが決まっている方がいいに決まっている。簿記の世界はフォーマットの世界だ。
簡易な領収書である機械式レシートも基本はこのフォーマットに準じるが、一つのものは数量単価とも省略、複数のものは数量単価共載せるか、単価を省略して数量 合計額の順。
以前、レシートをPCに転記していたことがあるが、その時単価×数量の順ではなくその逆か単価省略になっているなと思ったことがあった。
件の数学者はわれわれの生活の中で掛け算の順序に慣習はないと言ったが、大手の請求書のフォーマットについては立派な慣習だろう。簿記では一般的な順序なのではないだろうか。
要するに、
件の数学者は思いこみで慣習はないと言っているに過ぎなかったようだ。
人間にとっては当たり前の話で、思考言語の文章の順に沿った立式の方が筋道を考えやすいし、一定のフォーマットがあった方が分かりやすい。
おそらく文章の順で立式する指導が過剰に法則化され、指導が行き過ぎてしまったのが、小学校算数のかけ算順序
強制問題であるのだろう。
後者は会計効率を考えれば一定のフォーマットにするのは当然だろう。
現実の世界、実務の世界ではわかりやすさなり効率が優先する。数学的にいくら順序に意味が無いと言ったところで、そんな話を持ちこまれても困惑するだけである。
小学校の算数指導は、はじめて現実の世界と論理の世界のすりあわせを行うものになるのだろう。まずは分かりやすい形で立式指導するのは当然のことだ。その後に順序は人間にとってのわかりやすさのためであって、数学的には意味が無いと理解すればいい。何しろ、相手は掛け算とは何かもよく理解していないのだ。
条件に対して手続きだけを教え込んで【掛け算教育】というわけにも行かない。意味理解があってはじめて目的を達する。子どもが理解しやすい文章から立式すると言うことが必要になる。
面積の求め方には本来順番性はないが、式を覚えるために順番が使われる。掛け算をマスターした後で面積を扱うと思うので、丸暗記したがる子どもには誤解が無いような指導が必要。面積は順番に意味が無いことが分かりやすい。しかし、掛け算の最初で扱うのは可能かどうか。日常を考えればものを数えるやり方がなじみ深いのだろう。ものを扱う場合、【何倍】という考え方がどうしても必要になる。
もちろん、交換法則を理解している場合、文章の通りに立式せよという条件がない限り、かけ算に順番を強制するのは明らかに間違っている。そうした指導が実際に行われているのであれば、そこにこそ問題がある。
かけ算順序強制問題の本質は,数学的には順序に意味は無いと言うことに過ぎないのだが、数学者の発言は現実にも順序に意味が無いと決めつけてしまったところに問題がある。
本人がレシートを見ろと言うが、会計に関しては明らかに順序に慣習がある。しかし、この指摘についてはコメントがない。
これを事実ととらえていないのか、あえて都合の悪い事実を見ないのか。
追記:
その後も現実の計算には教科書にあるような計算の順番はないと明言している。処置なし。
追記ここまで
Posted at 2016/01/29 18:32:08 | |
トラックバック(0) |
ひとりごと | 日記