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2006年03月01日

アクティブ・バイブレーション・キャンセラー(振動低減)

アクティブ・バイブレーション・キャンセラー(振動低減) クルマの振動を積極的に抑え、
乗り心地を改善させるシステムに関する話。

CarView の車種別掲示板を見ると、「乗り心地が悪いので改善したい、どうしたら良いか?」 などという書き込みを見かけることがある。現行BL・BPレガシィが登場した頃には、GT spec B に関する苦情的な書き込みが多かった。そして少々前には、アウトバックの乗り心地が不満だとする書き込みも多く見かけた。

私自身は、それらのレガシィの乗り心地はそんなに悪いとは思わない(※)のだが、乗り心地に関しては、その人の身体的特徴(身長・体重など)や感覚的なものが評価に占める割合も高いと思うので、自分が問題ないからといって他人も問題ないとは言い切れないし、またその逆も真である。

(※)個人的には GDA-CインプレッサWRX のダンパーの突き上げ感の方が、よほど考え物だと思う。

自動車メーカーでは、ユーザーのこうした主観的・感覚的な要素が入ってしまう 「乗り心地」 の熟成について、単にサスペンションだけではなく車両全体として統括的に取り組んでいると思うが、今回紹介する記事は 非自動車メーカーの取り組みである。以下、2006年1月17日付け 日経産業新聞の記事の要約である。

<クルマの振動が1/3に>
◎神鋼電機は、エンジンの振動と逆位相の振動を付加させることによって、
  クルマの振動を1/3以下に抑えるモーター制御システムを開発した。

◎従来、クルマの振動はエンジンマウントなどゴム部品で吸収していたが、
  エンジンの低回転速度域では十分吸収しきれていなかった。

◎そこでエンジンの回転情報をモニターし、車体に直接取り付けたレシプロ
  モーターに逆位相の振動が起こるよう制御。実験では、振動幅が1/3
  (0.03mm)に低減し、さらに車内のこもり音も半分以下に低減したという。

◎現状のモーターユニットは、幅175mm×奥行105mm×高125mm、
  重さは 5kg。将来は容積を1/3、重さを半分に小型化することを検討する。

なるほど。「エンジン振動と逆位相の振動を意図的に付加」 することによって、お互いの振動がキャンセルし合い、結果として低振動化を実現するシステムなのだな。うむ。確かに理論上はそうだ。だが、これはまったくの私見だが、実用化は極めて難しいと思うぞ。

実用化が困難だと私が思っている主な理由は、「応答性」 と 「過渡特性」 に課題があると考えられるからだ。起振源(エンジンの振動、振動の大元)に対し、寸分の遅れもなく、正確な逆波形を発生させなければならない。「元波形を拾い(センシング)→それと逆位相の波形を演算し→モーターに指示を出す」 という処理を極めて高速に、しかも正確にリアルタイムで実現させなければならない。この 「応答性」 の確保が、まず第一のハードルではないかと思う。

第二の 「過渡特性」 については、要するに振動は一定ではなく、走行状態 (路面の状態やアクセル・ブレーキ・ステアリングの操作) に応じて常に変化し続けている、ということだ。クルマが動いている以上、振動の波形が一定値だったり一定周期であることはほとんどなく、常に過渡状態にある。そうした振動の過渡状態にリアルタイムで追従できるシステムでなければ、実用上は成り立たないと思うのだ。これが第二のハードルであると考える。

オーディオの世界ではこうした理論は一部商品化されていて、例えば 「アクティブ・ノイズ・キャンセラー」 などという名前でヘッドホンなどに搭載されている。ところが実は、それに先立つこと十数年、クルマの世界で こうした 「アクティブ・ノイズ・キャンセラー」 が採用されたことがある。私の記憶によれば、日産ブルーバードが車内騒音(こもり音)を低減するために採用していたハズだ。

だが、毒には毒をもって制する・・・つまり、ノイズには(逆位相の)ノイズを合成してキャンセルさせる・・・というような手法は今日では廃れている。音源であるエンジン自体が騒音を出さないように改良され、いわゆる 「源流対策」 が進んだためである。

その時代のブルーバードには 「スーパーソニック・サスペンション」 なるシステムも導入されていた。私の記憶によれば、超音波で路面の凹凸を感知し、その凹凸に応じてダンパーの減衰力特性をソフト/ハードなどと切り換える電子制御サスペンションの 「ハシリ」 だったと思う。だが、車体やサスペンション構造自体の高性能化により、こうした電子制御サスペンションの類は今日では息を潜めている。

こうした過去のクルマの技術史の流れを当てはめて考えると、今回紹介した記事の 「アクティブ・バイブレーション・キャンセラー」 についても、要するにそのようなデバイスが製品として完成する頃には、すでにエンジンや車体やマウントといった周辺部品自体も技術的に進歩を遂げてしまっていて、こうしたデバイス (振動低減システム) に頼らずとも低振動化を実現しているのではないか?と私には思えてならない。

アイディア(開発テーマ)としては良いが、それが実用化される頃には、(克服したい根源の) 課題も正攻法で克服されているような気がする。さらに付け加えるとするならば、コスト的にも厳しいだろう、というのが、記事を読んだ私の素直な感想である。
ブログ一覧 | 【クルマ関係(スバル以外)】 | クルマ
Posted at 2006/03/03 01:44:50

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この記事へのコメント

2006年3月3日 23:52
確かニッサン・ブルは室内騒音の逆位相スピーカーでのキャンセルでした。今のインスパイアは、確かエンジンの6気筒→3気筒切り替えで、3気筒時にエンジン振動メインの逆位相スピーカーを使っていますね。前記のは単にマイク&スピーカーでしたが、後者はエンジンECUとも協調制御されているそうです。
エンジン振動に対しては今後も使われるかも。室内騒音全体ではちょっと難しいですよね。
コメントへの返答
2006年3月4日 0:29
補足的な詳細コメントありがとうございます。

う~ん。対エンジン振動装置としては、まだ芽が出る余地がありますか。ホンダの場合は事情が少々特殊ですが、確かにECUとの協調制御を採ればデバイスとしては有効かも(コストの面では依然厳しいでしょうけど)。

汎用ノイズキャンセラとしては、私見ですが(単に消す音だけでなく)積極的に残す音、という音場チューニング(音造り、味付け)用デバイスとして活用できなければ価値が低いかも。
2006年3月12日 0:11
この手のキャンセラーは、大概テストベッド上で一定条件で回るエンジンやノイズをどう低減できたかでその効果を宣伝する向きがありますが、実際の非定常状態での作動は困難を極めますよね。おっしゃる通りこの方式では物にならないと思います。

類似のアクティブコントロール物で唯一見込みがありそうなものと見込んでいるのが、こちらのBOSEのアクティブサスペンションです。たぶんご存知でしょうが、、、、
http://www.bose.co.jp/auto/innovations/suspension.html

こいつのすばらしいところは、アクチュエーターが、発電機を兼ねていて(たぶんセンサーの一部も兼ねていると思われる)、制御に必要なパワーのかなりの部分を自給自足してしまうところです。

これに類似の方式で、エンジンマウントを作れば、BOSEさんなら、簡単に作ってしまいそうです。おそらく当のBOSEもそのような、ちっちゃい目的にこれを使おうとは思わないとでしょうけど。
コメントへの返答
2006年3月12日 0:59
コメントありがとうございます。

>アクティブキャンセラーの類
ベンチテストは重要ですが、それだけではクルマの評価にはなりませんから、やはり実車での試験(見通し)を経ないことには苦しいでしょうね。

>BOSEのアクティブサスペンション
あぁ、ありましたねぇ。リニア電磁モーターから回生電流が流れることもあるようで、見かけの割に低消費電力のようですね。ムービーを見る限りでは完成度は高そうですが、コストが最大のネックでしょうか。

聞くところによると、走行時の路面振動のうち、人間が不快に感じる周波数帯は低域(数十Hz~)だそうですから、仮にBOSEのシステムをエンジンマウント系に応用する場合は高周波数帯(~数万Hz)の振動にも追従しきれるのかな?という気はします。

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