KYBの油圧式シザースジャッキを簡易オーバーホールしました。2002年頃から使い始めて、今年でちょうど20年になります。
若干のオイル漏れが生じ始めていたタイミングでしたので、大事に至る前にO/Hできて良かった。今回はその備忘録ブログの「後編」です。
<関連ブログ>
◎前編(2022年06月07日付けブログ)は →
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<関連パーツレビュー>
◎KYB油圧式シザーズジャッキ(型式:800K) →
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◎KYB互換オーバーホールキット(作動油付き) →
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■内部の観察(漏れ原因の確認)
ジャッキ本体から「若干」ではあっても作動オイルが漏れ出る(ことがある)…ということは、何か原因があるはず。各部の現状を観察していきます。
まず作動油そのものについては、意外や意外、約20年が経過しようとしているにも関わらず、目立った汚れ(変色)はありません。思いのほか劣化していなかったな…というのが感想です。そしてまた、油中に混入異物も確認されませんでした。
<↓次にピストン(ラム)をチェック。外周面にも目立ったキズは見受けられない>
油圧を受けて上昇/下降するピストン(ラム)も観察しましたが、こちらも目立ったキズは見受けられませんでした。ならば…ということで、オイルを吸い取ってシリンダの内部を観察します。
<↓作動油を吸い取ってシリンダの内壁全体を確認すると、赤丸で囲った部分に違和感あり>
上の画像に示す通り、シリンダ内壁の上側にサビのように見える変色痕(斑点)があることが予想外でしたが(作動油がキレイだったので)、それよりもさらに違和感のある部分(赤丸印のところ)を確認できました。
<↓抜き取ったバックアップリング。これが破損していた>
違和感の正体は、破損したバックアップリングの破片でした。シリンダの溝から内周方向にハミ出て、摺動方向(上下方向)に噛み込み変形を起こしたような状態となっていました。
バックアップリングは後述するように、シリンダ内の同じ溝の中にO-リングと隣り合うように装填される(O-リングよりも上方に位置する)のですが、このバックアップリングの変形・破損により、結果として作動油のリークに至ったのだと考えました。
# オイル漏れの原因がハッキリして良かった。
# 原因不明のままO/Hしても心配は残るところだったので。
なおO-リングについては、目立ったキズはありませんでした。
<↓O-リング自体にはキズはないものの、やや膨潤気味に感じられました(ので要交換)>
■圧抜き弁のO-リング交換
引き続き、圧抜き弁のO-リング交換作業に移ります。圧抜き弁を反時計回りに回していくと、弁そのものが(O-リングもろとも)抜き取れます。
<↓圧抜き弁。このO-リングは小さいながらも、その役割は重要>
圧抜き弁のO-リングは、ねじ部の外側の溝に位置しています。古いO-リングを抜き取る際には、手でつまんで楕円形に変形させながら浮いた部分を引っ張れば良いのですが、新品のO-リングを装填するときには注意が必要です。
上の画像にある通り、装填すべき位置は「ねじ部」を乗り越えた先にあるため、ねじ部の山/谷でO-リングをキズ付けないように配慮する必要があるからです。新品に交換するのにキズ物にしてしまっては意味がない。
そこで活用するのが「鉛筆キャップ」です。
百円均一ショップなどで売っています。
この鉛筆キャップを、圧抜き弁のねじ側に丸ごと被せるようにあてがって、O-リング挿入時の「ガイド」とすれば良いのです。以下の画像は、その工程の説明図です。
<↓鉛筆キャップを圧抜き弁に被せれば、O-リングをねじ山でキズ付けることなく装填が可能に>
もちろん、装填する際には あらかじめO-リングの表面にオイルを塗布して「滑りを良くしておく措置」は必要です。
■バックアップリングとO-リングの装填
話をシリンダ側に戻します。古いバックアップリング(破損劣化品)とO-リング(膨潤の懸念あり品)を取り出したあとは、それぞれ新品を装填することになるのですが、その前にシリンダ底に異物(金属粉や摩耗粉、ホコリなど)が無いかどうかを確認します。
<↓この時点ではパーツクリーナを使用しても問題ない>
シリンダ内壁の変色痕(斑点)が気になりましたが、あくまで触診ではありますが、手で触れてみて引っかかりやザラつき感は無いため、洗浄だけしてそのまま「再組み」することにしました。
斑点を落とすべく、「粒度の細かなペーパーでやすりがけする」ことも一瞬だけ考えたのですが、「ヘタに真円度を崩してしまって余計にオイル滲みの原因(になるかもしれないリスク)を増やす」よりも、「洗浄だけしてそのまま再組み」する方針を選択した次第です。
(もしもそれで不都合が生じたなら、またO/Hすれば良いや…ということで。)
<↓外周りともども、シリンダ内壁を洗浄。溝にバリやカエリが無いことも確認済み>
交換すべき新品は、バックアップリングもO-リングも、どちらも同じ一つの溝に装填しますが、必ずバックアップリング(白色)の方がO-リング(黒色)よりも上に位置するようにします。
その際、先にバックアップリング(白色)から溝に入れた方が無難です(自由に変形するゴム製のO-リングよりも、硬めで破損に弱いバックアップリングを先に装填した方が自由度が高い=苦労しないため)。
<↓先にバックアップリング(白色)を装填。その際、合い口の重なりが逆転していないことに注意>
バックアップリングを装填する際には、合い口(テーパー状の斜めストレートカット)がひっくり返っていない(=順接になっている)ことを確認します。確認できたら、やはりあらかじめオイルを塗布したO-リングを、このバックアップリングの「下」に装填します。
<↓両者は同じ一つの溝に装填しますが、並び順には指定があります>
O-リング装填後も、よじれや変形など(不均一な状態)が無いことを確認します。
なお記載は省きますが、ポンプ室(圧抜き弁の先、シリンダの手前)のO-リングやバックアップリングについても(外径が小さいだけで注意点は)同様です。
■作動油の交換など
劣化部品の新品化と各部の洗浄を済ませたのち、元の状態へと組み立て直します。
<↓パンタグラフ部分(ピストン側)をシリンダ部分(基台側)に組み付けているところ>
<↓(参考)パンタグラフのストレートピンに銅系潤滑剤を塗布しているところ>
オイルタンクのゴム栓を取り外し、新しい作動油を注入します。ヤフオク!出品者様によると、同梱品は約110ccで、これはO/H 2回分に相当するとのこと。なので、封入袋の約半分を目安にしながらタンクに充填します。
<↓オイルタンクのゴム栓を抜き取ります>
<↓作動油は出光興産の油圧機器用で粘度32とのこと(KYB指定の一般油圧作動油ISO VG22~46に準拠)>
オイル補充後、ジャッキをストロークアップ/ダウンさせながら圧抜き弁で調圧してエア抜き(回路内の残留エアをオイルタンク側へ追いやる)します。ジャッキハンドル操作の1回目ですぐにジャッキアップする(反応する)ことを確認後、静的荷重を与えて保持能力が発揮されることを念押し確認します。
<↓実際に車両をジャッキさせた状態で放置し、その位置で姿勢保持できることをしっかりと確認します>
私の場合、エクシーガのフロントジャッキポイントでジャッキアップ後、少なくとも30分間以上の安定保持が可能であることを目安としてOK判断しました。
以上がKYBの油圧式シザースジャッキのオーバーホール作業の概要です。O/Hの要否は、使用状態や頻度に依存するので何とも言えませんが、少なくとも
・昇降ハンドルを操作しても、なかなかジャッキアップしなくなった
・1回のハンドル操作で上昇するストローク量が減った(回数を要する)
・本体からのオイル滲みなどが現れた
といった兆候や現象を認知したなら、「早めのO/Hを行って安心する」のが良いでしょうね。この記事が、多少なりとも参考になれば幸いです。
Posted at 2022/06/08 23:14:37 | |
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