![[MPV・ターボ] 試乗記&雑感(その2・走行性) [MPV・ターボ] 試乗記&雑感(その2・走行性)](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/carlife/images/UserDiary/1903155/p1m.jpg?ct=cf90bfc354f2)
BGレガシィの乗り換え候補として、
マツダの新型MPV(ターボ)に試乗してきたので、
その様子を 5回に分けて報告する。
今回は(その2・走行性)である。
◎参考;
[MPV・ターボ] 試乗記&雑感(その1・接客編) は →
こちら。
試乗車は 23T(2.3リッターターボ) の FF で、ボディカラーはカッパーレッド。本当は 4WD・ターボ を試乗したかったのだが、あいにくこの営業所には 4WD の試乗車は無いとのこと。「他の営業所に 4WD の試乗車があれば直接そこに伺いますので、もしありましたら場所を教えていただけますか?」 と尋ねたみたが、どうやら 4WD 自体、試乗車としてナンバーを取る予定は無いらしい(※後述3)。
私はあらかじめ、いっしょに来店した知人全員を乗せての試乗を申し込んでいた。いわゆるミニバンでは、購入後に多人数(6~7人)で乗車する機会も (少ないとはいえ) あるだろうから、MPV の乗車定員である 8名フル乗車での試乗はムリだとしても、知人 5人全員が乗った状態での走行フィーリングを確かめたかったのである (→ 実際には、セールスマンも含めて 6人乗車での試乗となる)。これは、以前三菱でランエボ・ワゴンに試乗したとき、リヤシートにも人を乗せた 5名乗車状態で試乗したときと同様の考え (→
こちら) に基づくものだ。ミニバンであるからこそ、
人を乗せたときと 乗せない時の走行性能のギャップは小さくあるべき だと思う。
知人をセカンドシートとサードシートに乗せ、セールスマンには助手席に乗っていただき、私は運転席に乗り込む。着座位置(ヒップポイント)は高い。が、何と!・・・私の体格では、
ボンネットの先端が見えなかった。外から MPV を見たとき、エンジンルームを含むフロント周りには結構なボリュームがあると認識していたのだが、いざ運転席に座ってみると、まさかボンネットの見切りができないとは思わなかった。やはり、カタログを眺めているだけでは分からないことは あるものだ。
シートポジションを合わせてベルトを締め、ステアリングや左右のミラー・ルームミラーを調整する。デザインやコストを重視したモデルでは、ミラーの面積が小さくて後方確認しづらい場合もあるが、MPV の場合は視認性に問題はなかった。念のため、助手席のセールスマンに何か操作上の注意点があるかどうか聞いておく。パーキングレバーが足踏み式 (ブレーキONでも踏み、ブレーキOFF(リリース)でも踏むタイプ) であることの説明を受けた程度で、あとは試乗コースの確認を少々。さぁ、準備ができたので出発だ。
N レンジから D レンジにセレクトする。
N→D セレクトショックは感じられなかった。
(注 :
すでに私なりの走行性チェックは始まっている。)
車種によっては、N→D へとセレクトしたとき、車体に一瞬だけ ”コツン” という軽微なショックを伴うことがある。特に、ATF 温度が低いときに現れる傾向があると思う。もしも試乗時にセレクトショックが感じられたなら、冬場の冷えた状態 (朝一番の始動直後など) ではもっとショックが大きく出てしまう恐れがあるだろう。MPV では試乗時には水温計の針がすでに上がっていたので、暖機されて ATF 温度も十分高くなっていたこともあってか、そのようなセレクトショックは感じられなかったというワケだ。ちなみに、家にある GDA-Cインプレッサ(WRX の AT車)では冷態始動時の N→D セレクトショックは残念ながら大きい方だと思う (ATF が温まった状態では不快なショックはありませんが)。
ディーラーを出て、セールスマンの指示にしたがって試乗コースを進む。
停止状態からの発進では、変な飛び出し感 (アクセル開度が小さい領域で、意図的に車輌が前に進むように味付けされたスロットル特性) もなく、運転はしやすいと感じた。もしも飛び出し感があれば、車庫入れなどの微速前進や後退の際、ギクシャクしてしまう恐れがあるが、その心配はないようだ。
まずはアクセルをゆっくりと開いていく(開度:1/8~2/8程度・・・あくまで感覚的なものですが)。MPV は D レンジのままであっても、ギヤ段 (いま何速に入っているのか) の表示が出る。レガシィやインプレッサでは、スポーツシフト(マニュアルモード)時のみしかギヤ段が表示されず、ユーザーの中にはギヤポジションメータを自作し追加する人もいるほどだが、MPV では
いま何速で走っているかの情報が常に得られるので親切 だと感じた。その反面、肝心のマニュアルモードでは
シフトアップ/ダウンが可能な状態が表示されないのは不親切 である(※後述4)。
1→2→3→4速とオートアップしたところで、前方が赤信号になったので軽くブレーキング。
オートダウンでは、ギヤポジションメータは 4→3→1速と表示された。この時点までで、
◎発進はスムーズ
◎アクセル低開度での加速はなめらか(変速ショックもごくわずか)
◎シフトスケジュール(ギヤのステップ比と変速タイミング)に違和感なし(※後述5)
◎ブレーキのタッチは良い
ということが確認できた。ここまでは大変好印象。
減速時に2速が表示されないのは、AT の多板クラッチの油圧制御上、そのように表示されているのだと思う。
次はアクセルの踏み込みをやや強めて発進してみる(開度:2/8~3/8程度・・・あくまで感覚的なものですが)。なめらかさは変わらず、車速 40[km/h] +αで すでに 4速に入っている。先ほどの場合と合わせ、車速が低いうちからシフトアップが早め早めに実行されるような印象を受けた。つまり、アクセル開度が小さい(踏み込みが浅い)領域では、積極的にシフトアップさせてエンジン回転速度[rpm] を低く保ち、燃費を稼ぐような AT 制御となっているように感じられたのだ。私が MVP の 6速AT は現代的だな、と思った理由は、こうした点によるものだ。ただし、今回の試乗中に 5速以上にシフトアップされることは 1度も無かった。5~6速に入ることのできる車速(しきい値)は、結構高いと予想される。恐らく 6速はクルージングメインのギヤ段なのかもしれない。
さて次に確認したのは、加速応答性だ。一定速度を保った状態からのアクセル踏み増しで、どのような加速をするかを試してみる。助手席のセールスマンは、しきりに 「交通量が少なくなれば、アクセルを踏んでターボの走りを確認できますよ!」 と勧めてきたのだが、正直に言って いま私が見たいのは中間加速性能だ。単純にアクセルを踏んづけてエンジンを高回転まで回したときの加速を見たいワケではない。それでなくても、試乗しているコースは片道1車線で、雨天で交通量もまだ多いのだから。
街中で多用すると思われる車速 30~50[km/h] からの加速を、アクセル踏み増し量を変えながら、繰り返し試してみる。アクセルの踏み増し加減によっては、もちろんそのまま加速することもキックダウンを伴うこともある。が、いずれの場合も動力性能に不満を感じることはなかった。変速ショックもなめらかであった。そういういう意味では、
運転していて疲れにくい と思う。ミニバンというカテゴリーに限れば、最大トルク 35.7[kg・m] の恩恵により 車重 1.8[トン] クラスの MPV が
軽々と走れる ことは驚きに値すると言えるかもしれない。ただし、私の普段のアシはターボのレガシィ(MT、34.5[kg・m])やターボのインプレッサ(AT、34.0[kg・m])であり、車重も 1.4~1.5[トン] クラスであることからすれば、MPV の絶対的な動力性能は驚異的なほどではないと感じた。
試乗コースも終わりに近づいてきたので、雪道での発進を想定した 2速発進が可能かどうか試してみた。他メーカーでは 「スノースイッチ」 とか 「2速ホールドSW」 などと呼ばれるスイッチを押す必要があるが、MPV で 2速発進するためには、単にマニュアルモードにしてセレクトレバーを手前に引くだけの簡単さで済む。つまり信号待ちなどの停車中であっても、セレクトレバーのマニュアル操作により発進時の 2速指定ができるのだ(GDA-Cインプレッサの WRX-AT では、マニュアルモードのみでは停止時は 1速固定になる)。なお今回は天候や交通などの事情により試せなかったが、同乗していただいたセールスマンによると、飛びシフト(セレクトレバーのダブルクリック操作により、4→2速ダウンシフトや 3→5速アップシフトなど)も行えるそうである。
以上、アクセルを深く踏み込んだ状態を持続しての試乗はできなかったが、
実用域での動力性能は十分でスムーズ だと思う。車重を感じさせず、ブレーキの効きも良かった。だが個人的には、エンジンよりもむしろ
6速AT の出来映え (シフトスケジュールや、変速ショックと応答性の両立) の方が
現代的にまとめられている と感じた。これならば、多人数を荷物とともに乗せ(載せ)ても大きな不満は出ないだろう。
ただし、以上は FF での話であって、車重が 110[kg] ほど重くなる 4WD の場合は不明である。ターボの場合、FF も 4WD も 6速AT のギヤ比がまったく変わっていないからである。このへんは、エンジンばかりかグレードによってもギヤ比を変えてくる富士重工業と異なるところだろう。
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(※後述3) : 試乗車は FF のみ
後日、念のためマツダの公式 WEB サイトで試乗可能な MPV のリストを確認してみたところ、この地域では確かに FF モデルだけしか用意されていなかった(NA と ターボはどちらもある)。4WD は この 4月から追加発売されたばかりなので、単に生産→配車が間に合わなかっただけの可能性も考えられる。だが通常は、たとえまったくのブランニューモデルであっても、販社に行き渡るぶんの試乗車だけはメーカーで先行生産しておくものだから、MPV の場合、試乗車には意図的に
車重の軽い FF モデルしか用意
しない 方針だったとも考えられる(あるいは、富士重工業とは異なり、マツダでは 4WD は主力モデルと見なされていないのかもしれない)。
(※後述4) : マニュアルモードで シフトアップ/ダウン の許可表示がない
スバル車では、例えば 3速で走行中、4速にシフトアップ可能な速度に達したら、インパネに 「↑」 の表示が点灯する。同様に、例えば 3速から 2速へのシフトダウンが (オーバーレブ無しに) 可能な速度に下がったら、「↓」 の表示が点灯する。MPV では、変速許可速度に達したことを運転手に知らせるインジケーターが備わっていないため、燃費を稼ごうと思って 4速から 5速にアニュアルシフトしようと思っても、制御ユニットがそれを受け入れてくれない場合もある。要するに、マニュアルモードで走らせる際には、自分で車速と (それに応じてセレクト可能な) ギヤ段との関係を体感的に把握しておく必要がある (ので不便だと感じた)。
(※後述5) : シフトスケジュールに違和感なし
Dレンジにて走行中、車速が上がって自動でシフトアップしていくとき、自分で (アクセルの踏み具合から) 想像する変速タイミングと、インパネ上に表示されるギヤ段の変速タイミングに、大きな隔(へだ)たりが無いということ。例えば GDA-Cインプレッサの場合、1→2変速 と 3→4変速 のタイミングは引っ張り気味になる (なかなか変速しない) が、2→3変速だけは短い間隔で変速してしまう (2速に入ったと思ったらすぐに3速になる) ので今なお違和感がある。MPV は、ギヤのステップ比(変速の際のギヤ比の変化率)の関係もあってか、そのような違和感は感じられなかった。
[MPV・ターボ] 試乗記&雑感(その3・快適性、安全性) に続く。