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2005年07月15日

JARI の新テストコース(城里テストセンター)・後編

JARI の新テストコース(城里テストセンター)・後編 昨日(2005年7月14日付けのブログ)の続編である。

(参考)
前編は → こちら

JARI ・新テストコース(城里テストセンター)は、JARI ・旧テストコース(現つくば市、旧谷田部町)上を「つくばエクスプレス」が通過するため、移転建設されたものである。旧テストコース同様に一周5.5kmの高速周回路を踏襲することが決定していたが、「自動車技術・2005年No.7(Vol.59)」によると、その建設には幾多の困難が待ち受けていたことが読み取れる。以下、その要約である。

候補地は敷地面積304haを確保していたものの、福島県南部を起点として筑波山まで連なる「八溝(やみぞ)山系」に属する山岳地帯で、標高は100~200mで複雑に入り組んでいた。事前調査の結果、次の特徴(問題)があることが判明した。

◎大規模な断層は無いが、頁岩が入った砂岩が多く、一部に粘土化した破砕帯がある。
◎東から西方向への「流れ盤(傾斜した地盤により動く危険性がある)」が多く存在する。

そこで、第一段階として次のような検討が行われた。
  (1).「周回路の片側は切土、他方は盛土」となるが、盛土盤が流動するようなコース配置を避ける。
  (2).周回路を横断してしまうような段差が生じる箇所を、極力少なくする。
  (3).周辺の建築物(民家や公共施設)、あるいは送電線からの距離を検討。
  (4).朝夕の時間帯に、ドライバーの視界に太陽光線が直撃するようなコースレイアウトを避ける。
  (5).用地買収に問題が発生しないこと。

その結果、地形を考慮しないで配置されていた原案に対し、コース全体を北へ90m、西へ70m移動させた上で、直線部の方位を真北から反時計回りに31°回転させた配置がベストであると修正された。次に第二段階として、現地の測量を実施。得られたデータを基に1/200の平面図を作成し、微調整が加えられた。
  (6).基本レイアウトから複数のコースレイアウト案を出し、それぞれについて「切り盛り境」の
    総延長が最短となるようなものを選定=地形から判断したベストレイアウトを決める。
  (7).ただし、一つの「切り盛り境」が試験路内で長く続くような配置案は避ける。

結果、1次修正案からさらに北側に10mシフトすることとなった。この時点で、高速周回路上の切り盛り境の数は54ヶ所(計算上、102m進むごとに境が出る)、最大盛土高さが60mとなったという。その後、次の検討を加えて工事が着工された。
  ・安定した切土盤が多いエリアに高速周回路を設置。
  ・総合試験路や低μ路なども、深い谷や高い山を避けて配置。
  ・各試験路に遮蔽性を持たせる。具体的には高速周回路の標高を154mとし、
   外周路はそれより5m低く設定。特殊試験路も互いに1~2mの高低差を設けた。

ここまでを読むと、詳細な現地測量だけでなく、いかにそのデータを多角的にとらえた事前検討が重要であるのかがうかがい知ることができる。テストコースは、単に山を切り出して谷を埋めるだけでは、決してできないのだ。緻密な計算の上に成り立っていたのだ。それが分かっただけでも、コースレイアウトの奥の深さが垣間見えたような気がした。

話が少々それるが、自動車レースの最高峰・F1のファンなどは、時々「オレだったら、こんなコースを設計するぞ。鈴鹿でもなく、モナコでもなく、こ~んな感じのカーブがあって、ここはシケインで。」などと、脳内で仮想のF1グランプリ用のコースレイアウトを造り上げることがあるが、上記のようなJARI のテストコース建設過程を知ったならば、おいそれと「オレだったら・・・」などとコースレイアウトを安易に考えることはできなくなるだろう。

さて実際には、上記の検討に加えて、さらに忘れてならない課題がある。それは、排水処理と地盤沈下の抑制である。一度地盤沈下が起こってしまうと、容易には補修はできず、仮に補修できたとしてもモグラたたき的な対処を余儀なくされることが多いという。以下はその後の工事スペックである。

  ・舗装基盤(路床)を盤石とさせるため、バンクの舗装面側に2~3m余計に盛土。
  ・浸透した雨水が、舗装面方向ではなく法面方向に流れるように排水工事を施工。
  ・盛土盤の残留沈下基準を、盛土高さの0.2%以下と定めた(日本のダム工事実績の最小値)。
  ・盛土材として不適な粘性土や風化の進んだ土は、規格外として排除。
  ・盛土材の粒径バランスを均質化(最大粒径30cm以下とし、それ以上は排除)。
  ・「1回の盛土厚30cm、転圧回数6回」を基準とし、品質基準を外れた工事はやり直す。

結局、JARI ・新テストコース(城里テストセンター)は、先行伐採工事1年・造成工事3年・ダンプトラック100台以上・工事従事者500人以上(ピーク時)というハードルを越えて無事に完成された。造成工事完了から14ヶ月経過した時点での沈下量は、最大値で5mmが3ヶ所だけ見られたのみで、その他は当初の期待通りだという。完成するまでの間に動かされた土の総量は、エジプト最大のクフ王のピラミッドの5個分に匹敵するという、このJARI ・新テストコース(城里テストセンター)。今後のモータリゼーションの発展を陰ながら支えていくことだろう。
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Posted at 2005/07/15 01:00:25

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