しばらくの間、寝かせてしまったネタになりますが、今年の1月から準備を開始し、2月に とある実験を行っていました。それは補助灯に関するもので、「LED、HID、ハロゲンの各バルブについて、その特性を数値で比較してみよう」・・・という内容です。
以後、計測器を用いて実際に行った実験について、数回に分けて(抜粋して)ブログアップします。
■フォグランプの表面温度を計測
我が家のエクシーガtS(YA5E型、2012年式、2000ccターボ)を使って、標準装備のHB4型フォグランプユニットのガラスレンズ表面温度を計測します。計測器は、「非接触式の放射温度計」 と 「接触式熱電対(K線)」 という、異なる2つの方式で計ることにします。
どちらも私の手持ちの機材で、特に後者は、以前の愛車・BG型レガシィではフロントデフのギヤオイル(75W-90)の油温計として使っていたもので、それを今回のフォグランプ表面温度計測用に転用します。
<車両情報>
・車両 : スバル・エクシーガtS(YA5E型、2012年式2000ccターボ車、HB4型フォグランプ)
・車載バッテリー : パナソニックCAOS 100D23L(2017年8月6日から使用開始、経過6ヶ月)
<比較対象>
・純正ハロゲンフォグランプHB4(ライン装着品、12V_51W(55W)ホワイト)、Assy部品コード:84501A
・fcl.新型LEDバルブ(ファンレスタイプ、HB4互換、35Wホワイト)、型番:HFLED-S59606S
・fcl.HIDバルブ(超薄型バラストフルキット、HB4互換、35W_6000K)、型番:HFHID-359606S
<↓実験に供試したLEDバルブ(HB4型)>
<↓実験に供試したHIDバーナー(HB4互換)>
<↓実験に供試した純正ハロゲンバルブ(HB4型)>
<計測器具>
・熱電対 : K線、φ1.6(測定範囲 -200℃~+1000℃)
・デジタル温度表示ユニット: TF1(キーエンス、DC12V駆動、熱電対をダイレクトに接続可能)
・放射温度計 : IT-540NH(堀場製作所、測定範囲 -50℃~1000℃、両端レーザーマーカー付き)
<計測モード>
各バルブの昇温&降温特性(※)を把握する。具体的には、消灯からスイッチON(点灯状態)を40分間キープしたとき、および続けて点灯からスイッチOFF(消灯状態)を20分間をキープしたときに、ガラスレンズの表面温度が時間の経過とともにどのように推移するのか、を連続的に計測します。
・昇温特性(熱しやすさ):スイッチONで点灯後、各部の表面温度がほぼ一定になるまでの傾向
・降温特性(冷めやすさ):スイッチOFFで消灯後、各部の表面温度が冷めて落ち着くまでの傾向
「昇温特性40分間+降温特性20分間=トータル60分間」 とした根拠は、プレサーベイにて上り30分間では温度がサチュレートせず微増傾向にあること、逆に下りは比較的短時間で冷えることが分かり、これをモードに反映させたため。
■比較条件の統一化
事前準備として、あらかじめエクシーガの車載バッテリをFULL充電させておきます。また、フォグランプ測温にあたっては、点灯中の車載バッテリーに対する負荷を考慮して「安定化電源」を追加します。車載バッテリーの供給電圧が一定ではない場合、フォグランプの発熱量(つまりは表面温度)も変動してしまうと考えられ、これを避けるため。
<↓あらかじめ車載バッテリはFULL充電させておき、さらに実験中は外部供給電源も印加しておく>
なおフォグランプ点灯時の測温試験中は、環境に配慮して、エンジンを停止した状態で行います(つまり排気ガスを出さずに温度計測を行う)。IG-ON(ACC電源ON)で実施した場合、電気負荷に対する車両保護制御が働いて強制IG-OFFとなってしまうため、エンジン停止かつIG-OFF(ACC電源をONにしない)状態で測温を実施することにします。
(※エクシーガは、IG-OFF状態でもフォグランプの点灯が可能な車種=キーOFF非連動タイプです。)
測温のインターバルは、温度の立ち上がり時は計測ピッチを細かく刻み、時間の経過とともにインターバルも長めに取るようにします。
・昇温特性(ON) : 0~1分までは0.5分間隔、1~10分までは1分間隔、
10~30分は2分間隔、30~40分までは5分間隔で計測。
・降温特性(OFF): 40~41分までは0.5分間隔、41~45分までは1分間隔、
45~60分(終了)までは5分間隔で計測。
■ガラスレンズの表面温度計測風景
フォグランプのガラスレンズの温度計測は、LED、HID、ハロゲンの各バルブとも、外気温度が0℃となる時間帯を狙って計測しました。具体的には2月の朝6時~7時狙いです。
これは、純正ハロゲンバルブからHID、あるいはLEDにアップグレードする際に、積雪地域ではランプユニットに付着する雪の 「解けにくさ」 を懸念する声が聞かれるため、実際の冬場(走行時)の外気温度を模擬する意味を込めてのことです(※東京では事実上、上記がいちばん冷える時間帯、という地域的な制約があることも考慮しています)。
<↓LEDバルブでの、フォグランプユニットのガラスレンズ表面温度計測風景>
<↓放射温度計で測温している状況の例>
<↓HIDバーナーでの計測風景>
<↓純正ハロゲンでの計測風景>
※実際には、接触式熱電対による温度計測も同時進行で実施していますが、今回のブログでは、放射温度計での結果を先に載せます。
■放射温度計での測温結果(@外気温度0℃狙い)
放射温度計の場合、「測定対象物の大きさ(約φ76mm)に対する測定径の比を2倍以上確保する」ことが求められます(取扱説明書より)。そこで、あらかじめ計測エリアがφ30mm程度となるよう、事前にレーザーマーカーでターゲット距離を確認してから現場での計測を行いました。
<↓LED、HID、ハロゲンでの 「フォグランプ(ガラスレンズ部分)」 の表面温度の違い(放射温度計)>
LEDは点灯開始後、約5分で温度上昇が鈍り、推移安定後のガラス表面温度は最大で12℃であった。HIDは点灯開始から約10分間まではハロゲンと同様な温度変化を示したが、それ以降は表面温度は約40℃でサチュレート(飽和)している。最後にハロゲンは、時間の経過とともに なだらかに表面温度が上昇し、40分間で約60℃の上昇幅であった。
<今回の結果>
◎LEDは点灯による温度上昇は約10℃に抑えられており、
その温度に達するまでの時間も短い。
◎HIDは点灯後、ハロゲンとほぼ相似形の温度上昇推移を示すものの、
最高温度で21℃の差がある(ハロゲン:62℃、HID:41℃)。
LEDとの差も大きく、どちらかと言うとハロゲン寄りの温度傾向を示す。
◎ハロゲンは温度がサチュレートするまで、また消灯後に雰囲気温度
まで冷めるまでの時間も長い。
<結論:昇温特性について>
外気温度0℃付近から点灯させた場合、フォグランプのガラスレンズの表面温度として次の結果を得た。LED(14℃)<HID(41℃)<ハロゲン(62℃):非接触式の放射温度計によるエリア計測値(max値)
<結論:降温特性について>
LED、ハロゲン、HIDとも、消灯から約20分間が経過した時点で、ガラス表面温度は外気温度とほぼ等しくなるまで低下した。換言すると、外気温度0℃付近の条件下にて消灯後、安全に作業開始できるまでのガラスレンズの放置時間の目安は、おおよそ次のようになると考える(夏場はさらに時間の延長が必要)。
・LED : 即座に降温
・HID : 約5分間の放置が必要(表面温度が20℃程度になるまでに)
・ハロゲン : 10~15分間の放置が必要(20℃程度になるまでに)
■備考
計測前には、「放射温度計では、果たしてガラスの表面温度を計測可能なのだろうか(ガラスを透過してしまうのではないか)?」 という疑問があった。しかし、製造メーカーの堀場製作所の資料によると、「堀場の放射温度計は2.5μmよりも長い波長の光を用いて計測するため、ガラスの表面温度は計測可能(>要旨)」 ということが分かったため、今回の実験に適用することにした次第。
(出典:「放射温度計のすべて」、2008年12月発行、
http://www.horiba.com/fileadmin/uploads/Process-Environmental/Documents/thermometry.pdf )
次回ブログ(Vol.2)は、熱電対による各部(ガラスレンズだけでなく、LED放熱板なども)の測温結果をごく簡単に載せる予定。
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2018-03-20(Tue.) : 更新
[LED、HID、ハロゲン] Vol.2 フォグランプ構成各部の温度比較(熱電対 編) をアップロードしました。
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Posted at
2018/03/17 05:49:00