昭和61年式・ホンダCBR250Four(現役31年目のワンオーナーバイク)について、「エンジンが始動しない」 というトラブルをDIYで克服するまでの備忘録です。
今回はその4(最終話)・「FTAに沿ってバッテリも交換、完治の巻」 です。
◎「その1」は こちら →
コネクタ清掃とプラグ点検。
◎「その2」は こちら →
プラグ清掃と電気系交換(故障モードFTA)。
◎「その3」は こちら →
根拠を持ってプラグ交換。
■落とし穴の巻
これまでのブログでは、「エンジン始動せず」 という事象をトップに据えたFTAを作成し、故障原因についてのトラブルシューティングを行う様子を紹介しました。要因を潰し込んでいく過程で、最終的に 「点火プラグの劣化」 と 「バッテリ起電力の低下」 の2つが、原因として挙げられることを述べました。
結果として 「点火プラグ」 を4気筒とも新品に交換することで、エンジンは息を吹き返したものの、まだ 「バッテリ」 が未交換であるため様子見を行うこととしていました。当初考えていた、その様子見(余寿命までの確認)の条件を再掲すると、次のようになります。
◎外気温度が 0[℃] 未満(=マイナス温度)でエンジンを初始動する場合は、
ブースターケーブルでエクシーガのバッテリと接続(ジャンピング)させる。
◎走行中は、エンジン回転速度を 6000[rpm] 以下となるように保つ。
自ら決めた、これらの 「しばり事」 は、確かに 「エンジン始動の失敗リスクを避ける」 という点では成功でした。ところが、これは同時に原因究明する点では 「落とし穴」 にもなっていたことが、後から分かったのです。つまり、こういうことです。
(1)外気温度がマイナスのときは、エクシーガのバッテリで始動時の救援をする。
→ 環境条件が悪くなるほど、CBRのバッテリの弱さを
エクシーガのバッテリの強さがカバーすることになる。
逆に言うと、「CBRのバッテリの
真の弱さ(実力値)」 が
発現しにくく(認識されにくく)なってしまう。
具体的なシーンに当てはめて考察してみると、もしもエクシーガの救援バッテリーが存在しなかったら、「外気温度が低くなるとエンジンが始動しにくくなる」 現象が現れることにより、「CBRのバッテリが弱い状態であること」 を知ることができたハズ。
ところが実際には、「外気温度が低くなってもCBRのエンジンが始動する」 ため、果たして 「CBRのバッテリが弱って いない からエンジンが始動できた」 のか、あるいは 「本来はCBRのバッテリが弱って いる のに、エクシーガのバッテリが強いからエンジンが始動できた」 のか、切り分けをできなくしてしまっていた のです。同様に、
(2)走行中は、エンジン回転速度を 6000[rpm] 以下となるように保つ。
→ 高回転域ほど点火プラグを着火させるための要求電圧が高まる
と考えると、実際にエンジンが高回転域までムラなくキレイに
吹け上がるかどうかを試すことで、CBRのバッテリが弱まって
いるかどうかを知ることができたハズ。
ところが実際には、そのような運転条件そのものを避けていたので、バッテリの状態判別が付かなくなってしまっていた のです。リスクを回避するという実用上は正しい措置は、原因を追及するためのトラブルシューティング上では遠回りをする選択肢でもあったのです。
これが、故障原因という真実に近づく際の 「落とし穴」 ・・・の意味なのです。
■困窮の巻
上記2つの措置(この場合は方針でもあります)により、CBR250Fourは、バッテリの実力を露呈することなくエンジン始動できていました。ところが ある日の夜のこと、出先での所用を済ませて帰宅しようとメインキーをひねったところ、ウンともスンとも言いません。IG-ON状態で、ウィンカーもヘッドライトも点きません。
「しまったー!」
「これでは帰宅できない。押し掛けだ!」
夜の22時頃、ダッシュで勢いを付けて押し掛けを試みたものの、さっぱりエンジンがかかりません。ポータブル電源をつないでみても、始動できず。1月末の寒空の中、約30分間、汗だくになりながら押し掛けを試みる男ひとり。だがついに、エンジンが弱々しく、本当に 「息も絶え絶え」 という感じで始動しました。
■2気筒しか点火せず、の巻
押し掛けにより、息も絶え絶えにエンジン始動したものの、タコメータの針は6千rpm~1万2千rpmあたりをハンチングしています(※実際の回転速度は、体感上、おおよそ600rpmくらいの感じ)。その状態でスモールランプは点きますが、ヘッドライトをONにすると瞬時にストールします。そしてまた、押し掛け。
弱々しくエンジンがかかったとき、エキマニに手を触れてみます。CBR250Fourの排気系は、4into1タイプ。各気筒ごとに独立したロングパイプが、エンジン後方で初めて1つに集合する方式です。そのため、シリンダヘッド直後のエキゾーストパイプに触れてみて、表面温度が熱かったら燃焼しているので点火プラグへの着火あり。冷えたままだったら失火している、と判断できます。
<↓4into1方式のCBR250Fourのエキマニ(エキゾーストパイプ)>
※エキマニのサビ取りをして耐熱塗料を塗って、美観向上させたいが・・・。
結果、#1と#4のみ着火。#2と#3の気筒は失火していることが分かりました。しかし、この状態で帰宅するしかありません。交通量の少ない裏通りを選んで、慎重に走らせます。車速は、おおよそ10~20[km/h] くらい。これ以上は、スピードが出ませんでした。
■検証の巻
それでも、何とか無事に自宅まで帰着。家に着くなり、CBRのエンジンを切らずにそのまま不整点火状態をキープさせます。ぜひとも、試したいことがある からです。
<↓息も絶え絶えに、ようやく自宅までたどり着いた瞬間>
推測が正しければ、「この電圧不足の状態を保ったまま、ブースターケーブルでCBRのバッテリにエクシーガのバッテリを接続させれば、印加電圧の上昇により #2と#3の気筒にも火が入るとともに不整爆発も収まるはず。」
<↓結果は、もくろみ通り。
エクシーガのバッテリをつないだ瞬間、復調した>
これにより、エンジン不調の原因は 「CBRの車載バッテリについて、電圧の実効値不足が原因」 であることが明らかとなりました。バッテリ充電器で充電すると、見かけ上、充電率100%まで表示されますが、「起電力(=イザというときの瞬発力)」 に関してはNG だった、ということです。
<↓「おれは・・・・・・反省すると強いぜ・・・」>
私見ですが、バッテリには 「瞬発力」 と 「持続力」 の両方が必要だと思っています。前者はエンジンの冷態始動など大容量が必要なシーンでの性能、後者はその運転を安定的に継続させるための性能、ととらえています。今回のバッテリは、充電により後者の要求性能は補えたものの、前者の要求性能までは回復できなかった(寿命を迎えていた)のだと考えます。
トータルで判断すると、このバッテリは もはや寿命で間違いない、と判断しました。また、今回の 「エンジンがかからない」 という事象に対する原因は、「点火プラグの劣化」 と 「バッテリーの寿命」 の組み合わせによるもので、いわば単独犯ではなく複数犯であった、と最終判断しました。
■バッテリ(YTX9-BS)落札の巻
速攻で、ヤフオク!でバッテリ(型式:○TX-9BS。○部分には、メーカやブランドによってYやXやAなどのアルファベットが入ります)を落札しました。「落札価格+送料」 のトータル金額に加えて、出品者の評価内容も吟味してから入札します。
◎参考データ
<CBR250Four用バッテリ>
・型番 : YTX9-BS(台湾ユアサ)
・落札金額 : 2,970円(税込み)
・送料 : 700円(税込み)
・合計金額 : 3,670円(税込み)
(運送会社:佐川急便)
<↓いろいろ調べた結果、今回も台湾ユアサ製の正規YTX9-BSを落札(寿命を迎えたバッテリと同じ)>
<↓箱に印刷された注意書きの類>
<↓「充電済みのため落札後すぐに使えます」 とありましたが、私は低電圧でフル充電させてから供する>
■バッテリ交換&新旧比較の巻
初期充電(高電圧×急速ではなく、低電圧×ゆっくり、で充電)が済んだら、いよいよバッテリ交換作業に入ります。
<↓点火プラグ(IUH27)に次いでバッテリ(YTX9-BS)も新品交換。バッテリボックスの底面も清掃します>
<↓車載端子(バッテリターミナルとの接続部)も適時、清掃しておきます(左:清掃前、右:清掃後)>
<↓取り外した劣化バッテリと、落札した新品バッテリを並べてみる、の図(左:新品、右:劣化品)>
<↓新旧バッテリの外観比較。基本デザインは同じ(バッテリ背面のステッカーが異なる程度)>
<↓新旧ターミナルボルトの外観比較。可能であれば導通製グリスを塗りたい?ところ(必須ではない)>
<↓新品バッテリをバッテリボックスの中に挿入します>
<↓新品バッテリの筐体に使用開始年月日を記載したテープを貼り、寿命算定時の判断の一助とする>
■完全復調の巻
バッテリを新品化したあとは、細部の状態を確認してエンジンを始動してみます。IG-ONしてセルのスターターボタンを押した瞬間・・・。押した瞬間、本当に押した瞬間から初爆が来てエンジンが力強く始動 しました!いや本当に、タイムラグなく始動する さまと言ったら・・・(驚)。
<↓新品バッテリでのエンジン始動性の素早さを例えると・・・>
ズ キ ュ ウ ウ ゥ ン !
↑ ↑ ↑
セ 初 も
ル 爆 う
押 完
し 爆
|←→|
この間、約0.4秒
(※体感値)
こうして始動性が激烈に改善されたことを確認できたあとは、試走に出ます。試走と言っても、町内を流す程度ですが、「これが 元々のCBRの加速品質 なのだ」 と思い起こすのに十分なものでした。
<↓思わず、のけぞってブラボーと言いたくなるような復調具合。あるいはスゲーッ爽やかな気分だぜ>
<↓完全復調した昭和61年式・MC14型CBR250Four。不調の原因は、点火プラグとバッテリの複合要因>
■まとめ
CBR250Fourに発生した 「エンジンが始動しなくなった」 という事象に対して、
<得られた成果>
(1)吸気系、燃料系、電気系、点火系などという具合に、自分なりに
機能上からFTA(原因究明のための故障解析ツリー)を作成した。
(2)作成したFTAをベースに、原因の潰し込みを行って範囲を狭めていき、
最後は優先順位を決めてトラブルシューティングを実施した。
(3)原因が単独ではなく、「点火プラグの経年劣化」 と 「バッテリの起電力
低下」 という、
組み合わせによる複合要因 であることをつかんだ。
<反省点>
(4)実用上のリスク回避措置は、時として純粋な故障診断を遅らせることがある。
(5)バッテリの寿命(限界)判断には注意が必要であることを、改めて認識した。
↓対応案
(5-1)エンジンスタートから完爆までの時間が、いつもより長引いてきたら要注意。
(5-2)外気温度の低下時(バッテリ起電力も低下する&フリクションも増大
する環境下)に、エンジン始動時間が長くなったと感じたら要注意。
(5-3)アイドリング状態でウィンカーを作動させたとき、ウィンカーの点滅周期に
合わせて電圧計の針が振れたり、ライトの明かりがゆらぐときは要注意。
(5-4)ヘッドライト、ウィンカー(orハザード)、ブレーキランプなど電気負荷を
最大に保った状態でセルスタートさせてみる。そのときの始動性はどうか。
あるいは、電気負荷が軽いときと比較して始動時間が明らかに長引く
(負荷に対する変動率が大きい)ようであれば、耐力低下ありで要注意。
一連のブログをお読みいただき、ありがとうございます。新車購入から31年目を迎えた愛機・ホンダCBR250Fourを、まだまだ大切に使い倒していこうと思います。
物事を知れば知るほど、逆に自分の知識の無さを実感してしまいますが(日々是勉強)、私の体験事実や、体験に基づく考え方などが、皆さんにとって何らかの形で役に立てば幸いです。今後とも、よろしくお願いいたします。