手持ちの測定機材を使って、条件をそろえた上で 「LED、HID、ハロゲンの各バルブについて、その温度特性を数値で定量比較してみよう」・・・という内容のプライベーターブログ・その2です。
今回は、フォグランプのガラスレンズの表面温度、およびライトユニットを構成する各部熱源の温度を、接触式温度センサーの 「熱電対(K線)」 を用いて測定した結果を紹介します。
◎その1 は こちら →
[LED、HID、ハロゲン] Vol.1 フォグランプ表面温度の比較(放射温度計 編)
■熱電対の固定と引き回し
接触式温度センサである熱電対を用いて、物体の表面温度を直接的に計測するためには、計測ターゲットにその先端を貼り付け固定する必要があります。
エクシーガ純正フォグランプのガラスレンズの表面温度を計測するため、熱電対を銀テープで固定します。ただし銀テープの面積をあまり大きく取りすぎると、銀テープ自体がフォグランプの光源を遮蔽する受熱板となってしまう(→測定温度が高めに出てしまう)恐れが出てきます。
そのため銀テープは、熱電対を固定するに足るだけの必要最小面積となるように配慮します。同時に、センサの配線を引き回して固定する際に用いるガムテープも、エクシーガのボディカラーであるWRブルーに近い色の 「青色」 を選択し、可能な限り色温度を合わせる(反射光を含め、考えられうる他の影響をなるべく排除する)よう配慮しておきます。
<↓(左)熱電対K線(アルメル-クロメル)の固定状況 (右)配線もなるべく色温度を合わせておく>
<↓フォグランプ各部の温度計測風景の例。今回、熱電対で同時計測可能なチャンネル数は2ヶ所>
<↓あらかじめ決めておいた計測条件(例:インターバルなど)に沿って、各部の温度を記録していく>
■熱電対によるガラスレンズの表面温度
上記の具合で、エクシーガtSに標準装備のフォグランプについて、「ガラスレンズの表面温度」 をLED、HID、ハロゲンのそれぞれで計測した結果は次の通りです。計測時の外気温度は、いずれも0℃狙いです(実際には-2℃~+2℃)。
<↓熱電対K線による、フォグランプのガラスレンズ表面温度推移の比較(LED、HID、ハロゲン)>
点灯開始後、ガラスレンズの表面温度はLEDが約5分で安定し、HIDは約12分で安定域に入りますが、ハロゲンはサチュレートするまで30分以上を要しています。また、接触式熱電対による測温結果は、非接触式の放射温度計による測温結果(既報)よりも高めに出ています。ただし、各計測点の「高~低」という相対関係(LED<HID<ハロゲンの順に高温となる)は不変です。
熱電対の方が放射温度計よりも高い計測結果となった理由は、「スポットでのセンシング(熱電対)とエリアでのセンシング(放射温度計)」 という違いがあること、「放射温度計では、銀テープとガラスの両方の材質をまたぐ形でのセンシングとなっていること」、「光を透過するガラスよりも、光を透過しない銀テープの方が受熱・蓄熱しやすいこと」 などが挙げられると思います。
# 熱電対と放射温度計のどちらが「正しい/間違い」というよりも、
# LED、HID、ハロゲンのそれぞれについて、「互いに比較土俵を
# 揃えた条件下で」 「計測器ごとに測温結果を相対比較する」、
# というスタンスでデータ解釈したいと思っています。
■各バルブにおける熱源の表面温度について
これまでは、ガラスレンズの表面温度の計測結果を紹介していましたが、LED、HID、ハロゲンはそれぞれ固有の構造・構成を採っていますので、それぞれの方式に固有な熱源を持っています。
そこで、LEDは「放熱板」を、HIDは「バラスト」を、ハロゲンは背面の「樹脂コネクタ」を、それぞれ追加で測温してみます。例えば、LEDは安定した照射特性と長寿命化を目指すために、発光部の温度を下げる代わりにヒートシンクでの放熱が増えているハズです。
もしもヒートシンク(放熱板)での熱量が大きい場合は、バルブに近接している車両部品(例:ウォッシャータンクなどの純正樹脂部品)に対する熱害も懸念されてしまいます。したがって、ガラスレンズ部分 ”以外” の温度レベルを把握しておくこと ”も” 実は重要だ、と思っています。
■LEDの放熱板の温度計測準備と結果
LEDバルブの熱源は、何と言ってもヒートシンクである放熱板です。今回は、何層にも重なっている積層部の中心部分を測温することにします。以下の画像は、熱電対の設置状況です。
<↓熱電対の先端を、放熱板の積層中心(ラジアル方向も板幅の中央)に固定設置して引き回す>
<↓(左)LEDバルブ放熱板に熱電対を設置した全景図 (右)純正フォグランプ筐体に装填した図>
こうして、外気温度0℃狙い(実際には2℃で点灯スタート)でのLEDバルブの各部温度の計測結果をグラフ化したものが、下記です。
<↓LEDバルブの昇温&降温特性。ピンク色のプロットが放熱板温度(ガラスレンズは黄色プロット)>
■HIDのバラストの温度計測準備と結果
HIDの場合は、実はバラストも発熱するのではないか?と推定し、それを検証するため、実際に測温しました。バラストは黒色樹脂で成型されているため、熱電対の固定も(最表面のガムテープを)色温度を合わせる意図で黒色ガムテープを用いています。
<↓バラストへの熱電対固定は、まず銀テープで確実に貼り付けてから、黒色ガムテープで仕上げ>
<↓温度計測にあたって、バラストの設置位置は(現実的なロケーションとして)バンパー裏側とした>
こうして、外気温度0℃狙い(実際には1℃で点灯スタート)でのHIDの各部温度の計測結果をグラフ化したものが、下記です。
<↓HIDの昇温&降温特性。ピンク色のプロットがバラスト表面温度(ガラスレンズは黄色プロット)>
バラストの表面温度は、冬場の外気温度1℃にて21℃まで上昇しました。夏場は外気温が30℃程度になりますので、想像以上に高温になる可能性がある、と思います。耐久信頼性を確保させるという視点からは、バラストは車体振動の影響を受けないように固定するだけでなく、なるべく走行風により冷却されやすい場所を選んで設置した方が良い、ということが測温結果から推定されます。
■ハロゲンの樹脂コネクタの温度計測準備と結果
ハロゲンバルブでは、もちろん発光部(フィラメント)が高熱になりますが、構造的に伝熱するであろう背面(=樹脂コネクタ)にも熱がこもるかも? という懸念が考えられます。ので、背面の樹脂コネクタの温度も計測・検証してみることにします。
<↓HB4ハロゲン球の背面樹脂コネクタの表面温度を計測するため、熱電対をしっかり貼り付ける>
<↓(照射する側ではないため)あまり関係ないが、念のため色温度を合わせたガムテープを使用>
こうして、外気温度0℃狙い(実際には-2℃で点灯スタート)でのハロゲンバルブの各部温度の計測結果をグラフ化したものが、下記です。
<↓ハロゲンでの昇温&降温特性。ピンク色プロットがコネクタ温度(ガラスレンズは黄色プロット)>
ハロゲンバルブ背面の樹脂コネクタ部分は、意外にも50℃超まで達することが分かりました。冬場(外気温度-2℃)で50℃超の値ですから、夏場(外気温度30℃超)では、さらに温度が高くなることは容易に想定されます。
そのため、ハロゲンバルブの脱着作業を行う場合には、ガラスレンズだけでなく、背面のコネクタを形成している樹脂部についても、温度が十分に下がったことを確認してから作業に入るように注意すべきと言えるでしょう。
■計測時の外気温度が変わるとどうなるか?
上記の温度計測は、外気温度0℃時を狙って実施したものですが、測温結果はもちろん外気温度によって左右されます。そこで、DIYプライベーターとしては 「外気温度条件を上下に振った際のデータ」 も検証したくなります。
以下は、外気温度を10℃以上狙いとした場合の計測例です。測温は2月に実施したので、具体的には昼間の14時~15時狙いで計測したデータになります(cf. 外気温度0℃狙い時は、朝6時~7時で計測を実施)。見方としては、「外気温度10℃の差が、物温(の差)にどのように効いてくるか?」 となります。
<↓LEDバルブにて、外気温度が12℃の環境下で点灯スタートさせたときの昇温&降温データの例>
<↓HIDバーナーにて、外気温度が12℃の環境下で点灯スタートさせたときの昇温&降温データ例>
興味ある方々は、外気温度0℃狙い時に得られたデータに対して、ご自分で比較されてみてください。
・・・と、まぁ、こんな感じで 「企画立案」、「各種準備」、「計測実行」、「記録&撮影」、「データまとめ」 など諸々の工程作業を一人で行っていたわけですよ、先月2月中は。でもこれらは序の口、基礎データの取得段階です。
実は次の実験段階として、「リアルに降った雪を使って」 「フォグランプに積もった雪が本当に溶けるのか?」 を、実際に LED、HID、ハロゲンの各バルブで比較しながら試してみる・・・という企てをしていたのです。DIYプライベーターですから、「自分でできる」 と考えたことは実行に移しますよ、えぇ。
Vol.3 に続く。
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2018-03-22(Thu.) : 更新
[LED、HID、ハロゲン] Vol.3 各バルブの熱で雪は溶けるのか?(事前準備編) をアップロードしました。
Posted at 2018/03/20 00:53:16 | |
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